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JAGATinfo8月号の特別企画では大学入試におけるネット出願が印刷市場に及ぼす影響を取り上げる。
信じられるだろうか。前年までは必要なものとして活用されて、合わせて62万部も印刷していたものが、ほぼなくなってしまったということが。その印刷物とは何か。それは、ある大学の入試関連の大学案内や願書類である。
今は、大学入試の現場では紙の願書での出願からインターネットを活用したネット出願の導入が広がっている。つまり、受験生は、従来のように願書を取り寄せることなく、Webサイト上で出願手続きができてしまう。当然、紙の願書は不要になるわけである。
64万部の印刷物がなくなったのは、2014年度の受験からネット出願に完全移行した東洋大学の話である(実に億の単位の印刷費が削減されたようである)。JAGATinfo8月号の特別企画では大学入試におけるネット出願が印刷市場に及ぼす影響を取り上げた。
リクルート進学総研所長で、『カレッジマネジメント』編集長の小林浩氏に大学入試におけるネット出願の動向を、東洋大学入試部部長加藤建二氏にネット出願における入試情報発信の在り方について伺った。小林氏にはネット出願動向のほかにも、大学2018年問題など、大学教育まわりの動きについても触れていただいた。
東洋大学の加藤氏には、東洋大学はなぜ印刷物の大学案内をなくして、すべてWebで広報することにしたのか、紙をなくした理由とWeb重視の理由をうかがった。そこには現在の受験生のメディア志向もかかわってくるが、われわれ印刷業界が印刷物の価値を訴え、印刷物のメリットを強調することや印刷物への思い入れだけではどうにもならない現実があった。また、東洋大のWeb広報では、印刷物の大学案内とは違った見せ方が工夫され、試行錯誤の中でいろいろと取り組まれていることが分かった。
今後、大学におけるネット出願の導入はますます進むことが予想されており、そこでは入試広報のあり方が見直されるのは必然の動きである。その時に印刷物は主役を降りることになるだろうが、印刷会社自体は主要プレーヤーとして残れるかどうか。いち早い情報収集とメディア制作のプロとしての企画力、ノウハウが問われることになるだろう。
そのほか特集では上場印刷企業の決算短信分析から2014年印刷業界の方向性を考察する。例年のような個々の企業分析から、今年は上場印刷企業全体の動向をコンパクトにまとめ、これからの印刷企業がとるべき経営戦略のヒントを探る。
経営者インタビューは恒和プロダクト代表取締役恒元直之氏に登場いただき、7期連続増益を達成した成長企業の取り組みについて語ってもらった。
(JAGAT info編集担当 小野寺仁志)
印刷物のデジタル化動向~電子おくすり手帳の状況と東洋大学が取り組むWeb広報
2014年08月29日(金) 15:00~17:00(受付開始:14:30より)