DTPやデジタルカメラが普及しネットワーク環境も整備されたことで、編集者やデザイナー、ライター、カメラマンと印刷会社がネットワーク上で連携を取りながら編集制作をおこなうことが一般的となった。しかし、データの修正・更新や全体進捗管理など、関係者のコミュニケーションが却って煩雑になることもある。
テキスト&グラフィックス研究会では、株式会社恒陽社グラフィック事業部の永島孝也氏に、リモート環境で効率よくDTP編集制作をおこなうための手法についてお話を伺った。
■グループ編集制作サーバ、Smart Connection
Smart Connection Enterpriseは、InDesignとInCopyを利用するグループ編集制作サーバシステムである。
Smart Connectionのサーバに、InCopyユーザやInDesignユーザがアクセスし、外部の離れた場所で1つのドキュメントの共同制作をおこなう。
従来であれば、1つのドキュメントをコピーしてA氏に渡し、同じものをコピーしてB氏にもC氏にも渡し、「この部分をA氏にやってもらいたい」などと、電話なりFAXなりで指示していた。
Smart Connectionでは、予めサーバ上にInDesignのレイアウトファイルを用意しておく。担当のページと役割を明確にし、どのパーツはA氏が担当するなど決めておく。
A氏の担当分は、InDesignドキュメントからInCopyのファイルを書き出し、A氏に渡される。A氏はInCopyで作業をおこない、出来上がったInCopyファイルをサーバに書き込む。
各担当者が作成したInCopyファイルを集めるだけで、InDesignドキュメントが完成する。このように、InDesignとInCopyを連携し複数人で同一のドキュメントを制作することが、Smart Connectionの役割の1つである。
もう1つの役割として、Webブラウザを使ったタイムリーな進捗管理をおこなうことができる。関係者が同じフロアでお互いに声をかけながら制作を進めていくのであれば、事故や問題も少ない。しかし、デザイナー、ライター、制作会社、印刷会社が社外や遠隔地にいると、コミュニケーションが難しく、連絡ミスや事故も起こりやすい。サーバで一元管理することが、Smart Connectionの役割である。
雑誌・書籍などの出版業務を想定すると、先割デザイン方式が多い。デザイナーがInDesign上で見開き2ページのラフレイアウトを作成し、サーバに保存する。次に、編集担当者が見開き2ページの内容を確認し、OKであれば、リード文、本文、写真のキャプションの記事を2人のライターに割り振る。
ライターAに本文、ライターBにリード文と写真のキャプションを依頼する際に、InDesignファイルからサーバを介して、各ライターのInCopyファイルを書き出す。各々のライターのファイルは、同じレイアウトになっているが、書き込めるポイント(テキストボックス)は違っている。割り振られた部分以外は変更することができない。
この2人は、同一ドキュメントの別の部分の作業を同時に進めることができる。各々の作業が完了すると、InCopyファイルとしてサーバを介して編集担当者に送り返す。InCopyファイルはInDesignとリンクされており、サーバにチェックインするだけで、最初にデザイナーが保存したInDesignドキュメントが、完成した状態になる。
校正確認作業も同様にSmart Connectionのサーバを介した作業としておこなうことができる。
■Webブラウザでの進捗管理
Smart Connection では、Webブラウザでページのサムネールを確認することができる。InDesignで作ったドキュメントのサムネールが、ページネーションされて一覧で見ることができる。ドキュメントの各ページの下に、色の着いたバーが表示される。この色はユーザが決めることができる。例えば青いバーは初校、赤のバーは校正中、黄緑は校了と決めておくと、ステータス(進捗)が一目でわかる。サムネール一覧から、1つのページをクリックすると、プレビュー確認することができる。プレビューによって、レイアウトされた画像が実画像であるかどうか、CMYK変換されているかどうかなどのステータスを確認することができる。テキストであれば、草稿段階であるか、校正か、決定稿かなどのステータスがすぐ判るようになっている。
2007/08/20 00:00:00