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ブルー・オーシャン戦略に見る標準原価の重要性

■ブルー・オーシャンを目指そう
 最近、ブルー・オーシャン戦略なるキーワードを耳にすることはないであろうか。ビジネス書を比較的豊富に扱う書店に行くと、このキーワードの本を良く見かけるようになった。ブルー・オーシャンは、2004年ハーバード・ビジネス・レビューに、ダボス会議のフェローであるチャン・キム氏(W.Chan.Kim)と、レニュー・モボルニュ氏(Renee Mauborgne)によって、発表された新しい経営戦略論である。
 ブルーの反対のレッド・オーシャンが、既存の価格競争が激化した現状の血みどろの成熟市場を表し、一方、ブルー・オーシャンは競争の全く無い新しい未開拓の市場を表している。この戦略論は、現状のレッド・オーシャンから、「バリュー・イノベーション」を実現することで、ブルー・オーシャンヘ移行する手法が述べられている。
 戦略の策定から、導入・実施に至るまで7つのステップで移行する手法が展開されている。ブルー・オーシャンの世界は競合他社がいないため、血みどろの価格交渉や価格競争はなく、悠々と定価販売できるのである。この機能やこの形態に加工できるのは、我が社のみ、つまりオンリーワン戦略と言える。

■バリュー・イノベーションを実現せよ
 キーワードは、「バリュー・イノベーション」である。これは一言で云うと、低コスト化と差別化を同時に実行するものである。ここまで書くと流石にホンマかいな、と疑いたくなる方もおられよう。どうも夢のような話に思われる方は、本戦略の詳細を上記冊子で確認して見られると良いと思う。
 未開拓の市場をどう探すのかという外部環境分析のほかに、4つのアクションを社内で徹底的に進めることによって、バリュー・イノベーションを実現するとしている。「捨てる」、「減らす」、「増やす」、「付け加える」、の4アクションを並行して行うのである。「捨てる」、「減らす」が低コスト化、「増やす」、「付け加える」が差別化に結びつく。

■戦略実行には標準原価を捕らえる
 ここからが本論であるが、この捨てる、減らす、は現状の製品やサービスに備わっている機能、性能や形態などの中で、あくまで「顧客」の視点から不要であったり重要でなかったりするものを追求することであり、捨てたり、減らしたりすることで、「どの程度」低コスト化が図れるか、が数量的、定量的に捕らえることが重要である。各生産工程において、発生すると見込まれるコストが見積もることが出来なければ、捨てたり、減らしたりすることで得られるコスト低減額が分からないことになる。一方、「付け加える」、「増やす」においても、顧客の視点で新しく需要として見込まれる機能や性能を付加するものである。ここでも、付加することで新たに見込まれる原価が、どの程度であるかを、定量的に予測する必要がある。
 だから標準原価の把握なのである。ここで云う標準原価とは、製品個別を生産するときに実際に発生する原価ではなく、各生産工程や標準作業に対して社内で標準として設定している原価のことを言う。

■企業の経営活動における標準原価の重要性
 標準原価がきちんと捕らえられていなければ、せっかく発見した未開拓のブルー・オーシャンに船出することが出来ない。新しい戦略の実行、経営革新の遂行など、新たなアクションを開始する場合、事前に効果を予測するために現在の自社における標準原価は把握できていなければならない。そうでなければ、仮に新しい戦略なり革新を実行した場合の効果が、事前に定量的に見えてこないのである。太平洋に羅針盤一つなしで乗り出す愚かな船長はいないであろう。
 特に印刷企業の場合、生産は経営活動そのものである。生産工程における標準原価が分からなければ、ブルー・オーシャンへ乗り出すにもリスクが大き過ぎるのである。今後、画期的な戦略や技術が生まれ、何らかのアクションを起こそうにも、リスクが大きく移行できないとなれば、標準原価をしっかりと持っている企業との差は広がるばかりである。

JAGATは、印刷業の生産工程(刷版、印刷、製本)における標準原価を捕らえる手法について、生産管理者、経営者向けのセミナーを実施しています。興味をお持ちの方は、研究調査部の高坂(03-3384-3411)までお問い合わせ下さい。セミナーの詳細をご説明いたします。なお、2007年1月開催は定員を超えたため、次回募集は2007年2月1日(木)、開催分になります。

2007/01/10 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会