SGMLは、その性質として静かに深く潜行しながら普及しているので、一体SGMLがどこまで進んでいるのかが一般には見え難いものであった。一方XMLはインターネットの爆発的な普及に乗じて、今まで文書システムを考えてもいなかったような分野でも取り組みが始まった。今SGMLとXMLというファミリーは、位置付けが大変難しいところにあるのかもしれない。
しかし、これらはバラバラの現象ではなく、そのうち収束すべきところははっきりしているのである。つまりデータベース化やネットワーク化が進むとともに,そのデジタルドキュメントを情報資産としていかに蓄積・検索・活用するかが重要な課題なのである。
従来からドキュメントの電子化は取り組まれててきたものの、特定のアプリケーションで作成されたデジタルドキュメントは,作成されたアプリケーションなしでは利用もままならない。しかもコンピュータの変化は激しく,OSも,対応するアプリケーションも頻繁に改訂され、したがって,特定のアプリケーションに依存したドキュメントでは,10年も経つと閲覧,活用できなくなってしまう。
アメリカの国立公文書館では,南北戦争の頃の紙文書は現在でも閲覧できるのに対し,近年作成されたデジタルドキュメントの中にはすでに閲覧できなくなっているものが存在しているとのことである。
今や,インターネットであらゆる情報が瞬時に検索・閲覧・交換できる時代に対応したドキュメントのデジタル化が必要である。
特定のアプリケーションに依存せずに,大量のドキュメントを効率よく出力する記述方法の検討からスタートし,軍需プロジェクトのドキュメント記述に採用され,その後も国家主導で産業界に浸透したSGMLも,インターネット時代に対応したドキュメント記述方法として,企業内ドキュメントや出版業界などで利用が拡大されつつある。
HTMLは,ビジュアルな表示や関連情報へのリンク機能などが利用できるため,急速に個人レベルまで普及した。しかし,HTMLドキュメントを蓄積しても,決められた少数のタグだけではブラウザで閲覧する程度の利用しかできない。そこで,SGMLの拡張性とHTMLのインターネット利用性とを兼ね備えたXMLが提唱され,ドキュメントのみならず,デジタル放送,地図情報システム,電子商取引,サプライチェーンマネージメントなど幅広い情報交換への利用が検討されている。とはいえ,XML関連の規格はまだまだ検討中のものが多い。
日本政府では21世紀初頭の電子政府実現を目指して各省庁で急速に行政の情報化が進展し,白書等データベースシステム,医薬品安全性情報提供システム(医療用医薬品添付文書のSGML化)などが運用開始されるとともに,電子文書交換システム(省庁間で交換する電子公文書のSGML化)も運用を開始しようとしている。また,裁判所の判例,国会議事録,官報などについても,SGMLやXMLを利用した電子化が進められている。
製造業界の製品マニュアル・製品カタログ,金融・損保業界の内部ドキュメント,出版業界の辞書辞典類・雑誌類・オンライン情報提供,などへのSGML利用も進展している。
このような状況の中で,SGMLとXMLはドキュメントのデジタル化にどのような影響を与え,どのように進展して行くのだろうか? 出版業界や印刷業界ではどのような取組みが行われており,今後どのような取組みが必要なのだろうか?
PAGE2000コンファレンスのSGML/XMLトラックでは,「SGMLか? XMLか?」「出版側の取組み動向」「印刷側の取組み動向」の3つのセッションで考えることにした。
SGML/XMLトラックは,2月3日(木)午前9時から,サンシャインプリンスホテル2階「乙女の間」で行なわれる。
SGML/XMLに関心を持たれている方は,ぜひこのセッションに参加してディスカッションに加わり,これからのSGML/XMLビジネスについて考えていただければと思っている。
2000/01/26 00:00:00