PAGE2000展示内容から読み取れること
PDFをハイエンドに使う機が熟そうとしている。日本語フォントも,レイアウトソフトも,画像/製版ツール間のデータ交換も,出力のRIPも一斉にPDF対応を始めた。この問題をもっと広い視点で見れば,高性能コンピュータのコモディティ化によって,文字・画像のコンテンツ(オブジェクトと呼んでもいいが)の完結性が高まる方向にある。たとえば,文章はXMLを使ってタグの付け直しをしないとか,フォントは文書に埋め込みになるとか,画像はデジタルカメラで撮ってレタッチなしで使うような方向を多くのところが目指している。
InDesignの波及はまだ見えないが,DTPの次の姿の方向性はいくつか見えてきている。第1の方向は,DTPは完成度が高められたソフトが残るようになった。これが「停滞」と見えるかもしれないが,ソフトの世界は上中下というレベル差が併存しない原則があり,特徴のない弱者は淘汰される。
メジャーなソフトはXtentionでの機能拡大をしているが,攻めるソフトはオールインワン化して,1本のソフトで組版も作図も画像も処理できるようにしているのが第2の方向である。
第3の動向は専門分化で,新聞,帳票,パッケージ,ラベルなどのプロ用機能がDTPに持ちこまれていく。
第4の方向は統合化であり,DTP以外の分野のアプリケーションとのインテグレーションをするシステムがある。データベースやオフィスソフトとの連携が多いが,方正のチラシシステムはマーケティングと連動する方向にある。販促との連動というのもひとつのトレンドである。
第5のトレンドは管理システムで,以前からあるMediaBankに続いて,QuarkのQPSやQDMSなどコーポレートワイドなアセッツ管理やワークフロー管理がやっと日本でも登場した。ここまで揃えないとデジタル化した本当のメリットは出ない。この先にやっとマルチメディアも可能になるのである。
カラーマネジメントも急変した分野である。ユーザの機器や環境に合わせたプロファイル作りの道具が倍増した。計測器は,濃度計,色彩計,分光光度計などさまざまなものがあったのが,分光光度で管理する方向にある。ICCプロファイルのツールも増え,現場にあった小技を実現できる段階になった。
出力ワークフローはPDFベースになる。DTP編集をオープンな横断的なものにした一つの要因はEPSファイルであったが,今度はPDFが同じように出力周りの製版ツールを連携させ,自動化させる役割を担うのである。
DTPが前工程の自発的な努力の積み重ねで開花した「草の根」的なシステムであった時代に終わりを告げ,手作業による製版まとめを排除して,システムによって安定化させる「品質保証」の時代へと変わろうとしている。
(テキスト&グラフィックス 通巻128号より)
*PAGE2000展示内容の解説を載せた、テキスト&グラフィックス研究会会報通巻128号の見本誌は、文化会館2Fの展示ホールDのJAGATコーナーで配布しています。(先着順)
2000/01/27 00:00:00