本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
PAGE2009 デジタルメディアトラックC6「成功するWebサイト構築」報告
2009年2月6日(金)のPAGE2009 デジタルメディアトラックC6「成功するWebサイト構築 」では、Web活用によるメディアビジネスを成功させる秘訣、ユーザの要望に応え魅力的で成果のあがるWebサイト戦略の立案方法・構築手法について、事例を交えてそのポイントを探った。
講師は有限会社CMパンチ 代表取締役 佐々木康彦氏、株式会社ビービット 代表取締役 遠藤直紀氏、株式会社ロフトワーク 代表取締役 諏訪光洋氏、株式会社エクスペリエンス 代表取締役 橘守氏。
はじめにモデレータの佐々木氏によるセッションについての解説。
佐々木氏は伊藤忠エレクトロニクス株式会社のプロデューサーという立場でもあることから、同社の制作セクションにおける業務フォーメーションや基本アプローチモデルを紹介。成果物を生み出すだけではなく、サイトの成果を生み出すことにこだわり、企業の重要なマーケティングツールとしてビジネスゴールがどうあるべきなのか、常に考え行動している点を説明。制作事例や関連ビジネス商品である検索アプライアンス「Vivisimo」の紹介なども。
参考:
2008年9月にはクロスメディア研究会拡大ミーティング、講師に佐々木氏をお迎えして「導入事例から学ぶ検索アプライアンス 」も開催された。
http://www.jagat.or.jp/story_memo_view.asp?StoryID=11914
同ミーティング報告記事はこちら(クロスメディア研究会メンバー限定記事)
http://www.jagat.jp/content/view/212/105/
続いて「成果を上げる!ユーザ中心ウェブサイト戦略」と題して遠藤氏によるプレゼン。サイトを最適化する際に知っておくと便利なユーザ中心アプローチを解説。
インターネットはセルフサービスチャネルであるとし、抛っておくと何が起こってるか分からない、提供者側の思い通りになりにくいなどの特徴を挙げた。質の時代・個の時代といった「マーケティングスタイルの変化」、消費者が握る情報の主導権といった「力関係の崩壊」、媒体特性上ユーザ主導となるネットの特性などの背景により、ユーザに選ばれる企業サイトが最終的なビジネス成果を掴むことを説明。
ユーザビリティについても触れ、よくある誤解として「画面の使いやすさ・分かりやすさ」についての改修などがあるとした。そもそもユーザビリティとは、「あるウェブサイト」が「特定のユーザ」によって「特定の利用状況」において「特定の目的を達成」するために用いられる際の、「有効さ」「効率性」「満足度」の度合いであるとし、つまりは「ユーザ心理と戦略の融合そのもの」であるとした。
ユーザ中心設計手法のポイントとしての1点目は「ユーザターゲティング」。ユーザ行動に影響を与える要素を考慮しながら、誰が最も重要な顧客なのかを定義する。ユーザ属性の洗い出しを行い、ユーザ行動に影響を与える要素で分類・優先順位づけを行う。これによりターゲットユーザの定義(ペルソナの設定)が可能となり、これを関係者で共有する。
2点目としては、「ユーザシナリオ」。ユーザのサイト内外における心理と行動の変遷、および、サイトの目的に至るまでの誘導施策を指し、考え方としては、ユーザのニーズや認識が前提となる知識や経験などがベースとなって形成されるということであり、これによりユーザに対する理解を深め、サイト成功のための施策を検討できるとした。
ビービット社のWebサイトでは、「ユーザビリティ実践メモ」としてサイト改善のノウハウを毎週発信している。
http://www.bebit.co.jp/memo/
次に諏訪氏から「CMSは基本インフラ、+αでさらに大きな成果を実現」と題したプレゼン。
経営企画層やマーケティング部門がWebに過大な期待を寄せる一方、下記のような問題点があるとした。
・各部門から依頼される更新で手一杯
・常駐/外注の運用コストが高く、Webマーケティングまで手がまわらない
・各部門が勝手につくるサイトで滅茶苦茶
Webはますます情報量が増え、巨大化していくが、実はユーザも情報「量」を求めており、「どのような企業サイトであればより信用できるか」という調査においては「情報量が多いサイト」が77.7%、「更新頻度が高いサイト」が69.9%などとなっている。つまりは情報発信による対話が生む信頼であるとか情報更新による再訪、情報量が生むSEO性を鑑みても、「量」が求められる時代であるとした。
サイト構築は大規模化し、数千ページのサイトリニューアルやコンテンツ移行、CMS導入は当然という状況にある。ここで必要とされる3つの能力は「プロジェクトマネジメント」「情報設計力」「CMS選定と開発」であるとした。
ロフトワーク社は2003年からプロジェクトマネジメントを導入。2006年には劇的に「トラブルプロジェクト」や「遅延プロジェクト」が減少した。プロジェクト成功率は95%を誇る。
CMS+αの「+α」の部分について、下記のような例を挙げた。
・Webマーケティング(売上/問い合わせ)
・CRM(顧客満足)
・SEO(集客)
・ユーザビリティ
・ソーシャル
・EC
・多言語展開
セッションの中では「+SEO」の事例も紹介。CMSテンプレートを徹底的にSEOチューニングを施し、成果を上げているとした。
今やCMSは当然であり「+」のところに何を求めるかが重要であり、適切なチームを集めることで効果が高まるとした。
最後に、拡大するWebの世界ではもう一社だけで全部を担う時代ではないのでは?として、皆で英知を持ち寄り、もっと面白いもの、効果のあるWebサイトをつくっていく、そういった時代であると感じていると締めくくった。
最後に「顧客基点のWeb/ユーザー充足度の高いWebの作り方」と題して、橘氏のプレゼン。BtoBサイトの調査結果をあげ、業務上の情報源として企業のWebサイトが57%にのぼり、満足度へ影響する指標として「製品・サービス特徴が理解しやすい」「用途・メリットが理解しやすい」「情報を見つけやすい」といった点がポイントが高めであることを説明。これらが顧客ニーズ充足度の高いWebの要件であるとした。
また、顧客基点の発想に着目し、たとえば言葉遣いで社内にしか通用しない言葉を使っていたり、用意するキーワードであったり、コンセプトを伝える場面であったり、様々な局面で、ProductOut側の表現を使っていないか、ユーザにとって知りたい(伝えるべき)表現を使えているか、再度注目する必要性を述べた。
構造・ナビゲーション・言葉遣いの改善による売上アップの施策を説明。
例として申込みフォームをあげ、商品選択プロセスから申込みフォームを経て申し込み完了に至るまで、脱落率に着目しない場合は、売上を2倍にしようとすれば集客を2倍にする必要があるものの、脱落率を改善(申込みフォームの最適化)により現状のPVのままで目標達成も可能であることを説明。そのための例としては、ユーザの多様な環境にあわせた申込みフォームの用意であったり、リアルタイムでエラーを通知する仕組みであったり、映像による専門用語の解説であったり、ナローバンド版への移行ができるフローを作ったりといった改善施策を解説。それらが実際に証券会社サイトや銀行サイトで利用されていると説明。
当日の模様は、モデレータである佐々木氏のブログ「平凡でもフルーツでもなく、、、 」でも取り上げられた。
成功する大規模Webサイトを構築したいなら、この3人の話を聞け!
(関連:研究会blog )
Webサイト構築戦略への関心の高さゆえか、会場は満員。セッション後も質疑応答が絶えない、熱気に満ち溢れた開催となった。