『プリンターズサークル』では2001年8月号の特集「オンデマンド印刷市場を開拓するカギ」で、有限会社オンデマンド印刷を取り上げた。それから6年、オンデマンド印刷専業の印刷会社として実績を積み重ねている同社を再び訪ねた。デジタル印刷ビジネスを成功させるポイントはどこにあるのだろうか?、オンデマンド印刷グループの生島裕久氏にお話をうかがった。
現在、同社の手掛ける印刷物は、モノクロが主体のマニュアル類やチラシ、カタログなどである。創業当初から見ると、製作物にもいろいろと変化があって、この数年はカラー化が進んでいる。これまで、デジタル印刷機では考えなかったようなものがカラーの印刷物になってきている。例えば、カタログ、取扱説明書、チラシなどである。その理由としては、顧客側がコストとオンデマンド対応というデジタル印刷のアドバンテージを評価してくれて、だんだんとそのような商品が増えてきた。
「カラーのカタログなどが増えているのは、基本的にはニーズに対応できるスピードが評価されていると思います。オフセット印刷と比較すると、大量に必要な場合にはオフセットに優位性があるでしょうが、デジタル印刷なら、例えば、500〜1000部のものをその日の朝にデータ入稿して、夕方には納品できます。このようなサービスが提供できれば、顧客側で使い方の視点が変わります。オフセット印刷ではできなくても、デジタル印刷機ならできるのだという認識を持ってもらえるようになる。そういう点が、次第に理解されつつあるようです。従って、顧客側で、そのような発注をルーチンにしてくれれば、当社としてはそれに対応できる仕組みを作ればビジネスの強みになるのです」(生島専務)
カラー化の傾向は売り上げ面からも明らかで、月度によってはカラーがモノクロの売り上げに迫る時も出てきた。
では、このような受注を獲得する営業体制に、何か特別な仕掛けがあるのだろうか? 現在、生島専務を含めて7名で営業活動を行っているが、実は受注活動を支えるのは、地道な営業活動であると語る。綿密にマーケティングを行って、それに基づいて営業活動を行うには規模的にも難しい部分がある。もちろんさまざま提案を行っていくが、基本的には顧客のニーズに真摯(しんし)にこたえていくことが大事で、その積み重ねが、評判を呼び、紹介や口コミなどで次の仕事につながる。この顧客のニーズにこたえるとは、言葉にすれば簡単であるが、それぞれの顧客によって求めるものが少しずつ違うこともある。そこは顧客が何を望んでいるのかをきちんと把握して、それにこたえていくことが重要だと語る。
デジタル印刷市場でビジネスを成功させるポイントはどこにあるのだろうか。一つには、デジタル印刷の強みを発揮できるものをターゲットにして、そのターゲットがぶれないことにあるようだ。
同社の場合には、デジタル印刷機専業であるから、営業担当者はデジタル印刷機向きの仕事を取ってくること考えている。つまり、オフセット印刷機を使用するような大量部数の受注を初めから想定していないのである。この姿勢が重要で、デジタル印刷向きの仕事に専心することを、経営者も、営業担当者も、工務部門も、オペレーターも、社内全体が共有して、それを実現できるような体制で動いている。それでも、部数とコスト面からパートナーの印刷会社に依頼する仕事もあるというが、基本姿勢としては社内で処理する。この姿勢を持つことがデジタル印刷の仕事を受注する上での同社の大きなポイントになっている。従って、部数の多いものも、外注せずに社内で処理できる方法を考える。それは目先の仕事の処理だけではなくて、原価や売価を考慮しての仕組みである。
「これは私の考えですが、従来のオフセット印刷を行いながら、デジタル印刷を推奨するのは非常に難しい。なぜなら、営業は売り上げ目標をもっているので、それを達成するためには小ロットの細かい仕事は避けたいでしょう。また、仕事によってはオフセット印刷機を使うか、デジタル印刷機にするのか悩むこともあるでしょう。そうすると、どうしてもデジタル印刷機に向く仕事を集めることに専心できないのが現実でしょう。その点、当社はオンデマンド専業ですから、その部分でぶれないのです」(生島専務)
(『プリンターズサークル』12月号 特集「ここまで来た!!デジタルプリント--新しい市場には新しい発想で」より一部抜粋)
2007/12/09 00:00:00