今、これからの経営に迷っている印刷企業の経営者は多い。どう考えても今までのようにはいかないと感じるが、それではどうしたらいいのかが見えないし、気持ちのどこかでは、やはり今までどおりでいける道はないか、という思いが錯綜しているからだろう。迷いの大きな要因のひとつは、状況の客観認識が不足していることだろう。もし、一週間後に、マグニチュード7.0の大地震が来ると100%予測されたら、それぞれの限界はともかくとして、誰でもが出来る限りの備えをするはずである。これからの印刷ビジネスの将来は、自らの方向を「決断」するために必要な客観的情報は既にある。
具体的には、以下のようなことになる。
■印刷需要の将来
印刷産業の出荷額は2006年もマイナスで、9年連続のマイナス成長になった可能性が高い。それは印刷需要や印刷の仕事が減ったからではなく、プリプレスの付加価値が低下したためである。マクロ的には製版・印刷資材の出荷販売量、ミクロ的には中小総合印刷会社の部門別売上高の推移を見れば明らかである。しかし、そ印刷需要の低下はまさにこれから起ころうとしている。その理由としては、印刷用紙や印刷インキの趨勢が、2000年以降明らかに成長から横ばいに入っていること、デジタル化、インターネットによる影響が大きいこと、さらに人口減少が始まったことである。
■印刷業界の競争環境
印刷需要の如何に関わらず、印刷物の生産技術の進歩は続く。特に、設備のコントロールがデジタルデータで行なわれるようになって、各設備の生産性は飛躍的に向上した。従って、その能力をフルに使おうとすれば、それだけ多くの仕事を受注しなければならず、価格競争になるのは当然であろう。自社の競争力強化が、結局は、自らに火の粉として降りかかってくるという状況はこれからも続くだろう。
■クロスメディアの方向
インターネットが本格的に普及し始め、さらに進化した携帯電話が登場・普及することで、メディアの世界に大きな変化が見られ始めた。「インターネットを含めたメディアミックスは、広告媒体計画のスタンダードとして確立されたといえる」(株式会社電通「日本の広告費 2005年(平成17年)」)のである。
各社の今後の方向がどうあれ、情報に関わるビジネスを行なう以上、間接的にでもこの影響を免れることは出来ないし、大多数の印刷企業にとって直接的な関わりを持つことも間違いない。
■企画提案力が勝負
顧客も、印刷物を作るにしても、それだけを考えるのではなく、使う目的自体を大きく捉えるなかで、印刷物の位置、内容、作り方を決めるようになってきた。このことは、印刷物のみを作る場合においても、クロスメディア展開をする場合においても同様である。
「このような状況の中で求められることは企画提案力である」とはほとんどの業界人が考えていることであろう。課題はその実現である。基本的には企業の体質や経営者の姿勢が、その実現を大きく左右する。このテーマでは、認識というより、変革の実行力が問われる。
■これからの方向
従来の印刷物市場で、印刷物生産自体を自社の中核機能として捉えるのならば、納期、価格において徹底的な競争力を持つことである。ただし、それには体力勝負を覚悟しなければならない。生産能力自体の強化を必要条件としつつ、企画提案力を持つことが不可欠である。
顧客のクロスメディア展開への提案を含めなければならないことも多いはずである。
これからの方向性として二つのことが必要になる。一つは、何か強みを持つことである。幸いなことに、デジタルデータの処理能力を手にした印刷業がカバーできる範囲は広がってきている。もう一つは、他社との連携関係を作ることである。十分条件は「顧客からの期待感の継続」である。これぞ究極のソフトというべきである。
印刷市場、印刷業界は、10年ほど前から新たな方向に向かって確実に動き始めている。そして、その方向はかなりはっきり見えているし、もう、迷っている猶予期間もない。決断してそれを実行するのみである。
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経営情報配信サービス『Techno Focus(テクノフォーカス)』No.#1508-2007/8/27号より要約。
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(2007年8月)
2007/08/28 00:00:00