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ボーンデジタルは、後戻りしない大潮流

GoogleやMicrosoftも図書館に残されている過去の書籍のデジタルアーカイブ化を進めているが、従来の出版社の権利とぶつかるところが多くなってきて、どんな本の本文でもネット上でタダで入手できるようにはならないだろう。もともと紙の書籍のビジネスを否定するつもりで上記のアーカイブが行われているわけではなく、もちつもたれつの関係を作ろうとしていた。出版社としてはデジタルコンテンツが用意されるとiTumeのように廉価でダウンロード販売するビジネスをできるようにするなどである。

しかし出版社の側の事情としては、例えデジタル化が0円でできるとしても、当初の出版の時点では著者などとの間でネットでの再利用については契約を取り交わしていないので、過去の紙のコンテンツのデジタル化は再度契約のやり直しと、場合によっては支払いが必要になるために、販売の目処もないのに積極的に進められないのだろう。 ところが子供のころからゲーム機やケイタイ電話やパソコンを使っていて、紙にメモをとるよりも電子メールやSNS、Blogの方が直接的に使えるメディアになっている世代が増えていく。もう文字コミュニケーションは殆どデジタルで始まるようになったといってもいいだろう。

漫画も最初からデジタルで描く人もいるが、最初がアナログのスケッチでも、多くはそれをスキャンしてからパソコンで着色とかトーンを入れている。つまり情報が発生するとかなり早い段階からデジタルになって、いろいろな処理はデジタルで行われるようになる。デジタルカメラはファインダーから後ろはデジタルであるが、最初に被写体に手で何かを施すとか照明というアナログ要素の撮影条件をちゃんとすれば、そのまま使えるデジタルデータになる。

つまりクリエータ・著者の段階からのボーンデジタルになると、最初から2次利用を含めた契約になるので、出版社も最初からクロスメディア戦略を考えざるを得なくなる。今の作家の大御所でデジタルメディアに抵抗がある人が居ない分野から、徐々に企画段階からクロスメディアの出版というのも生まれつつある。地図も航空写真からデジタルでおこすものであり、ちょっと前まで紙が「原本」であったコンテンツはデジタルベースになって、GoogleMapのような新たなアプリケーションを産んでいる。

こういった変化は、まだビジネスとしては統計的にはゼロに等しいものではあるが、今後増えることはあっても減ることがない。最初はいろいろは抵抗や懐疑があったとしても、日本語ワープロが普及したように、パソコンが、インターネットが、ケイタイが普及したように、デジタルコンテンツがクロスメディアに向かって進むことも、後戻りはしないものである。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 2006年9月号より

2006/11/13 00:00:00


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