液晶モニタの色再現とカラーマネジメント(研究会速報)
■AdobeRGB対応液晶モニタの色再現と機能
日本サムスン株式会社 デジタルプロダクツ事業部 次長 宮田 隆 氏
プロフェッショナルの印刷・DTP・グラフィック・写真業界等では、sRGBを超える色域が標準として普及、RGBワークフローの導入も拡がりを見せつつある。
さらに、一般コンシューマー向けのAdobeRGB色空間に対応したデジタル一眼レフカメラやプリンターの市場が拡大の一途をたどり、rawデータ現像を含むAdobeRGBの色域を活用する用途と、ユーザー層のすそ野の拡大が顕実化している。
一方で、従来のsRGB色域モニターではAdobeRGB色域に対して、70%〜80%程度の色再現性しかなく、広色域のカラーマッチングの普及にはモニター表示性能が『ボトルネック』となっていた。また、AdobeRGB対応モニターは従来は高価で特定の企業にしか購入できないものであった。
このような業界・ユーザーの要望にお応えするものとして、当社は今回XL20を開発・販売するに至った。
LEDバックライトのメリットについて、すべての液晶モニターは、光源として内部にバックライトを搭載している。
一般液晶モニターの場合、光源として 冷陰極管(CCFL)という蛍光管を使用しているが、XL20は LED(Light Emitting Diode)という新しい技術の光源を使用している。
LEDバックライトモニターは 、NTSC比82%の色領域を表示する一般モニターよりずっと広い色領域である、NTSC比114%の色再現領域を実現し、既存のLCDモニターでは表現することができなかった深い紅や緑、例えば薔薇の深い赤色や、澄んだ海のエメラルドグリーン色の正確な色相表現を実現する。
一般の液晶モニターで使われる冷陰極管(CCFL)は周波数雑音の影響で混色が発生して、色再現範囲を広げにくいという問題がある。XL20の場合は、広い色空間を作り出せるRGB三原色のLEDアレイを光源とした新開発のバックライトシステムにより、R、G、BそれぞれのLEDが混合されて白色が形成されるため、このような混色の問題が少ない特徴がある。そのため、色再現範囲も広くなる。
さらにLEDバックライトは、10万時間以上のバックライト寿命の改善、 水銀・ハロゲンなどを使わない エコ・フレンドリー製品という長所をも兼ね備えている。
また、PCの8ビットの信号を、RGB各色に10ビットのLUT(ルックアップテーブル)に展開することで、 約10億6433 万色中約1677万色の表示が可能。用途に合わせてガンマ値や色調を変更する際にも、本来の階調性を損なうことなく、階調飛びの無い滑らかな色再現を可能にする。
■広色域を実現するキャリブレーション対応ワイド液晶モニター
NECディスプレイソリューションズ株式会社 開発生産本部 商品開発グループ マネージャー 荒井 豊 氏
マルチシンク液晶ディスプレイLCD2690WUXiは、AdobeRRGB比95%、NTSC比91%というCRTディスプレイをも凌ぐ広い色度領域を持ち、AdobeRRGBデータのもつ本来の色を精確に再現、クリエイターの厳しい目に応える。
LCD2690WUXiの特長を以下に示す。
1.CCFL方式による広色域液晶パネルを採用
2.視野角特性による色変移の少ないIPS液晶
3.広範囲な輝度調整が可能
4.作業領域を拡大しつつ、見易さも改善した25.5インチワイドパネル
5.工場調整時に製品1台毎の特性を測定し、輝度ムラ、色ムラを補正
6.12bitLUT採用によるガンマ補正を実施。滑らかな階調を表現
7.専用ソフトウェアによるハードウェアキャリブレーション対応
CCFL式バックライトによる広色域液晶パネルの実現により、顧客の求めやすい価格で製品を供給することが可能になった。
色域については、Adobe.RGBと比べて、Green以外での差は少なく、グラフィックス向けとして必要十分な色域をカバーしていると考える。
また、モニタの大画面化に伴い、画面端に対する視野角が無視できなくなる。26インチワイドの場合、画面から300mm離れた場所から画面を見るとした場合、画面の左右端までの角度は約42度となる。このときに見えるカラーシフトが問題となる。そこで、視野角特性による色変移の少ないIPS液晶を使用している。
2007/06/20 00:00:00