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今後の中国からの印刷物輸入の見通し

7年で4倍以上伸びた中国からの印刷物輸入

2006年の貿易統計によると、印刷物の輸入額は1,120億円、前年比5.4%増と高い伸びになった。輸入の状況を品目別に見ると、事務用品印刷と包装資材分野の伸びが大きい。
日本に限らず、欧米先進国の印刷業にとっての共通の関心のひとつが、中国への国内需要の流出である。日本における中国からの印刷物輸入は2000年以降、一本調子で増加している。1999年を基点とすると中国からの印刷物輸入は7年で4.4倍に達している。東南アジア9カ国からの印刷物輸入に大きな変化はない。中国からの印刷物輸入は全ての分野で増加しているが、何と言っても牽引役は「包装資材」である。2006年の中国からの印刷物輸入額は433億円で、そのうちの46.0%が包装資材印刷物である。次いで多いのが、「事務用品」の18.1%、「その他印刷物」の15.5%である(図)。

包装資材や事務用品の輸入増加は、当然のことながら価格の安さによるものだが、2004年からは「その他印刷物」が急増している。それは、限られた企業だったとしても中国の印刷企業の技術向上によるものであることを示している。
他の東南アジア各国は、上記のような中国の動きによって、日本への印刷物輸出を減らしている。特に、韓国における包装資材・事務用品、シンガポールにおける出版印刷物の減少が大きい。

注目はプリプレスの処理

中国の印刷業界の隆盛は、何と言っても海外需要の取り込みが最大の理由である。しかし、少なくとも日本のその内容と量は、急拡大したとは言ってもまだまだ限定的である。中国からの印刷物輸入額は、日本の全印刷需要額の1%にも満たない。
ひとつの理由は、短納期要求がますます強くなる中で、物流に時間をとられることが海外生産の大きなネックになるからである。

このような中で注目されるのが、プリプレス作業が中国で行なわれる動きである。中国におけるDTP関連人材育成と日本語処理のノウハウ蓄積には目を見張るものがある。中国北東部の大連市はIT企業の誘致に熱心で、その中で、小規模企業も含めれば40社前後が日本語組版に対応できると見られている。日本企業の独資企業もあり、高い品質の組版会社では中国人がローマ字入力でなくタッチ数が少なくて済む日本語入力で文字入力を行なっている。中国はスキルを持ってから就職することが一般的であり、そのために日本語教育やDTP教育などの専門学校も充実しているほか、大連などは日本との関わりが昔から強いので、日本語も決して未知の言葉ではない。

中国で作業すればコストが安いこともあるが、低コストを生かした2人同一同時入力によるベリファイ方式でのチェックで誤植を減らせる点は注目される。誰が見ても理解できる作業指示書さえあれば、DTPに関してはきちっとした仕事をこなすレベルにあり、関税やコンテンツに関する制約、あるいは品質管理を考えると回線を通したやり取りで処理化可能なプリプレス作業の中国での実施はさらに増えそうである。

(2007年8月2日、「印刷白書2007」より)

2007/08/02 00:00:00


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