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PDF/X-4とAdobe PDF Print Engineで変わるPDFワークフロー

PDF/X-4は、PDF/X-1aやPDF/X-3の後継の規格として策定が進み、PDFのベースバージョンは1.6である。PDFの中で透明効果やレイヤーを使用することができ、PDF/X-1a、PDF/X-3に比べ利用範囲が広くなる。

また、Adobe PDF Print Engineは、透明効果など複雑なデザインやエフェクトを含むPDFファイルを印刷機器で迅速、高品質に出力するプリントソフトウェア技術である。この技術の特徴は、最終RIP直前まで一切変換しないことである。アプリケーションで編集した状態のPDFをAdobe PDF Print Engineが搭載されたRIPで処理することで、それぞれのデバイスに最適な処理を行う。したがって、元になるPDFはデバイス依存の処理をしないことになる。PostScriptではサポートしていない透明やレイヤー機能もそのままPDFに活かすことができるようになり、変換は1回で済むため処理時間も早くトラブルも少なくなる。

透明を認めるPDF/X-4、透明処理の得意なAdobe PDF Print Engineという規格と技術が同時期に登場したことによって運用がより容易になり、いよいよ本格的なPDFワークフローに移行できるのではないだろうか。
PDF/X-4とAdobe PDF Print EngineによるPDFワークフローについて、研究会でお話を伺った。



PDF/Xの最新動向

PDF/Xは、ISO(国際標準化機構)の規格である。ISO15930という番号に、-1、-2が付くことによって、PDF/X-1aなどを表している。PDF/Xの元になっているPDF/X-1aは、PDF1.3をベースに「透明効果を使用してはならない、カラースペースはCMYKと特色、フォントは必ずエンベッド、OPI(出力時の画像の差し替え)を使用してはならない」などを定めている。

これを少し拡張したものがPDF/X-3であり、PDF/X-1aにRGBのカラースペースもサポートしている。依然として、透明効果は禁止である。
PDF/X-4は、PDFのベースバージョンが1.6になる。PDFの中で透明やレイヤーを使ってよいことになり、PDF/X-1a、PDF/X-3に比べさらに利用範囲が広くなった。とくに透明効果をPDFの中で使用できることで、文字の品質が向上する。また、RGB運用の品質が向上するメリットがある。

文字品質の向上については、PDF/X-1aやPDF/X-3では透明が使えないため、画像と文字が透明で重なった場合、文字をアウトライン化したりラスタライズしたりしてビットマップにする必要が出てくる。それによって文字が太くなることがある。
RGB運用の品質向上では、CMYKオブジェクトとRGBオブジェクトが透明で重なっている場合がある。重なった部分を透明のまま保持できないPDF/X-1aでは、結局CMYKに変換してから合成することになる。したがって、RIPするときはRGBデータが一切なく、CMYKデータなってしまう。アプリケーション側でCMYK化されてしまうのである。

ハイエンドのRIPではRIP側で高度なカラーマネジメント、RGB-CMYK変換ができるようになっているが、データの段階であるアプリケーション側で既にCMYKになっているので、それらのカラーマネジメントを使うことができない。
PDF/X-4は、透明を透明のまま渡すことで、RGBのデータがそのまま渡されるので、RIP側で高度なカラーマネジメントを使用できる。透明を許可することで可能になるワークフローである。

Adobe PDF Print Engineとは

Adobe PDF Print Engineは、透明効果など複雑なデザインやエフェクトを含むPDFファイルを印刷機器で迅速、高品質に出力するプリントソフトウェア技術である。
この技術では、大きく分けて2つのコンセプトが提唱されている。1つは、最終RIP直前まで一切変換しない点がある。もう1つは、信頼性の高いPDFソフトプルーフが可能という点であり、画面上で最終RIP処理と同様の処理結果が表示できるものである。

最終RIP直前まで一切変換しないということは、デバイス依存の処理をしないことを表している。編集した生の状態のPDFをそのままAdobe PDF Print Engineが搭載されたRIPで処理することで、各々のRIPがそれぞれのデバイスに最適な処理を行う。したがって、その元になるPDFはデバイス依存性がなくなる(Device Independent)。

PostScriptが登場したときは、デバイスに依存しない処理ができるようになったと言われた。しかし、実際には出力する際にPPD(PostScript Printer Description)ファイルを選ばなければならない。透明の分割統合のパラメータを意識しなければならず、PDFでも気を遣わなければならなかった。
この新しい技術を搭載したRIPを利用することで、デバイス依存の処理はすべてRIP側で行うことになり、PDFはどこへ持っていっても最適な処理が行われることになる。デバイス依存性のないワークフローが可能になるということである。


(続きはJagat Info 2007年5号、詳細報告はテキスト&グラフィックス研究会会報 Text & Graphics No.257に掲載しています)

(テキスト&グラフィックス研究会)

2007/05/19 00:00:00


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