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より優れた色再現を求めて

新刊「眼・色・光」 はじめに より

21世紀の色再現

人が目から得る情報は膨大で、とりわけ人の文化的・知的活動の中で目に依存している要素は多い。そのために情報を視覚化するグラフィックス関連技術は文明の発展とともに進んできた。20世紀にはカラーフィルム、テレビ・ビデオ、ディスプレイ、プリンタなどが 開発され、視覚世界も産業化した。

それにともなって色再現の技術は、写真、映画、印刷、ビデオ、CG、などなど個別に開発されて非常な進化を遂げたが、20世紀末にはすべてのグラフィック技術がデジタルデータを扱うものに収斂していった。長い人類の歴史から判断すれば個別のアナログ技術開発は、あたかもデジタル時代の「前座」のようなものだといえるかもしれない。

印刷やプリントでは色を減色混合のCMY3原色で表すことが多いが、ディスプレイでは加色混合のRGB3原色で扱う。今は印刷の製作過程でもディスプレイを使うのでCMYとRGBを関連づけるとか、異なるデバイス間での画質管理のためにカラーマネジメントが行われる。

しかし色空間内のマッピングを変換するだけでは新たな価値を生むものではない。デジタルの地平線の先にはまだよく見えない未踏のグラフィックスの分野があり、視覚情報の記録、再現、編集に関してこれから期待されている技術が多く控えている。

20世紀のデジタルグラフィック技術は、例えばカメラで撮ったままのデータをなるべく情報量が多い状態で保存するような、既存のカメラのフィルムをデジタルデータに置き換えたようなハイブリッド技術が多かったが、CCDやCMOSといった光センサ自体もまだ発達するだろうし、情報記録もフィルムのように固定的のもの縛られることは今後はなくなる。

つまりグラフィックスの世界はそろそろフィルムや既存の光学カメラベースの考えから脱却するときが近づいていて、例えば人の眼そのものにも備わっている機能も開発の対象になっていくであろう。人間が使う道具というものは、人間に備わった機能を延長するものだという前提に立てば、デジタルでフィルムの代替を考えるよりは、眼の能力を拡大する方向で、光学も画像工学も進むのではないだろうか。

その2に続く

JAGAT 新刊 「眼・色・光」 12月初旬刊行予定
A5版 約200ページ オールカラー 売価 2000円

<著者・本書編集委員>
畑田豊彦、矢口博久、福原政昭、小笠原治、郡司秀明 <著者>
齋藤美穂、矢野正、五十嵐幹雄、羽石秀昭、馬場護郎、竹村裕夫、杉浦博明、谷添秀樹、津村徳道 (執筆項目順)

(2007年11月)

■関連セミナー「デバイス環境を超えた色再現」

2007/11/04 00:00:00


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