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IGAS2007注目製品(デジタル印刷 一覧表付き)

IGAS(国際印刷機材展)は、drupa(ドイツ)、Print(米国)、IPEX(英国)とともに世界持ち回りの4大国際展示会のひとつとなってから2回目の開催であり次回は4年後となる。IGAS2007は印刷機材団体協議会の主催により「プリントメディアの未来―信頼と進化―」をテーマに、2007年9月21日から7日間、東京ビッグサイト東西の全10ホールで開催され、来場者数は130,164人(海外から12,500人)に達したという。出展者数も前回比115増の550社に及んだ。今回の入場券にはバーコードが付けられており通日重複なし(1人が何日来場しても1人として計数)で集計されている。

T.IGAS2007のキーワードは
次の3つになるだろう。
◎オートメーション
 --> 人がなるべく触れずに生産性Upし利益を上げるために
【MIS/JDF連携、Web入稿などのソフトインフラやデジタル印刷機だけでなく、ケミカ ルレス系CTP、単独駆動オフ枚葉機などのハードも含め、随所で「人が触れる機会の 削減・工程短縮・自動化」の技術開発が見られた。】

○デジタル印刷機
 --> 業態の壁を突き崩し生産品目を拡大して売上を増すために
【デジタル印刷機の機能が拡大・分化してきて、自社が持つ通常の印刷方式と異なる 業態の印刷方式がデジタル印刷機では容易に設備でき、ワンストップ・サービスの品目 が拡大できる可能性が拡大した。】

□ニアライン・インライン加工機 (+デジタル印刷機)
 --> ワンストップ・プロダクションで受注の水漏れを無くすために
【オフセット枚葉印刷機へのインライン加工機(コールドフォイラーやニスコーター、IRやUV乾燥ユニット)の付加が普及してきた。また展示方法として、異業態の来場者に対しても「デジタル印刷+加工=製品」という 生産ラインの展示でアプリケーションが容易に理解できたと思う。】

U.デジタル印刷機のインパクト
本稿ではプリントメディアの未来のひとつの形としてデジタル印刷を取り上げよう。既に成熟化しているCTPワークフローの全てが、ハイブリッドワークフローやユニファイドワークフローという言い方で、デジタル印刷機にもスムーズに出力できることをアピールしていた。

デジタル印刷機の機能がますます拡大しており、印刷会社にとっては自社が設備している通常の印刷方式とは異なる業態の取り込みが容易になってきた。 ワンストップ・サービスの品目を拡大できる潜在力をどう引き出すかが課題である。

1.機種のバリエーション拡大と新需要の創出
デジタル印刷機は無版方式ならではの可変データ出力が大きな特徴である。印刷産業向けのデジタル印刷機が登場して15年前後経過しているが、当初の機種は商業印刷物や出版印刷物の主要生産方式であるオフセット印刷機の機能を代替したようなデジタル印刷機であった。 最近の新機種は機能が分化・専門化しており、ビジネスフォーム印刷機の機能、スクリーン印刷機の機能、グラビア印刷機の機能、シール・ラベル印刷機の機能、といったようにさまざまな印刷方式に対応した機種のバリエーションが広がっている。以下に特徴を整理してみよう。

(1)無版方式→刷版工程の消失
デジタル印刷は無版方式の印刷とも言われる。スペース効率や資源エネルギーの観点からは、従来の印刷機械では必須であった「製版工程」が不要となったメリットは大きい。 オフセット印刷におけるPS版やCTP版、スクリーン印刷におけるスクリーン版、グラビア印刷におけるグラビアシリンダー等々が、デジタル印刷機では全く不要になり、刷版を製造するための設備や人、資源やエネルギーも不要になる。
また、従来の印刷方式では必要悪でもある、多量の試し刷り用紙(見当や色が安定するまでに消費される)も、デジタル印刷機ではほとんど不要であることを忘れてはならない。
従来方式とのコスト比較は、単に通し単価を比べるだけでなく、2つの工程の違いを踏まえたうえで総合的に検討されなければならない。

(2)可変データ出力→One to one対応
可変データ出力とは一枚ごとに違う内容を出力することであり、通常の刷版を必要とする印刷方式には真似のできない「+α機能」である。
毎月、家庭やオフィスに送られてくるコンピュータ出力の請求明細書などはモノクロ・トランザクションと言われる分野で、フォーム印刷機でプレプリントされた連続帳票に、1〜2色の高速ページプリンタで可変の文字データが出力されている。
そしてIGAS2007では、文字とカラー写真などのイメージ広告を、プレプリント無しの白紙に一気に出力してしまう、カラー・トランザクション対応の連続紙ページプリンタが注目されていた。
この機種では、個人ごとに内容の違うダイレクトメールで宣伝効果を高めたり、郵便や宅配で始まった宛名無し配布では地区ごとに異なる目印を入れて広告配布の効果測定を行うことも可能である。One to oneマーケティングに対応できるデジタル印刷の分野ということであるが、印刷会社にとってはコンプライアンス対応やGISを加えた提案型営業への体制作りが必要になってくる。

(3)大サイズ出力→高解像度化で屋外から屋内へ
海外では10年ほど前から工業用の大判プリンタによって大型の屋外広告を制作するようになっていた。印刷幅が3.2m以上の機種はスーパーワイドとも呼ばれているが、大型広告は遠距離で見る用途なので、出力解像度も50dpi程度と低いものでよかった。そしてバスや電車さらにはビルへのラッピング広告も登場して、大判市場が拡大してきた。しかし屋外広告にはさまざまな法令規制があり、掲出できる総面積の限界は見えている。
大判出力の次なる市場は屋内用途であり、店舗内の装飾や販促印刷物への大判出力物の用途開発がテーマである。遊戯施設への利用や店舗内での定期的な装飾や販促物の更新など、新たな利用が始まっている。
屋内では至近距離から見ることになるので、高解像度でないと網点の荒れが目立ってしまう。また、さまざまな素材に印刷するために、印刷面の柔軟性も要求されてくる。このような用途に合わせて、大判プリンタでも800dpi以上の高解像出力を行うための技術開発と製品開発が進んできた。

(4)厚地素材への直接印刷→後工程の削減
大サイズ出力機の中で、スチレンパネルやアクリルボード、さらにはドアや床タイルなどの厚地素材に直接、印刷できる機種も注目されている。
このような機種では、パネル貼りなどの後工程を削減しての短納期対応、産業用途でのサンプル作成、一品生産のテキスタイルやボード、オリジナルのメーターパネルの生産などが始まっている。

2.ワンストップ・サービスの生産拠点に
現在は、発注元の顧客からせっかく発注頂いたのに、生産設備の方式が違うが故に注文を断らざるを得ないということも日常的に起こっている。
しかしデジタル印刷機であれば、方式の違ういくつかの機種を保有することで、ワンストップ・サービスで顧客の注文に応えられる生産拠点ができ、新たなビジネス展開が可能となる。
技術的には同じ絵柄を違う機種で出力するマルチプリントにおけるカラーマネージメント、One to one出力でのデータ管理や検査システムなど、解決しなければならない大きな課題もある。

3.さらなる需要の拡大へ
発注側である顧客から見ると、従来であれば製版コストが割高になるために発注を断念していた小部数の印刷製作も、製版工程そのものが不要なデジタル印刷機であれば発注が可能となる。
技術的には小ロットを効率よく受注・生産するための、デジタルネットワークの利用、Web to printを実ビジネスで効果的に展開することが課題になろう。 また、可変ページ出力機能によって、小発行部数のフルカラーのコミュニティー新聞や地方新聞を高速カラー・トランザクション対応機で印刷してしまうという、新たな用途も提案されている。
このようにデジタル印刷技術は潜在的な印刷需要の裾野を広げることが大いに期待されている。

4.デジタル印刷は業態の融合化を加速
デジタル印刷が持つこれらの新たな機能によって、例えばオフセット印刷機とスクリーン印刷機とビジネスフォーム印刷機、シール・ラベル印刷機、さらには高速トランザクション出力機までが一ヶ所に並んでいる、従来方式ではありえないような印刷工場を持つ業態が可能となる。
つまりデジタル印刷は、印刷方式別であった印刷業界の融合化を加速するような潜在力を持っているということができる。

5.新たなビジネスモデルの必要性
デジタル印刷機による新たなビジネス展開や需要の創出を実現するため印刷会社においては、デジタル印刷にマッチしたビジネスモデルの習得が必要になる。
2008年5月にドイツで開催される世界最大の印刷機材展drupa2008では、さらに新しいデジタル印刷機の登場が期待されている。その前哨戦として国内で9月に開催されたIGAS2007においても、デジタル印刷機にトレンドを読み取ることができた。印刷会社など利用者側にとっては新ビジネスの模索が始める絶好のチャンスである。

このような観点でIGAS2007に出展されたデジタル印刷機を振り返っては如何だろうか?

デジタル印刷機の主な出展社名
(IGAS2007)
ジャンル【代替される
主な従来印刷方式】
主な出展機種(*印刷速度が記載されている場合はA4判片面相当)
【デジタル印刷機とは最終製品(いわゆる印刷物)を出力する機種を指す】
コダック(株)DPS事業部 白黒枚葉(四裁)
【オフセット代替+α機能】
Digimaster EX150(150頁/分、静電転写、600dpi、最大6ビット-64階調)
コニカミノルタビジネスソリューションズ(株) bizhub PRO 1050e(105頁/分、静電転写、600dpi、256階調相当)
富士フイルムグラフィックシステムズ(株) DocuCentre f1100 GA(110頁/分静電転写、600dpi、2値-擬似的に256階調) 
キヤノンマーケティングジャパン(株) カラー枚葉(四裁)
【オフセット代替+α機能】
imagePRESS C7000VP(カラー70頁/分、静電転写、1200dpi×1200dpi、256階調)
コダック(株)DPS事業部 NexPress 2500(カラー83頁/分、静電転写、5色、600dpi、最大8ビット-256階調)
コニカミノルタグラフィックイメージング(株) Pagemaster Pro 6500(カラー、65頁/分、静電転写、600dpi-1800dpi相当、256階調)
コニカミノルタビジネスソリューションズ(株) bizhub PRO C6500(カラー65頁、モノクロ105頁/分、静電転写、600dpi-1800dpi相当、256階調)
日本ヒューレット・パッカード(株) HP Indigo press 5500(湿式トナー静電転写、最大7色、68頁/分、1200dpi)
日本ヒューレット・パッカード(株) HP Indigo press 3500(湿式トナー静電転写、最大7色、68頁/分、最大812×1624dpi、175 線(標準)、230 線(高解像度))
富士フイルムグラフィックシステムズ(株) Xerox iGen3 110 Digital Production Press  (カラー 110頁/分、静電転写、600dpi、256階調)
富士フイルムグラフィックシステムズ(株) DocuColor 8000AP Digital Press(カラー 80頁/分、静電転写、2400dpi、256階調)
富士フイルムグラフィックシステムズ(株) DocuColor 5000 Digital Press  (カラー 50頁/分、静電転写、2400dpi)
理想科学工業(株) ORPHIS HC5500A(カラーインクジェット)
サカタインクス(株)/パンチグラフィックス(株) カラー輪転(四裁〜長尺)
【オフセット代替+α機能】
Xeikon 6000(ロール幅508mm-B4対応両面機、12m/分、両面160ページ/分、600dpi、静電転写、5色)
リンテック (株) カラー・ロールtoロール
【特殊グラビア代替+α機能】
HP Indigo press ws4500(ラベルとパッケージ印刷用)、バイオマスプラスチックフィルム「ビオラ(BIOLA)」など
エプソン販売(株) 大サイズ・長尺
【スクリーン印刷代替+α機能】
PX-20000(最大幅64インチ-3.3m、水性顔料インクジェット8色、2880dpi×1440dpi)
エプソン販売(株) PX-9550(B0ノビ、最大用紙幅1118mm、水性顔料インクジェット8色、2880dpi×1440dpi)
エプソン販売(株) PX-7550(A1、最大用紙幅610mm、水性顔料インクジェット8色、2880dpi×1440dpi)
キヤノンマーケティングジャパン(株) imagePROGRAF iPF8100(B0ノビ、サーマルインクジェット12色、44インチ-1118mm、1200×2400dpi、80GBHDD搭載)
キヤノンマーケティングジャパン(株) imagePROGRAF iPF9100(A倍、サーマルインクジェット12色、60インチ-1524mm、1200×2400dpi、80GBHDD搭載)
大日本スクリーン製造(株) Truepress Jet2500UV(UVインクジェット最大6色、最大出力幅2500mm、最大素材厚50mm、1200×1200ipi、多階調)
日本製図器工業(株) durst Rhopac(UVインクジェットCMYK、op:白・スポットカラー・ニス、最大150u/h、400/600dpi、最大幅2050mm、最大厚40mm)
日本ヒューレット・パッカード(株) Scitex TJ8500(6色UVインクジェット、600dpi相当、メディア最大165×370cm)
日本ヒューレット・パッカード(株) Z6100シリーズ (A1、サーマルインクジェット8色、最高2,400×1,200dpi、42インチ幅モデル、60インチ幅モデル)
ヌールジャパン(株) NUR Expedio3200(UVインクジェット8色-C,M,Y,K,LC,LM,LY,LK-、720dpi、最大素材幅3200mm)
富士フイルムグラフィックシステムズ(株) LuxelJET UV250GT(Oceワイドフォーマット、UVインクジェット
(株)ミマキエンジニアリング IPF-1610(UVインクジェット8色、600dpi、最大印字1602×1016mm、最大素材厚み250mm)
(株)ミマキエンジニアリング JV33-130(6色 ソルベント・水性・昇華インクジェット、1440dpi、最大幅1361mm)
(株)ルキオ Lukio Jet 2516 UVF(UVインクジェット6色−CMYK,白、クリア−、600×600dpi)
インフォプリント・ソリューションズ・ジャパン(株) 連続紙ページプリンタ
【BF印刷代替+α機能+プリンタ】
InfoPrint 5000(エンジンなどはTruepress Jet520と同等仕様、ScreenからのOEM機)
コダックIPS (株) Versamark VT3000 (A4、11インチ、300×600dpi、最大152m/分、4色機で出展)
昭和情報機器(株) Screen Truepress Jet520(2台のプリントエンジンでA3幅の両面印刷が可能なDual Engine Duplex仕様で展示)
昭和情報機器(株) SR3000Nフルカラープリンタ・システム
昭和情報機器(株) SX8900高速漢字プリンタ・ツインシステム
大日本スクリーン製造(株) Truepress Jet520(水性顔料インクジェット4色、720×360dpi 2ビット、64メートル/分、最大幅507mm)
(株)ミヤコシ MJP600フルカラー、ピエゾ水性インクジェット、150m/分)
(株)ミヤコシ MJP600白黒、ピエゾ水性インクジェット、150m/分)
(株)イリス シール・ラベル
【シール・ラベル印刷代替+α機能】
JetLinc ATRANTIC ZEISER社 (モノクロ ラベルプリンタ)
(株)テイク EFI ジェトリオンJetrion(モノクロ ラベルプリンタ)
エプソン販売(株) / (株)恩田製作所 インクジェットラベル印刷機 (参考出品)
コニカミノルタIJ(株) 『SP−L2130』(インクジェット方式ワンパスプリントユニット:最大印字幅214mm、360dpi、カチオンUVインク、30m/分)
コダックIPS (株) 宛名刷り+封緘ハイブリッド機 Versamark DS6240プリントヘッドをDatacard Ga-Vehren Attacher GV500  (日本シイベルヘグナー)に搭載のハイブリッドモデル)
(株)じむけん ナンバリング+α機能 インクジェットモノクロ DC-9740-HP(フォーム印刷物へナンバリング、バーコードなどの追い刷り)
エプソン販売(株) デジタル校正
(他ジャンルと重複する)
PX-9550(B0ノビ、最大用紙幅1118mm、水性顔料ピエゾインクジェット8色、2880dpi×1440dpi)
エプソン販売(株) PX-7550(A1、最大用紙幅610mm、水性顔料ピエゾインクジェット8色、2880dpi×1440dpi)
キヤノンマーケティングジャパン(株) imagePRESS C1(A3、カラー14頁/分、静電転写、1200dpi×1200dpi、256階調)
キヤノンマーケティングジャパン(株) imagePROGRAF iPF8000S(B0ノビ、サーマルインクジェット8色、44インチ-1118mm、1200×2400dpi、80GBHDD搭載)
キヤノンマーケティングジャパン(株) imagePROGRAF iPF9000S(B倍、水性顔料サーマルインクジェット8色、60インチ-1524mm、1200×2400dpi、80GBHDD搭載)
(株)セイコーアイ・インフォテック LP-1010シリーズ(A0、モノクロ検版用LEDプリンタ、A1 6.2枚/分、A0 3.4枚/分)
(株)セイコーアイ・インフォテック IP3020(A0、カラープルーフ用、インクジェット、K(顔料)、Y,M,C(染料)、最大用紙幅:1080mm、最大2880dpi)
日本ヒューレット・パッカード(株) Z6100シリーズ (A1、サーマルインクジェット8色、最高2,400×1,200dpi、42インチ幅モデル、60インチ幅モデル)
日本製図器工業(株) durst Rhopac(UVインクジェットCMYK、op:白・スポットカラー・ニス、400/600dpi、最大幅2050mm、最大厚40mm、グラビア校正用途も)
富士フイルムグラフィックシステムズ(株) Docu Color 5065P/1256GA(カラー複合機) 

2007/10/07 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会