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全国に広がる地域密着型「ネット経済新聞」

■旬の街ネタを伝えるミドルメディア

「東京・渋谷」、「大阪・なんば」のように、地域に特化して街の情報を集め、ネットで発信する試みが全国に拡大中だ。2000年に東京のPR会社が「シブヤ経済新聞」を創刊してから、各地で地元のIT企業や印刷会社による創刊が相次ぎ、現在では「みんなの経済新聞ネットワーク」の名で、海外を含めた全24の地域にまで広がった。

■技術系社員にマーケティングマインドを

天神経済新聞

天神経済新聞」(2005年8月創刊)は、このネットワークのひとつで、福岡・天神エリアのビジネス・カルチャー情報を配信するネット新聞である。運営するのは、デジタルコンテンツの制作・プロデュースを手がける九州インターメディア研究所。1998年に、福岡及び九州でのマルチメディア産業の振興を目的として、産官学の協力のもと、地元の印刷会社などを母体として発足した会社である。

創刊当初はすべてが一からのスタートで、情報の入手経路も少なく、日々の更新にも苦労したが、足を使った取材とコンスタントな情報発信活動が信頼を得るにつれて人的ネットワークも広がり、今や天神エリアの商業地に関する貴重な情報源として、地元メディアや官公庁からも一目置かれる存在になった。

現在、地元ラジオ局からの依頼で、週に2回、街の話題を伝えるコーナーを担当しており、デジタルコンテンツの制作ディレクター達も持ち回りで番組に出演する。「技術系に走りがちな社員達に、もっとマーケティング・マインドをもって欲しい」という石井盛孝・同研究所社長の意図によるものだ。

■自らメディアを持って育てる意義

社員の意識改革や、会社の知名度の向上といった、当初想定されていた効果もさることながら、前述のラジオ以外にも地元ケーブルテレビ局に情報を提供するなど、サイト内のバナー広告収入以外にも収益の芽が出てきた。

注目を集めるにつれ、記事掲載を持ちかけられる機会も増えてきたが、メディアとしてのさらなる価値向上を目指し、記事広告の類は掲載しない。また、「自ら取材した記事以外は書かない」というスタンスをはっきり打ち出すことで、ブログなどに代表されるパーソナルメディアとは一線を画し、既存の新聞社などのマスメディアとの中間的な存在という意味の「ミドルメディア」という位置づけで活動を続ける。

今後も短期的な利益にとらわれることなく、中長期的に収益源としていけるような事業展開を考えているという石井社長は「受託で制作をやるだけでは限界がある。自らメディアを持って育てるというのも、制作会社の将来の姿ということで、ひとつの選択肢では」と語る。

(2007年6月)


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2007/06/11 00:00:00


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