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法が先か、技術が先か?

デジタルコンテンツ流通と「ダウンロード違法化」議論

2007年末は著作権関連ニュースが相次ぎ、ホットな話題となった。
特に注目を集めたのが「ダウンロード違法化」である。「ダウンロード違法化」とは、著作者に無許諾でネット上にアップロードされた動画や音楽をダウンロードする行為が条件付で違法になるというものである。

現在、文化庁文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会で著作権法30条(はてなダイアリーより)を改正する方向で議論されている。

現行では、著作者に無許諾で著作物をアップロードする行為は、公衆送信権および送信可能化権の侵害として取り締まることはできるが、違法サイトからダウンロードする行為については特に規制がなく、無許諾のコンテンツが多く流通しているという現状である。

このような状況に異を唱えたのが、日本レコード協会(JASRAC)である。私的録音録画小委員会の委員であった日本レコード協会の生野委員が提出した資料が発端とされている。

その後、ほかの権利者団体の支持を得ながら著作権法30条が改正される方向で議論される。その中でただひとり異論を唱えていたのが、ジャーナリストの津田大介氏である。津田氏は、ダウンロード違法化はWeb2.0的なインターネットの潮流からかけ離れていると指摘する。さらに適用範囲を録音録画に限ったダウンロード違法化は、他のコンテンツの著作者団体が適用範囲を広げるように要請していく可能性があるという。つまり、テキストや静止画にも適用されることになるかもしれないのである。
ダウンロード違法化が経済発展を阻害する、と指摘する専門家もいる。この違法化の萎縮効果による損害は、著作権侵害による損害よりもはるかに大きい。

技術的な解決方法はあるのか?

デジタルコンテンツ流通に関して、著作権の問題が付いてまわる背景には、著作権者が安心して情報流通を行える技術的な環境と社会的な環境の整備が行われていないことがある。
あるレベルの機能を提供するDRM(Digital Rights Management)システムはあるものの、ユーザーのニーズに合致しているものではなかったり、不正流通防止技術としては追いついていなかったりということで、DRMは十分に活用されていない。このような現状を打破するため、技術的な面と法的な面の両側面から解決策を見出そうとする動きが起こっている。

そのひとつが、「許諾コード」方式というしくみである。「許諾コード」の技術開発を行ったメロディーズ&メモリーズグローバル(以下MMG)が、コンテンツ制作者と消費者の間のあるべき姿を体系化させるために発案した。

コンテンツの権利者から使用許諾を得たり、権利者に対価を分配したりといった許諾管理業務は、コンテンツ流通ビジネスを推進する事業者にとって必要不可欠な業務である。しかし、ルールや業務フローが確立していないため、権利処理がスムーズにできない。そこでMMGはこの課題を解決するために、許諾管理業務の標準的な手続きを体系化させることが重要と捉えた。
そして「コンテンツID」、「権利ID」、「利用者ID」、「許諾条件」の4つの要素からなる許諾コードを開発した。この許諾コードがDRM技術と密接に連携することによりコンテンツの制作者、権利者、所有者の意思が消費者まで伝えられ、上流から下流までの効率的なコンテンツ運用が実現できるようになる。

現在、許諾コードは権利団体や標準規格団体において、共通の許諾契約とされつつある。多くのDRMにおいて利用されることにより、より柔軟な不正流通防止技術の運用を採算のとれる形で行えることが期待されている。

ビジネスの成功の鍵

デジタルコンテンツビジネス成功の鍵を握るコンテンツ流通は、制作者の意志を尊重した合法的で安全な利用ができるためにも、技術とインフラの開発と整備が求められている。

JAGATでは、情報配信ビジネスを推し進める上でついてまわる著作権をテーマにしたセミナーを開催します。情報通信政策フォーラムを推進する山田氏、ダウンロード違法化議論の委員を務めている津田氏、許諾コード方式を開発する中西氏・木下氏、権利処理の実務に携わる大野氏を講師に迎え、著作権関連の最新動向を紹介します。

(2008年1月)

2008/01/15 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会