PAGE2007カンファレンスのグラフィックストラックD3「RAWデータ徹底検証」(2月8日 16:00-18:00)について報告する。
本セッションはJAGAT郡司秀明をモデレーターにスピーカーとしてAdobe Systems社の市川孝部長、電塾の早川廣行塾長をお招きして現状と近未来について分析した。市川氏は標準RAWフォーマットであるDNGを提唱しているAdobeの代表なので、「RAWを肯定&標準化が大事」というスタンス、早川塾長からはカメラマンの立場で現在のデジタルカメラのデータ環境を俯瞰いただき、RAWデータの優位性、標準化の必要性を説明いただいた。
スピーカー二人がRAWデータ肯定派なので、モデレーターの郡司はあえてアンチテーゼを投げかけたが、今回はジャブ程度というのが正直なところで、来年くらいに方向性が固まり本格的な議論が出来るものと思う。
市川氏のプレゼンはRAWを取巻く環境において何が問題なのか?から始まった。
そしてユーザーにとっての心配事は
ということから、今やデジタル画像に対して一企業を超えた責任を持つ(これがビジネスにもつながる)Adobe Systems社が旗振りして標準化に乗り出したのがDNGである。 Adobeが調べた限りでは現在141のRAWフォーマットがあるらしく、標準化によるデメリットを考慮しても標準化せざるを得ないということであった。
デメリットはメーカー各社の独自技術による画像演出なのだが、大手二社を中心として標準化への足取りは重い。 Adobeの主張に対してモデレーターが投げかけたアンチテーゼが、汎用現像ソフトも数多く出ているが、これくらい簡単にフォーマットを解析できて問題が無いなら、それはRAWデータとは言い難く、標準フォーマットに統一しても良いくらいだが、現実はメーカー純正と汎用現像ソフトでの品質差は大きいといわざるを得ない。特に空という大切な色まで変わってしまうものまであり、標準化に賛成できるものではない。
これに対して市川氏は、エンジニアの立場から各社の秘密ノウハウ部分は残して、標準化できる部分はするべきだという発言をされていた。デモザイクの工程やA/D変換前のアナログ処理辺りが今後日進月歩で進歩することが予想され、これまでのDTPの進化のように「オープンや標準化といえば正論である」とは簡単に頷けないのもまた真実なのだ。DNGはすでにあるTIFF/EP(ISO12234-2:2001)を基準にしているが、技術の発展を考えるとがんじがらめの規格化よりもAdobe主導のデファクトスタンダード的な標準化の方が、もしかしたら実践的なのかもしれないと感じた次第である。
早川塾長の持論である「写真は階調再現」から、ビット数による階調再現差をビジュアルで明示することからプレゼンは始まった。「デジタルカメラの再現性を活かした画像処理には16ビット処理が不可欠で、そのためにはRAWデータによるワークフローの確立、カメラマンにハンドリングしやすいソフトやフォーマットが待望されている」ということが終始一貫した主張だったが、早川塾長のように複数台のデジカメを常時使用するカメラマンにとっては、メーカー純正というより汎用的な現像ソフトが使用しやすいというのが本音なのだろう。
早川塾長が主張するRAWのメリットは
だが、品質的な問題が多少あろうと数社のカメラを同時に現像ソフトで扱いたいと思っているカメラマンが大半で、RAWプラグインは便利なツールである。そういう考え方でいけば「Lightroom」こそカメラマン向きのツールであり、Photoshopが高度な機能を持ちすぎてしまったため、普通のカメラマンが使うにはそういう意味でも、「Lightroom」が最適といえる。
標準RAWフォーマットに関しても、カメラマンからしたら反対する理由はあるはずもなく、反対している大手デジカメメーカー二社がDNGを採用することを望んでいるということであった。もちろん標準化のデメリットも理解した上での発言であることはいうまでもない。
例えば某社のデジカメで三年前のRAWデータを最新型の現像ソフトで現像し、三年前のものと比べて見ると、ビックリするような品質アップが図られていることは確認されている。まさしくRAWなら数年先に現像アルゴリズムが進歩すると品質が上がるという証明なのだが、各社のノウハウも失わない形で標準フォーマットが普及することを切に望むものである。
2007/03/02 00:00:00