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文字処理システムの変遷(1)−印刷100年の変革

現代の印刷産業においては、デジタル技術革新の進展とともに大変革を招いている。し かもそのスピードは速く、現在の1年は昔の10年に匹敵するほどである。あまりの急激な 変化に戸惑いを隠しきれないのが実情である。

コンピュータのダウンサイジングやオープンシステム、インターネット、マルチメディ アなどへと発展しているが、将来にわたってハードウェアとソフトウェア両面に対するイ ノベーションが加速されるであろう。

特にプリプレス分野における技術革新は顕著で、DTP関連などの文字・画像統合処理に 象徴される。今ではDTPの普及により、文字・画像処理ができることは当たり前の感覚に なっている。

しかし近代の技術革新は突然出現したわけではなく、過去の技術や知識の蓄積が現在に いたっている。現代人のなかには、活字や写植を知らない層が多くなっている。しかもコ ンピュータのDTPを使っている人達でも、コンピュータを使った電算写植のことを知らな 人が少なくない。

そこで今回から温故知新の意味で、プリプレス関連のなかでも歴史的に長い文字処理シ ステムと印刷関連の変革を物語風に辿りながら、それぞれの社会的背景をも解説し、将来 の指針にしたいと思う。

●活字組版の全盛時代

文字処理システムは歴史が長いだけにいろいろな試みがなされた。その変遷を辿るため には、活字の存在と活字組版時代から語る必要がある。文字処理システム100年の歴史の なかで、大きな節目は第2次大戦以前と戦後の1950年以降に分けられる。

明治初年に始まり長年続いた活字組版はプリプレスの一部である。金属活字の誕生以来 活版印刷には多くの技術革新はあったが、世界的に20世紀まで5世紀に亘って活字組版と 活版印刷は引き継がれてきた。

1.活字の存在

活版印刷術がGutenberg, Johann Genfleish(グーデンベルグ,ヨハン・ゲンスフライッ シュ)により約550年前の1450年ころに発明され、また日本においては1870年、本木昌 造が電胎母型と金属活字を開発し、日本における近代活版印刷の基礎を築いたことは有名 な話である。

グーデンベルグが発明した活版印刷術の主要な要素を考察すると次のことがいえるが、 現代の印刷技術と対比してみよう。

1)繰り返し溶融して鋳造できる金属活字

活字合金は鉛、錫、アンチモンの三元合金である。この組成は500年以上に亘って不 変のものであった。この繰返し使える活字の意味は、写植の文字盤やコンピュータの 記憶装置に記憶させたデジタルフォントに相当する。

2)活字を組み上げた版に塗りつけるインキ

印刷インキはいろいろ改善されたが、現代でも印刷に不可欠な要素である。しかし現 代のデジタルプレスでは、インキの代わりにトナー、インキジェットなどを用いて、 直接紙に印刷する方式に変化している。

3)文字・画像を印刷する用紙やパーチメント

用紙については印刷方式に関わらず、印刷メディアには不可欠な要素である。

4)インキを用紙に転移する印刷機

印刷機については自動化が進んだが、長年大きな技術革新はなかった。しかし現代で はCTP(コンピュータto プレス)のごとく、有版方式印刷と無版方式印刷に分かれて 発展してきている。

この4つの要素を含む活版印刷のなかで、近年最も大きな技術変革をもたらせたのは文 字処理方式であろう。100年以上も続いた活字組版、また50年以上も続いた写植組版が、 最近の10年余でDTPというツールに置き換わってしまった(つづく)。

他連載記事参照

2001/02/03 00:00:00


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