新刊「眼・色・光」 はじめに より その2 ( その1)
図は人が何か対象物を見る様子である。グラフィック技術によるもの、つまり現物ではなく紙やディスプレにイメージングしたもの見る場合が中央のAB「表示」の部分である。メディアというのは現物の代わりに見るものを作っている。これは写真であっても印刷でもビデオでもいろんなメディアがある。
アナログの時代に現物の代理表現を作るには、まずカメラで撮ってフィルムを作り、フィルムをまたスキャンして印刷用の版を作るように、ABの間に2回行き来があり、なかなか思っているような表現にならなかった。フィルムでとり損ねた色はその後の工程ではでてこないからである。
ところでこのAB間が、静止画ではデジタルカメラで撮影してデジタル画像にしてイメージングをするようにデジタルデータで一貫して処理すると表現の向上にいろんな可能性がもたらされる。複数画像をキレイに合成するとか、シュミレーションして色を変えることは格段にやりやすくなる時代に来ている。静止画の加工ソフトにもCG的な機能が加わっているように、この領域はこれからいろんなソフトウエアやデバイスが出てくる可能性がある。
これからの開発の活性化のためには色に関する体系をもう一度整理する必要があるだろう。古典的な色の体系は、いわゆる学校の美術室にある色立体のような直感的なものがあり、19世紀前半には3原色説が出て、色立体を式にしたようなCIE色空間につながって、それが今日のカラーマネジメントに使われている。
3原色説が出てきた環境の照明とか光源は殆どが黒体放射のスペクトルの連続したものしかなかった。20世紀に入って放電灯が多く使われだし、今とりわけエネルギー問題で世界的に白熱電球は追いやられ、光源が輝線スペクトル的なものが主体になろうとしている。これによるメタメリズムの問題は3原色のカラーマネジメントで解決するのは難しいので、原色の決め方や原色数を増やすことも取り組まれるようになった。
また今日ではCGでリアルな表現がされるようになってきた。CGというのは物に光が当たってそれがその先、図左側の領域でどう反射・吸収していくのかというシミュレーションで、その再現のアルゴリズムが積み重ねられてきた結果がリアルな表現であり、これは今後もさらに進んでいくものである。
一方図の右側は、人間がどのように色を感じたり認識できるかという世界で、昔ながらの印刷の世界で言えば「プリーズカラー」とか、色の心理的な要素や嗜好に関する事柄を含む。画像を人がよく理解できる、それらしいものにするには、例えばどのような強調をするとか、あらかじめ変えておくなど、今までは職人的要素で対応していたことも、デジタルになってアルゴリズム化して自動コントロールできるようになってくる。
つまり物理的な光の織り成す世界と、人間がそれをどう受け取るのかに至るまで、グラフィックスの世界は直接関係するのが21世紀であり、その21世紀の色再現に必要な要素を洗い出して、新たな色の知識体系を作り出すことが求められているだろう。
JAGAT 新刊 「眼・色・光」 12月初旬刊行予定
A5版 約200ページ オールカラー 売価 2000円
(2007年11月)
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