PAGE2000の「OpenType時代の文字」セッションのもともとの趣旨は,フォントフォーマットがOpenTypeに変わることがDTPにどのような影響を及ぼすのか,またフォントベンダーの対応はどうか,ユーザ側でどういう運用方法が必要かなどを考えるというものであった。しかし,パネラーのみなさんそれぞれ言いたいことがたくさんあり,またモデレータの能力不足もあって,当初目的としていた外字や異体字,ユーザ側の対応までには議論が及ばなかった。だが,議論自体は白熱し,ことにOpenTypeの位置付けについて各社の考え方の違いがはっきりしたセッションになった。
スピーカーは次の4氏。
アドビシステムズ株式会社
エンジニアリング 日本語タイポグラフィマネージャー 山本太郎 氏
Apple Computer,Inc.
International Text Group 木田泰夫 氏
大日本スクリーン製造株式会社
メディアテクノロジー事業本部
IT事業部IT技術部ページネーション課 豊泉昌行 氏
株式会社モリサワ
営業二部 部長 中村信昭 氏
モデレータはJAGAT 隈元斗乙である。
セッションの前半は,モデレータがまとめたOpenTypeとグリフセットに関するレジュメ(PDF形式253KB)の内容を確認しながら,それぞれの考えをうかかうかたちで進めた。後半は,おもにOpenTypeへの移行の意味と,文字種選択/グリフセットのありかたに関する議論となった。セッションの全容はいずれ別のかたちで公開したいが,ここでは後半のさわりの部分だけ要約する。
木田氏からはApple Publishing Glyph Set(以下APGS)についてお話いただいた。
APGSはDTPの第2世代を作るという目標のもとに開発したもので,あらゆる文字セットを調査・検討したが,結果的には,AJ1-4にJIS X 0213を足すことで,文字種としては写研までほぼカバーするグリフセットになった。そういう意味ではJIS X 0213は非常に興味深いものだし,高く評価してよいと思う。
しかし,Mac用のすべてのフォントがAPGSのグリフを揃えなければならないというわけではない。たとえばディスプレイ書体に2万字そろえる必要はないだろう。ただ,セットとしての上限を決めておかないとサブセットが作れない。逆にいえば,今後は必要に応じてJIS X 0208フォントとか,常用漢字フォントというものがあってもよいと思う。サブセットというのは重要な考え方だと思う。
これに関連して大日本スクリーン製造の豊泉氏は,AJ1-4とAPGSの差は,商業印刷までカバーするか,書籍出版までカバーするかの違いだとする。大日本スクリーンのヒラギノ明朝の2万字は,あくまでも書籍本文用という位置付けで,従来のヒラギノのファミリーとかなの雰囲気を変えた。書籍出版でも使ってもらうつもりで2万字のフォントを作ったわけで,そういう意味では,フォントベンダーもフォントベンダーとしての主体性を持つべきだという。
一方,モリサワの中村氏は,これからOpenTypeをやっていこうというときに,基準とすべきグリフセットがふたつあるのは腑に落ちない。アップルとアドビは一本化したグリフセットにしてほしかったという。
・・・この後,後半の議論はおもに文字種とグリフセットをめぐるものになった。
報告記事というこの稿の性格もあるが,なにより中途半端に各氏のことばを要約してしまうとかえって真意が伝わらないことにもなりかねないので,内容についてはこれ以上触れない。全容は別のかたちであらためて公開したい。
繰り返すようだが,モデレータの舵取りがきかず,当初議論したかった項目すべてには話が及ばなかった。モデレータとしては反省しているが,しかし,議論としては充実したものになったと思う。
2002/03/04 00:00:00