2006年11月下旬から12月上旬にかけてJAGAT会員企業の経営者を対象に行ったアンケートの結果と要約を紹介する。
総評
2006年は受注獲得に向けた価格競争が続く中での資材料値上げによって、合理化努力が打ち消される構造になった年である。社内では合理化、競合とは受注競争、顧客には価格転嫁要請、仕入先とは単価折衝と、ステークホルダーとの関係において従来にない問題解決を同時に要求される局面が増え、経営は多忙を極める1年だったと思われる。
2006年は設備投資を実施、あるいは新規取り組みが一定の成果を上げ始めたとする会社が増えた。取り組みにWeb受注・オンデマンド印刷などネットワーク・デジタル領域への進出を上げる動きも目立つ。2006年を社内基盤整備の年と位置付けた会社も多い。
2007年に設備投資を予定する会社、新業態の検討や市場でのリポジショニングを試みようとする会社も少なくない。各社が従来の縮小均衡策とは異なる方向での打開を目指すスタンスに変化しつつあるように見受けられる。印刷製品の低価格化と合理化努力を上回る資材料価格値上げが続くなら、今後は従来の縮小均衡策が機能しなくなるリスクが高まっているからであろう。
顧客からの品質要求が高まり、個人情報保護法への慎重な対応も求められ、顧客対応の複雑化を指摘する意見も増加した。このようにして見ると、2006年は多くのステークホルダーとの間で問題解決に向けた相互理解を要求された年であり、経営の高度化に向けた社内基盤整備や、市場ポジションの修正などが一層重要性を増した年であったようだ。
印刷会社経営者の2007年業績予想
1.売上高伸び率
(1)予想レンジ +0.4〜+3.4% (+0.5〜+4.8%)
(2)予想中間値 +2.1% (+2.6%)
2.営業利益増減
(1)予想の分布
@増益 27.8% (29.5%)
A2006年なみ 47.2% (38.6%)
B減益 25.0% (31.8%)
(2)予想中間値 2.94 (3.05)
大幅増益=1、増益=2、2006年なみ=3、減益=4、大幅減益=5とした予想の平均値。
2007年の業績予想を( )内の前年同期調査結果と比べると、売上高伸び率の予想中間値は0.5ポイント低下し予想レンジは下方に狭まり、売上高予想を保守的に見る傾向が強まった。
利益増減の予想中間値は0.09の微改善ながら分布は「A2006年なみ」が大幅増加となって、利益予想を中立的に見る傾向が高まった。希望的観測を含む面もあろうが、収益力の改善・回復を見込む経営者がやや増える傾向にあるようだ。
「JAGAT info」2007年1月号より
2007/01/05 00:00:00