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太郎の1日(2007.3.13)

JAGAT技術フォーラム座長
和久井孝太郎

これはフィクションではない。実在の人物の現時点でのメディアと生活の記録である。

AM 5:30
ベッドを抜けだしトイレへ。玄関を出て新聞と牛乳を取りに行く。日がだいぶ伸びたな。今日も1日晴らしい。
牛乳を冷蔵庫に収納。自動ポットの水を入れ替えスイッチON。床暖房、エアコンON。リビングの雨戸を開け、折り込み広告をはずし新聞を持って再びベッドへ。今日は1日外出の予定はない。ベッド横のスタンドON。新聞にざっと目を通す。

AM 5:50
TV ON。新聞を読みながらNHK総合で天気予報とトップニュースを聴取。

AM 6:15
新聞をたたみ、TVとスタンドOFF。目を閉じ今日1日のスケジュール他、あれやこれやとベッドの中で思い巡らす。私自身、この時間帯が頭の回転が最もよい。何か思いつけばメモをとる。

AM 7:15
起床。着替えて洗面1。仏間の雨戸を開ける。仏壇の御茶と神棚の御水を下げ、新しい御茶と御水と入れ替えて礼拝。当家は浄土宗である。仏壇の礼拝は。「南無阿弥陀ぶ」を8回⇒「南無阿弥陀仏」、そして最後に「南無阿弥陀ぶ」と唱える。神棚は二礼二拍手一礼。私のライフワークは、後世に残す電子仏壇をつくること。諸法無我。諸行無常。涅槃寂静は最高の哲学だ。現代の自然科学とも矛盾がない。

AM 7:40
いつものように中学校に通学する孫娘がトン・トンと2階から降りてくる。お早うございます。いつてきます。私は、玄関に出て、ハイ、お早う気をつけていってらっしゃい、とこれを見送る。わが家は息子家族が2階に住む2世帯住宅。私自身は妻に先立たれたので単身世帯だ。

AM 7:45
食前・食後の薬準備。食前の薬(血糖値のコントロール)を飲み忘れるな。朝食の準備は前日夕食の準備時にしておいたのでレンジでチンが大半。民放朝ワイドTV ON、朝食開始

AM 9:00
食事の後始末を全て終了。洗面2、御茶を一服。

AM 9:30
リビングのパソコンON。goo/RssReaderが自動的に立ち上がる。特別なことがなければ毎日最初に「最新gooニュース」をモニターする。理由は、社会・国際・経済・科学技術・エンタメスポーツなどのバランスが自分自身の1ストップ・レビューに向いている。
パソコンや携帯電話は素晴らしいツールであるが、現在はロボット化が未熟なセルフサービス型。メディア利用でもあれこれキーボード操作が必要。良いWebサイトは、簡潔なユーザー操作で目的が達成できるもの。

今朝の最新gooニュースのトップページ(最新記事237件中1〜20件表示)で私自身が本文を読んだ記事は、次の2件である。
『大日本印刷の関連会社元社員による個人情報流出合計43社・約864万件にBIGLOBEの会員情報21万件、auの加入者情報11万件なども新たに判明』、『ヤフーの利用時間は6年で25倍に増加(ネットレーティングス調査)』
本文は読まなかったが注意を引いたのは3件。『タウンページも'2.0'−NTT-BJ、「iタウンページ」の機能強化』『ZMP、ミュージックロボット「miuro」の遠隔オプションを提供』『限定台数999台−PCで制御可能な「ロボットアーム限定パック」』

AM 9:40
「Googleニュース」をチェックしてからマイ・プロバイダYAHOO!BBを開き着信メールを確認。引き続き「YAHOO!ニュース・トップ」を見る。今日は着信メールのチェックとニュース他のチェックが20分ですんだ。

AM 10
今日の午前中は、いつかトライしようと考えていた『太郎の一日』の前半を書くことにした。パソコンのWordを立ち上げ、今朝ここまでしてきたことを思い出しながらざっと文章化。

AM 11
一服。気になっていた松岡農水相の事務所経費問題。今日の参議院予算委の集中審議はどうなっているだろうか?
なにしろ電気・水道費も冷暖房費もタダのはずの議員会館に事務所を構えながら、政治資金収支報告書に過去5年間で約3,000万円もの事務所光熱水費を計上しこれを問題にされると、「なんとか還元水のようなもの」とか「今ごろ水道を飲んでいる人はいないでしょう」などと言い訳。美しい国づくり内閣を主導するはずの安倍総理が大事の前の小事とこれをかばう美しくない構図。政治と金の問題、国民の税金は、いったいどのように使われているのか?

一般TVでの午前中の国会中継は予定されていないので、kokkai.jctv.ne.jpを立ち上げて覗いてみることにした。この時間は冬柴国土交通大臣と民主党の白真勲議員とが論戦中であったが松岡農水相問題はとり上げられず、代わりに高知空港で全日空1603便ボンバルディアDHC8型機の前輪が降りず11時少し前に胴体着陸したが乗客・乗員全員無事の第一報が飛び込んできた。

AM 11:20
国会TVはそのままにしてWordを復帰。国会TVの音声を聞きながら『太郎の一日』の前半のまとめを実施、昼食前に一応まとまった。

AM 12
昼食はパンと牛乳・サラダで軽く済ませる。

PM 1:30
午後は、書斎にこもり読みかけのN・グレゴリー・マンキュー著(足立英之他訳)、『マンキュー経済学(第2版)』Tミクロ編とUマクロ編、東洋経済新報社(2005年)を読むことにしよう。マンキューはハーバード大学教授で1958年生まれ。2003年より2005年にはブッシュ大統領の経済諮問委員会(CEA)の委員長も務めた新近代経済学の旗手である。 『マンキュー経済学』は、東洋経済新報社の帯封にもあるように世界中で読まれている(大学経済学部レベルの)入門テキストの決定版と言ってよい。

しかし、筆者がこの2冊の本をそれ以上に高く評価しているのは、教科書単体(印刷メディア)での学習の道具立てに加えてウォールストリート・ジャーナル版なども用意されていて、教師や学生が自らの意志でネットワークメディアなどそれぞれのメディアの特徴を活用し、学習(learning)の発展(development)を可能とするクロスメディア出版の実をあげているからである。教師や学生をサポートするWebサイトはもとより、ビデオやパワーポイント、CD−ROMなどのデータバンクが充実している。

高度情報化と同時にグローバル化が急速に進み、個人や企業を取り巻く社会環境の変化が日進月歩の世界にあって真に役に立つ知識を発展的に身につけるためには、学習するだけでは不十分であり、学びながら発展(development)できる環境を整備することが必要なのである。

『マンキュー経済学(原書名:Principles of Economics)』では見事にそれを現実のものとしている。そうするためには、クロスメディア的に多くの関係者によるコラボレーションが不可欠である。この詳細については本書の冒頭にある「先生への序文」で詳しく語られている。
これに対して「学生への序文」では、21世紀の始まりにおいて学生であるあなたが、なぜ経済学を学ぶべきなのか。理由を三つ上げて簡潔に説明している。第一の理由は、自分が暮らしている世界を理解するのに役立つ。第二の理由は、経済へのより機敏な参加者になるためである。第三の理由は、経済政策の可能性と限界とをよりよく理解できるようになるためである。

この観点は、学生のみならず、21世紀を生きる社会人は改めておさらいをしたほうがよいと筆者は考えているのである。なぜならば、どちらが鶏と卵かは定かでないが急速に進展する高度情報化とグローバル化は、科学・技術の急速な進歩と経済の発展(development)によるものだからである。

ITC(Information Technology and Communication)革命という言葉があるが、ITCと経済は相互に影響しあいながら急速に変化しているのであって、経済は単に成長(growth)しているのではなく変質を伴い発展しているのである。
『マンキュー経済学』の内容そのものについて門外漢の私が論評することは差し控えたいが、Tミクロ編、Uマクロ編共にイントロダクションで「経済学の十大原理」から入っているのは頭の整理のために役立った。

1]人々はどのように意思を決定するか
第1原理:人々はトレードオフ(相反する関係)に直面している
第2原理:あるものの費用は、それを得るために放棄したものの価値である
第3原理:合理的な人々は限界的な部分で考える
第4原理:人々はさまざまなインセンティブ(誘因)に反応する
2]人々はどのように影響しあうのか
第5原理:交易(取引)はすべての人々をより豊かにする
第6原理:通常、市場は経済活動を組織する良策である
第7原理:政府は市場のもたらす成果を改善できることもある
3]経済は全体としてどのように動いているか
第8原理:一国の生活水準は財・サービスの生産能力に依存している
第9原理:政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する
第10原理:社会は、インフレ率と失業率の短期的トレードオフに直面している

ITC革命によって経済学の十大原理はどのような影響を受けるであろうか? 今後を見守りたい。

『マンキュー経済学(Tミクロ編)』pp229〜230に「ヘンリー・ジョージと土地への課税」というコラムが掲載されている。[理想的な税はあるだろうか、19世紀のアメリカの経済学者兼社会哲学者であるヘンリー・ジョージは、それについて考察した。1879年に出版された『進歩と貧困』のなかで、ジョージは政府は全ての収入を土地への課税から調達すべきだと主張した。・・・・・・今日では、土地への唯一の税というジョージの提案を支持する経済学者は殆どいない。・・・・・・しかし、ジョージの議論の多くの部分は今なお有効である。・・・・・・]

筆者はこれを読んでいるうちに、急に今現在では「理想的な税」はどのように議論されているのかを知りたくなった。すぐさま書斎のパソコンを立ち上げ「理想的な税」をキーワードとしてGoogleで検索。 約90万の関連データの中からトップ10が表示される。最初のデータに、環境政策の手段としての[環境税]の記述が出ている。「理想的な環境税とは何か?」 誠に時機を得た話題である。

ここでは、今から約80年前に提唱されたピグー税と呼ばれる理想的な環境税の特徴と問題点が指摘されている。
『マンキュー経済学Tミクロ編』では環境税については、●ピグー税と補助、ケース・スタディ「なぜガソリンには重税が課せられるのか」、●売買可能な汚染許可証、●公害の経済分析への反論などで詳しく説明されているpp288〜294。

Web2.0と呼ばれる時代に入り、大きい費用負担なしにあれやこれやと知的な探検が自由にできることは極めて有難い事だが、その一方で現実世界では環境悪化が急速に進んでいることには忸怩たる思いがする。

PM4:30
本日の読書を終わる。パソコンで着信メールを確認し、返事の必要なものは返信メールを送る。この時間、返信が必要なメールは2件であった。

PM5:00
キッチンで夕食の準備と食材の下ごしらえを始める。戦中派の筆者は自分で食事を作ることに特別な抵抗感はない。それ以上に独創的なことができるので結構楽しい。
今日はすでに買い置きをしてある素材を使って調理をする。まずは、冷蔵庫に入れて置いたほうれん草2把を大鍋で沸騰した湯につけて2分間茹で上げさっと水洗い。水気を絞りきり切り揃えてタッパに入れ冷蔵庫へ。
夕食には、ほうれん草の根っこの部分の酢味噌和えを作って食べることにする。冬のほうれん草は根っこの部分が甘くてシャキシャキしていて結構おいしい。2把茹でたので明朝の分までできてしまった。
夕食の主材は、冷蔵庫の銀だらの味噌漬けをオーブンで焼いて食べることにする。オーブンの中網をはずし強火の遠火で焼け焦げがきつくならないように注意して調理。
本日のスープは、マギーの固形スープの中に春キャベツと豚のバラ肉を入れて適当に煮込む。これも2、3食分ができてしまう。副菜は友達がくれた煮物と漬物。

PM6:30
夕食開始 最近ではめったに晩酌することはない。話し相手がなければ一杯飲む気になれない。TVを見ながらマイペースで夕食ということになる。だが、やせ我慢ではないが一人で味気ないなどと思ったことはない。食後の果物は欠かせない。そして薬も。
食事の後片付け。一休み。入浴。
入浴中にリビングとキッチンの床掃除をお掃除ロボットにまかせる。我が家のお掃除ロボットは、アメリカiRobot社製のRoomba Discaveryである。机の下などくるくるとこまめに掃除して廻るので結構かわいい。

PM9:00
全てが終了。これからの1時間半〜2時間は、ライフワークにしてきた科学・技術史の調査に時間を費やす。長年暇を見つけては過去の調査を続けてきたので、現在の興味は未来である。今日は読み残してあったレイ・カーツワイル著『ポスト・ヒューマン誕生〜コンピュータが人類の知性を超えるとき』、NHK出版2007.1に目を通すことにした。

今年、元日の午後にNHK・BS特集 (BS1)『未来への提言』が、5名の有識者分担で5時間にわたり放送された。その中でPM5時代の1時間は、アメリカの発明家の殿堂に名を連ねるシンギュラリタリアン(特異点論者)のレイ・カーツワイルによる『テクノロジーの進化を予言する』が放送されたので、まったくの根明(ねあか)のカーツワイルをご存知の方も多いのではないか?と筆者は思っている。

日本語の翻訳物の書名は、どうも筆者にとって今ひとつしっくり来ないものが多すぎる。『ポスト・ヒューマン誕生』もその一つだ。原題の[The Singularity is Near:When Humans Transcend Biology]の方がはるかにピッタリくるではないか。
このことは、書籍の訳者たちによる「あとがきにかえて」にも書いてある。'原題を直訳すると、「特異点は近い:人類が生物を超越するとき」となるだろう。邦訳版においては、この副題「人類が生物を超越するとき」という意味をはじめ、本書のさまざまな議論を含め『ポスト・ヒューマン誕生』という邦題にしたが、実際にはこのあまり耳慣れない「シンギュラリティ(特異点)」[*]という概念こそ、本書の基本テーマである。

[*]筆者注:技術的特異点のことであり、数学や物理における「特異点」の概念からの流用。筆者は、これを文化的特異点と考えている。
・・・・テクノロジーの指数関数的な進化によって人類は今世紀半ばに特異点を迎える、という著者の主張は限りなく刺激的だ。「2030年には人間の脳に匹敵する能力を備えたコンピュータが、1ドルで購入できるようになる」「無数のナノボットを体内に取り入れた人体は、ついに永遠の寿命を手に入れる」といった数々の予言は、一見、あまりにも楽観的な未来予測のようにも思えるだろう。
しかし、その提唱者がレイ・カーツワイル氏だ、ということになれば話は少し違ってくる。未来学者として数々の予言を的中させてきたカーツワイル氏は・・・・・・・'
日本の編集者には、科学・技術史と哲学史をもう少し勉強して欲しい。本を売るためだけに格好をつけたあいまいな書名にして欲しくない。少なくとも科学・技術の分野はそうあるべきだ。

技術的特異点(Technological Singularity) 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
未来研究において、技術的特異点(Technological Singularity)とは、人類の技術開発の歴史から推測して得られる未来のモデルの正確かつ信頼できる限界(「事象の地平面」)を表しており、「強い人工知能」や人間の知能増幅が可能となったときに現われると考えられている。フューチャリストらは、特異点の後では科学技術の進歩を支配するのは人類ではなく強い人工知能やポストヒューマンとなり、従って人類の過去の傾向に基づいた変化の予測モデルは通用しなくなると考えている。

この概念は、最初に数学者ヴァーナー・ヴィンジと発明者でありフューチャリストであるレイ・カーツワイルにより提示された。彼らは科学技術の進展の速度が人類の生物学的限界を超えて意識を解放することで加速されると予言した。この意識の解放は人間の脳を直接コンピュータネットワークに接続することで計算能力を高めることだけで実現するのではない。それ以上にポストヒューマンやAIの形成する文化が現在の人類には理解できないものへと加速して変貌していくのである。カーツワイルはこの加速がムーアの法則に代表される技術革新の指数関数的傾向に従うと考え、これをカーツワイル自身の収穫加速の法則(Law of Accelerating Returns)と呼ぶ。

ある人々は特異点を肯定的に捉えていて、その実現のために働いている。一方、他の人々は特異点を危険で好ましくなく、あり得ないと考えている。特異点を発生させる実際の方法や、特異点の影響、危険な場合の特異点の避け方などが議論されている。 筆者自身は、技術的特異点とは、人類におけるDNAと文化の共進化において文化がものとしてのDNAを離れて(もの離れして)独り歩きを始める点であると考えている。従って、究極のもの離れが起きる点ということになる。
しかし、「我思うゆえに我あり」の西欧流の価値観ではなく、御釈迦様の諸法無我、諸行無常の考え方で、DNAや文化を主人公として論理を組み立てれば全く異なった地平が見えてくる。・・・・・・ あーねむくなった!

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2007/07/12 00:00:00


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