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継承か? 断絶か? 21世紀のメディア

2006年にはワンセグ放送が始まった。これはケータイ電話の通信の上で放送コンテンツが流されるのではなく、ワンセグ放送というデジタル放送を見ることができるテレビ受像機とケータイ電話の複合端末が普及し始めていることを意味しているので、利用者から見ると通信と放送の融合に見えても、技術的には両者をオーバーレイしているようなものである。つまり「ホリエモン騒ぎ」から始まった融合議論の結果は、鳥と蝶を結婚させて子孫を残すようなことはできないということだ。

2006年に株を上場したmixiに代表されるように、新たなメディアに関する若い野心的なエンジニアは大企業の元で働こうとはしない。それは大企業は既存のビジネスを重んじて、競合する新たな芽を摘んできた歴史があるからである。特にコンピュータ業界と出版界ではそれが顕著であった。その結果、パソコンのハードウェエアも、OSもアプリケーションも日本は提供できなくなってしまった。出版コンテンツを電子化して売るものよりも、青空文庫やWikiその他Webコンテンツの方が多くなってしまった。

また音楽業界ではiTUNE、iPODが独り勝ち状態に入るかもしれない状況で、ITを使ったメディアビジネスというのは、既存業界を破壊するような性質があることに注目してもらいたい。なぜか? 3Gケイタイも、Google も、Amazon も、最近話題のYouTubeなど、身近で話題になっているメディアの担い手たちは伝統の枠を超えた考え方なので、アナログメディアの下請けにはならないのである。そういう人たちの予備軍は多くあり、今そのエネルギーの一部はネット上の反社会的な行動になって現れている面もあるが、それはこういったエネルギーを吸い上げる全うなメディアビジネスが育っていないからともいえる。

そもそもデジタルで出発するボーンデジタルのメディアビジネスは、まだ金額で見ると統計的にはゼロに等しいが、今後増えることはあっても減ることはないだろう。今日では紙ベースでは人々がワクワクする企画はそう多くはないが、デジタルやネットを使った楽しいメディアはどんどん増えている。コンピュータやネットワークに囲まれた社会なのでアナログメディアよりもボーンデジタルのメディアが増えるのは当然である。つまりメディアビジネスの世界ではボーンデジタルという、緩やかな断絶が進行しているといえる。

21世紀は、20世紀のメディアの常識を超えて、メディアの種類も表現も、よりカラフルになろうとしていることが、さまざまな兆しからわかる。PAGE2007は、紙を含めたメディアの制作がどのように変わろうとしているのか、どのような価値を高めようとしているのかを追求し、情報の送り手から受け手まで、メディアの発注者から利用者まで、メディアのバリューチェーン全体を採り上げ、多様なメディアを効率的に活用するための提案やディスカッションを行う。基調講演は、2/7(水)午前のA0から、午後のA1,A2,B1,B2の、5セッションを準備中である。

A0 基調講演「21世紀のメディア環境はこうなる」

写真のレタッチに代わって、CGと実写合成で見事な質感を描き出す浅岡肇氏、ケイタイやコンシューマエレクトロニクスの急激な進歩や今後人々を取り巻く新たなメディア環境を追いかける清水計宏氏、ネットの未来やその中の出版の姿、CGMやYouTube、MySpaceなどWeb2.0的動向を考察する歌田明弘氏という今日の変化の最先端にかかわる3人が、20世紀のアナログメディアでは考えられなかったような、ボーンデジタルの先に起こりつつある兆しを解読するためのプレゼンテーションを行い、それらを受けて、クリエイタ側から、利用者側から、またビジネスの視点で、21世紀のメディア環境を見通し、その影響や社会的効用について話しあう。

A1「色再現技術の可能性 脱三原色」

印刷業界で長年の課題であった、色の数値管理の切り札として期待されていたカラーマネージメント技術もデジタルカメラの普及とともにようやく定着しようとしている。しかし色にまつわる問題が解決したわけでは決してない。液晶ディスプレイやインキジェットプリンタなどの持つ固有の色再現色域に依存した問題、記憶色等の個人差に起因した問題等様々であるが、CIE的なRGB三原色的色再現に起因した根源的な問題も少なくない。 色を根本から見直し、色をスペクトル分布で捉え、再現しようとする試みがナチュラルビジョンである。本セッションではナチュラルビジョンが目指す分光的な色再現を手がかりに、色再現技術の本質と可能性を探る。

A2「CGが変える写真の世界」- 本物以上の本物らしさを表現する -

デジタルカメラが写真入稿の主力であるといっても誰も異を唱える人はいない。それくらいにデジタルカメラは普及して一般化している。ところが、実際の自動車やモデルを撮影するのではなく、そのうちみんなCGになってしまうといったら、信じる人の方が少ないだろう。 しかしマンションパース、自動車、清涼飲料水等のほとんどがCG技術の使われていないものを探す方が大変である。本セッションではコスト、納期、品質面から実写とCGを比較し、CG技術の将来性、可能性を探る。クライアントの立場から極言すれば、本物よりも本物らしい製品を演出できればコマーシャル効果はより大きいわけだが、その可能性を一番秘めているのが、質感自体をコントロールし、創作できるCG技術なのである。

B1「IT・サービス化の中のビジネス・イノベーション」

社会全体を通したIT化、サービス化の流れは顧客の消費行動、価値観を激変させ、ビジネスの仕組みから産業の枠組みまでをも変容させはじめている。従来の川上・川下の関係も変容しはじめ、消費者接点強化によるマーケティング主導のビジネスが当り前となってきている。そこではクロスメディア活用は既に常識であり、ビジネスプロセスの中では、次元・位相の異なるもの同士が結びつき始め、そこから新しいサービス、流行現象も生まれ始めている。印刷産業にも押し寄せているこのビジネストレンドの「現在のリアルな姿」を読み解く。

B2「情報の影響力とメディアビジネス」

生活者のコミュニケーションツールは、ブログ、SNS、携帯、メール、そして対面コミュニケーションと、多元的な棲み分けの選択肢が生まれ、明らかに21世紀に入り様変わりをしたと言える。既存のマスメディア、Webからの情報を含めて噂、口コミから引用情報、評価情報、そしてプロの情報まで、ロングテール化=2.0化してきた情報コミュニケーション。その影響力と伝播のプロセスを踏まえたメディア・ビジネスのあり方を考える。

詳細は、PAGE2007サイトで!!

2006/12/05 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会