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クロスメディア・パブリッシング実現に向けての現状と問題点

日本オラクル株式会社 アドバンストソリューション本部 Content Managementソリューション部 高橋輝匡

前回では、クロスメディア・パブリッシングの必要性と、実現への課題について述べてきました。その課題の中で、特に重要なのは以下の3点に集約されます。

○データの一元管理
○コンテンツのマルチユース
○作業工程・データ受け渡しの効率化
連載の第2回目の今回は、上記の課題に対する現状とその問題点について紹介します。

データの一元管理

「データの一元管理」と聞いて、真っ先に思いつくのは「ファイルサーバへのコンテンツ・データ集約」ではないでしょうか。確かに、Windowsを始めとするパソコン用OSには、標準でファイルサーバの機能が付随し、手軽にファイルサーバを用意することができます。しかしその反面、思わぬ落とし穴があるのも事実です。
以下にOSの機能を利用して、ファイルサーバを利用した場合の問題点を示します。

1)複数のファイルサーバ
通常、企業内のファイルサーバは一つではないでしょう。部門ごと、グループごと、もしくはコンテンツの種類ごとにファイルサーバを用意している場合がほとんどだと言えます。しかしファイルサーバの台数を増やせば増やすほど、まとめておくべきコンテンツ群が、別々のファイルサーバへ分散されてしまいます。

2)不適切な権限管理
簡単にファイルサーバが作成できるとなると、アクセスするユーザーの権限管理がしばしば緩くなってしまいがちです。よくあるのが、ファイルサーバのユーザー全員にフルアクセスの権限を付与して、すべてのコンテンツを全ユーザーによる上書き・削除の脅威にしてしまうことです。

3)障害によるデータ喪失
ファイルのバックアップは、設定などが面倒なものです。しかしこの作業を怠ると、いざディスク障害が発生した際に、データを復旧する手立てがありません。またたとえバックアップから復元できたとしても、各ファイルの内容は「バックアップを取得した時点」になります。つまり「バックアップの取得後、ディスク障害が発生する直前」までの各ファイルへの変更は、すべて失われてしまいます。
真の意味での「データの一元管理」とは、乱立するファイルサーバを集約するだけでは不十分です。ユーザーの権限管理を強化し、かつ不慮の事故によるデータの喪失を防止するために、ファイルサーバを適切に設定・運用管理することも含まれるのです。

コンテンツのマルチユース

「コンテンツのマルチユース」とは、一つのコンテンツを複数の用途に使用することです。となると、データの一元管理を行った後に、必要なコンテンツが必要なタイミングで、すぐに見つかるようにしなければなりません。とは言え、それを実現するにはさまざまなハードルがあることも事実です。
以下では、スムーズなコンテンツの検索を妨げる問題点について示します。

1)さまざまなファイル形式
テキスト形式のコンテンツであれば、OSの機能によって簡単に文書内の検索を行えます。しかしWordファイルやPDFファイルなど、バイナリ形式のコンテンツではOSの検索機能を使用できません。ファイル名などからコンテンツの内容を類推し、実際にそのファイルを開いて検索するか、デスクトップ検索※ソフトなど専用のソフトウエアに頼らざるを得ないでしょう。
デスクトップ検索:パソコン内蔵のディスクやネットワーク・ドライブに保存された、さまざまな種類のファイルを全文検索すること。

2)検索対象ごとの検索処理
コンテンツの検索対象となるのはファイルサーバのみならず、メールの添付ファイルやグループウエアの共有フォルダなどにまで及ぶ可能性があります。その際、ファイルサーバやメールソフトウエアなど、検索対象ごとで個別に検索するか、あるいはそれらの検索対象をサポートするデスクトップ検索ソフトを使用する必要があります。

3)検索結果の非共有化
検索対象ごとに検索した場合、その検索結果は保存しておけません。毎回検索し直す必要があります。またデスクトップ検索ソフトの場合、検索結果を保存できますが、それをほかのユーザーと共有するのはセキュリティ上行えなくなっています。つまり、たとえ同一のキーワードであっても、各ユーザーごとに検索を行わなければなりません。
このように、必要なコンテンツを見つけ出すのは、大変な労力と時間が掛かります。「コンテンツのマルチユース」を実現するには、データの一元管理を行うことも重要ですが、それ以上にコンテンツを効率的に、かつ高速に検索できる必要があるのです。

作業工程・データ受け渡しの効率化

どんなにデータの一元管理が行われて、効率的にコンテンツを検索できるようになったとしても、コンテンツ・データの受け渡しや作業工程にタイムラグがあれば、全体の効率化を図ることはできません。また、作業指示やデータ受け渡しに人手を介すことで、さまざまなリスクが発生してきます。
以下では、従来どおりの人手による作業指示やデータ受け渡しで、起こり得る問題点について示します。

1)ワークフロー管理の煩雑
コンテンツ制作におけるワークフローの進捗は、作業の指示をしている本人は把握できるでしょう。ただし、その進捗情報を複数人で共有する場合、例えば「作業進捗一覧表」のようなファイルを作成し、進捗を把握しているユーザーがそのファイルを更新しなければなりません。手動での作業なので、時として更新し忘れることも起こり得ます。

2)宛先ミス・データの紛失
作成したコンテンツをメールに添付して送る際、間違ったアドレスに送信してしまう場合があります。そして間違ってメールを受け取った相手が、第三者へ転送してしまうかも知れません。またCD-Rなどのメディアに焼いて郵送する場合、そのメディアが入った封筒が紛失する可能性もゼロではありません。

3)郵送などによる時間ロス
コンテンツのデータ量が大きいと、メールに添付することができなくなります。その場合、通常では郵送などの手段を用いることになるでしょう。しかし郵送なら到着するまでに最低1日、バイク便でも数時間掛かるので、その間は作業全体がストップしてしまいます。これだけブロードバンド化が進んでいる現在であれば、すべてのデータ受け渡しをインターネット経由で行えるはずです。
コンテンツ制作など、ある程度ワークフローが定型化されたタスクについては、できる限り人手を排除していくのが望ましいと言えます。システムによるワークフローの自動化により、作業進捗を正確に把握でき、またコンテンツの紛失や流出といったリスクを失くすことができるのです。
第3回目では、「データの一元管理」で挙げられた問題点を、弊社オラクルの製品でどう解決できるのか、について紹介してまいります。

『プリンターズサークル』10月号より

2006/10/08 00:00:00


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