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いつまでもバイト気分の自分を変えるために

◆林 和香子

アルバイトとして印刷会社に入社し、現在は嘱託社員として5年働いています。学生のころからMacを扱う仕事に就きたいと考えていたので、希望していた印刷会社で働くことができとてもうれしく、職場の人間関係も良かったため、私は正社員登用を目標に日々の業務に就いていました。


仕事内容は、顧客から入ってくる原稿を基に、Mac上で製品を作成していくことが多く、印刷部数が多い物件などは、小さなミスでも大きな損失が出るため、常に緊張感のある現場です。毎年、新入社員が入社してくる中で、私は嘱託とは言え周りからの扱いはほぼ一人前となり、今まで普通にこなしてきた仕事もさらにステップアップしていかなくてはならないと考えるようになりました。
しかし、嘱託というほかの社員とは少し違った不安定な立場であることは、私にとって少しずつ周囲との溝を作る原因になっていったように思います。私はこの会社に必要のない人間なのではないかと、この職場で仕事を続けることに不安を感じるようになりました。そして、次第に仕事に対する心構えも甘いものになっていきました。

DTPエキスパートの試験を知ったのは、社長の勧めで「チャレンジThe DTPエキスパート」を受講したことがきっかけでした。その内容は、印刷物を作るのには大切な知識でしたが、毎日Macの作業だけに没頭していた私には知らなかったことが多く、まだ自分は勉強不足だと痛感しました。
しかし講座を終えても、なかなか本試験に臨もうとする人は現れませんでした。私が合格できる可能性は少ないだろうと思いましたが、現状を変えたいという気持ちが強かったので、資格取得を目指して勉強を始めました。仕事も忙しい時期で大変でしたが、毎日少しずつ勉強を続け、試験に合格することができました。

合格した後も、毎日の仕事内容が変わるわけではありませんが、心境の面ではとても変わったように思います。嘱託社員であることの引け目がなくなり、立場は違っても同じ職場の社員だという意識をもつようになりました。そしてDTPエキスパートの勉強をしたことにより、今まで自分の仕事の手順ばかりを考えていましたが、ほかの工程にも気を配ることが大切だと気づき、ほかの部署とのコミュニケーションを取ることを心掛けるようになりました。そこで積極的に仕事に取り組む社員の皆さんを見るたびに、自分はまだまだ経験不足だと感じることが多く、まだまだ勉強が必要だと思いました。
もともと、勉強嫌いだった私でしたが、この試験を受けたことで、学ぶことの楽しさを見つけることができました。なぜなら、今まではあまり会話をする機会がなかった上司や社長などとも、話ができるきっかけを作れたこと、そうして新しい人脈が生まれ、たくさんの人と会話をすることにより、自分の視野を広げることができるようになったからです。

そして、今年の4月からは正社員登用が決まりました。今までのように、「私はアルバイトだから」と自分を甘やかすことはできません。これまで学んできた知識を生かし、さらに技術を高めていきたいです。今年からは私の後輩たちもこの試験に挑戦するようなので、その時は、私が勉強してきたことを振り返って、みんなの力になり、ともに成長していきたいと思っています。
ショセキは今年で創業60年となりました。長い歴史をもつこの会社で働けることは、私にとって誇りであり、今後はさらに多くの実績を残していきたいと考えています。
これまでは自分のためにがんばってきたことばかりでしたが、5年間もの間、私の成長を見守っていてくださった職場の皆さんに深く感謝し、これからは恩返しができるよう、正社員として会社に貢献していけるように努力したいと思います。

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2007年6月号


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2007/06/21 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会