2006年10月17日および18日にドイツのハイデルベルグにおいて、W3Cプリントシンポジウム2006が開かれ、参加する機会を得たので報告する。
ハイデルベルグ市は人口14万人の都市で、戦災をのがれたために古い町並みが残っており、ドイツで最も歴史のあるハイデルベルグ大学がある美しい古都である。また、世界最大規模の印刷機器メーカーであるハイデルベルグ社の企業城下町でもある。
今回のW3Cプリントシンポジウム2006は、ハイデルベルグ社の研修センターであるプリント・メディア・アカデミーを会場に開催された。
現在、W3Cで協議・検討されているプリント・テクノロジーには4種類のものがある。
Webのレイアウト技術であるCSSの最新版CSS3の一部であるCSS Paged Media。ハイエンド印刷を目的としたXSL。SVG Print、XHTML Printである。これらの最新動向についてのプレゼンテーションが行われた。
Paged Mediaは、ボックスモデルに基づきページを定義するものである。ページ・サイズや余白、ヘッダー・フッター、ページ番号などの設定を可能にする。2006年10月にワーキングドラフトになっている。
CSSプリントプロファイルは、インクジェットやレーザーなどの低価格プリンタのファームウェアに利用される向けのCSSサブセットである。2006年10月にワーキングドラフトになった。
Paged Mediaコンテンツ生成とは、リーダー、脚注、相互参照、ページ・フロート要素などである。
マルチコラム・レイアウトとは、CSSでマルチコラムを定義するものである。
CSSを利用することにより、既に本(記事、アルバム、Webページ)等のシンプルなドキュメントを印刷することは可能である。さらに、ハイフネーションや縦書きなど開発中の改善項目もある。
外部ソフトウェアを使用することにより、インデックス、目次、図版目次などを自動生成することも可能である。
XHTML-Printは、XHTMLをモジュール化することよって規定されたXHTML言語の体系の1つであり、モバイルデバイスや低価格プリンタ向けに設計されている。CSSによるレイアウト指定を利用することができる。
UPnP(Universal Plug and Play)、Bluetooth、DLNA(Digital Living Network Alliance)などの規格と相互に関連している。
SVG1.0では、SVG1.0ファイルを印刷するSVG Printデバイスについて規定されている。SVG1.1では、Tinyと、BasicとFullという3つのプロファイルレベルに応じたSVGモジュールが取り入れられた。SVG1.2では、SVG Printのためのページセット、ページ要素、ストリーミング可能なSVG要素を含んでいる。
SVG Printデバイスはこれらの機能をサポートする必要がある。
ワークショップの冒頭に、日本から参加したジャストシステム、アンテナハウス、JAGATは、Web上でJIS 4051相当の日本語組版や縦組みをサポートするタスクフォース検討結果のプレゼンテーションを行った。
XSLやCSSにこれらの日本語組版や縦組みのための機能を反映することができれば、日本だけでなく東アジア圏のWeb表示の可能性を大きく拡大することが可能となる。
脚注や割注、圏点などに関する細かい質問もあり、大いに参加メンバーの関心を集めることができた。プレゼンテーションの結果は上々で、将来的な検討項目として取り上げたいという意見が多く表明された。
ワークショップでは、XSL-FO 2.0の検討項目に関するディスカッションが続けられた。
また、アンテナハウスからは「CSSとXSL-FOとの互換を図るべき」という提案があり、意見が交わされた。しかし、重要な課題ではあるが、すでに多くの機能が実装されており実現困難との見通しが示されていた。
日本語組版や縦組みをWebに反映するためのタスクフォースは、当面継続して検討を行い、要件をまとめる方針となっている。
2006/11/01 00:00:00