本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

要約(Summary)

JAGAT技術フォーラム座長
和久井孝太郎

リアルワールドの環境が大きく様変わりしつつある。20世紀終盤のデジタル革命(Information Technology:IT革命)が、21世紀に入りデジタル&コミュニケーション革命(Information Technology & Communication:ITC革命)へと進化したからである。その象徴がクロスメディアであり、デジタルワールドのWeb2.0の成功である。

時代の変化はますます加速している。クロスメディアがリアルワールドとデジタルワールドのコラボレーションを強化する。文化が求めているものは、真の調和を目指す創造力(クリエティビティ)である。

図:クロスメディア

The environment of the [REAL WORLD] is starting to change. The reason is that in the 21st century, the digital Revolution of the 20th century(the IT revolution) is transforming into a digital communication revolution (Information Technology & Communication 'ITC revolution').
The symbol of this evolution is cross media publishing, and the success of Web 2.0 in the [DIGITAL WORLD].

Times are changing faster and faster. Cross media publishing strengthens the collaboration between the [REAL WORLD] and the [DIGITAL WORLD].This cultural change requires creativity to achieve real harmony between the two worlds.

JAGAT技術フォーラムでは、急速に進展する情報技術が私たちのコミュニケーションとメディアそして文化にもたらすインパクトの検討を長年続けている。2006年度は、主題『Web2.0時代のコミュニケーションとWebブランデング戦略そして未来』、副題〜『グーテンベルグの銀河系』から『チューリングの宇宙』へ〜としてまとめた。

企業のみならず公益を含むあらゆる組織で重要度を増しているマーケティング問題と共に、Web2.0の特長をブランデング戦略に活かすためのWebブランデングについて具体的に検討した。しかしその先には、更に大きい変化が予想される。

日本政府のイノベーション25戦略会議は、ITC革命の基盤の上にロボット工学、遺伝子工学、ナノテクノロジーなどの進歩を予測することで、20年後に目指す国民生活の姿を描いた「イノベーション25中間とりまとめ」を2007年2月26日に発表した。

一方、欧米の科学者の中では、今後20〜30年でAI的なものが人類の知能を超え、その先の予測が困難な「シンギュラリティ(技術的特異点)」を迎える、との意見もある。時代の変化はますます加速している。

『グーテンベルグの銀河系』とは、17世紀半ばにグーテンベルグが開発した近代印刷技術がその後の西欧文化全体に与えた影響を、メディア論の先駆者マクルーハンが論評した書籍のタイトルである。とするならば、印刷技術を含む現代のデジタル情報技術が拓く文化の広がりを『チューリングの宇宙』と表現することは妥当であろう。

『チューリングの宇宙』では、そこに蓄積される情報は時間と共に指数関数的に増加する。そして、デジタルワールドの仮想空間は無限に広がる。

人類を代表するものは、太古から引き継いできたDNAと文化である。時代の変化とは文化の変化である。今、文化がリアルワールドの私たちに求めているものは、真の調和を目指す創造力(クリエティビティ)である。

リアルワールドとデジタルワールドのコラボレーションを強化する必要がある。そのためにこそクロスメディアの進展を図るべきだ。JAGATは、紙メディアの特性を活かしたクロスメディアを推進することで、社会の心を豊かにしていきたい。今や、紙メディアを含む全てのメディアが『メディアの大分岐点』にさしかっている。



報告書 サマリー(目次)

1.すべてはコミュニケーションから生まれる〜マーケティングとコミュニケーション〜
企業のみならず非営利活動領域でもマーケティングの理論や発想を活用する必要がある。今回は、JAGAT会員とのより良いコミュニケーションを目指す当協会のマーケティングについて、(株)博報堂広報室の池田諸苗氏にご指導いただいた・・・・・・・
2.Web2.0時代のコミュニケーション
インターネットバブル崩壊後、21世紀に入って、個人が高性能パソコンを容易に入手 できるようになり、ネットが高速化・低料金化すると同時に、Web自体のプラットホーム化によって、さまざまなデータを共有する仕組みが進歩した。企業や組織に限らず個人レベルでも、情報の発信・受信・検索・共有の高度な機能を容易に利用できるようになって、ネットコミュニケーションはWeb2.0と呼ばれる時代へと進化した・・・・・・・・
3.Webブランディング戦略
従来、企業のブランディング戦略では、商品やサービス自体の良さに加えて伝統的に紙メディアが重要な役割を果たした。Web2.0時代に入って、Webブランディングの成功事例がいくつも報告されている。その一つに野村證券の例がある。リーダーのNRIウェブランデア(株)白鳥陽裕氏にご指導いただいた・・・・・・・・
4.太郎の1日(2007.3.13)
これはフィクションではない。実在の人物の現時点でのメディアと生活の記録である。そして、この中で大学の教科書をハブとしたクロスメディアの成功事例と共に、シンギュラリティ(特異点)というITC革命の未来予測のキーワードが登場する・・・・・・
5.「イノベーション25」伊野辺(イノベ)家の1日
日本政府のイノベーション25戦略会議は2007年2月26日に、2025年にめざす国民生活の姿を描いた「イノベーション25中間とりまとめ」を発表した。その中で『伊野辺(イノべ)家の1日』をイラスト付きで報告している。前節の『太郎の1日(2007.3.13)』と読み比べることで、これからの約20年に私たちのコミュニケーション環境と生活で何が起ころうとしているのか? そして、標準的な日本人が発想する未来?とは何かなどいろいろなことが垣間見えてくる・・・・・・・
6.まとめ:『グーテンベルグの銀河系』から『チューリングの宇宙』へ
次に何が大きいビジネスになるか?など個別変化の予測は難しくても、文化進化レベルのマクロな未来予測は十分できる。私たちは、それらの知恵を活用することで時代が求める創造力(クリエティビティ)を強化することができる・・・・・・・・
目次 |  次へ |

2007/07/12 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会