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デジタルメディアの真価とは?

日本の広告代理店は何の代理をしているのだろうか? 欧米の場合にクライアントの代理業務という立場を貫こうとすると1業種1社にならざるを得ない。メディアの紙面枠広告枠の販売代理というのはメディアブローカーともいわれ、欧米の場合はメディアがそれぞれ独立の主張をすることが多いので、それに合わないものが持ちもまれることに警戒があって、あまり多くの紙面を代理店が引き受けることはできない。日本では両者の複合モデルになっている。またマーケティング機能をもって広告宣伝のワンストップサービスをすることで、クライアントの広告予算を配分する立場にまで至っている。

日本のメディア、特にマスメディアは多部数の発行を誇りとしているために、メディアの側が主張を鮮明にすることはない。もしアメリカのメディアのように共和党vs民主党のどちらかに組するようなことになると、部数は半分になってしまうからだ。しかしこの日本のマスコミの中庸性による超大部数メディアの存在は、数少ないマスメディアという希少性故に、広告スペースや時間枠に高い値がつけられることになる。今では少なくなってしまった新聞の案内広告の値段を調べたことがあったが、日本は桁違いに高かった。

日本では、昨今のフリーペーパーが出るまで、生活者が日常的に使えるような広告メディアはなかったのである。今までもマスメディア以外に地域メディアとか業界紙のようなニッチメディアもあったけれども、マスメディアをスケールダウンしたようなビジネスモデルであった。これをブチ破ったのはリクルートの情報誌であって、購入に大変な決断が必要な住宅の取引が結構不透明なものであったところに、いろんな販売ルートで輻輳している物件情報をコンピュータで整理して、誰でも正規の取引に関われるようにした。つまり不動産情報の透明化というか公正な取引というか、安心感のあるものにして受け入れられた。

このことは昨今のR25でも同様で、マーケティングが難しいといわれたM1層の視点で編集することで、商業雑誌が苦戦する中で人気の媒体にすることができた。つまりマスメディアモデルというのは「下々に教えてやる」的な上意下達が抜けきらないのに対して、新しいフリーペーパーやWebのメディアは生活者視点、読者視点、読者参加というところを重視するようになってきた。実はデジタルメディアが発展するのはこのことを容易にするからであって、マスメディアの代わりをデジタルメディアにさせようというのは無意味なように思える。

一般のビジネスをする側から見ると、メディアとは顧客とのコミュニケーションツールであり、メディアによってビジネスが円滑に進むことを期待している。だから決してマスメディアの希少性を評価して金を出すわけではないし、代理店にマーケティングをお任せしたいと考えているわけでもない。確かにマスメディアが有効なところはたくさんある。例えば大量に製品を作っているメーカーなどの場合は、OneToOneでFaceToFaceのセールスやマーケティングは不可能だから統計的に方法が必要で、そこでは顧客は匿名でよい。しかしマスプロダクツであっても販売店の段階では特定エリアなり面識がある人たちが対象になりOneToOne、FaceToFaceが基本になる。この段階ではマスメディアは援護射撃的な役割しかなく、なかなか販促活動にぴったり歩調があわせられるメディアはなかった。

高度経済成長時代と違って、今の日本は本部が全国的に営業活動を統制することは減って、それぞれの地域特性にあわせたマーケティングをするとか、目標設定もローカルに行って責任をもたせるなど営業活動の分散化・分権化で競わせて効率を上げる時代になっていることは、コンビニなどを見ても明らかだ。そうすると販売店の担当者がセルフコントロールできるメディアが重要になり、Webやケータイの出番が多くなるのである。これはマスメディアが低調になってSPメディアが増えるように販促費がシフトし始めていることとも関連している。

しかし既存のSPメディアの限界をもデジタルメディアは突き抜けることができる。それはデジタルメディアならレスポンスが数値化して捉えられ、それに基づいて販促のPDCAをまわしていけるからである。つまりコンビニにおけるPOSのように、デジタルメディアでは業務と同期した販促活動が可能になるところが大きなポテンシャルといえるだろう。そのためにはデジタルメディアが販売担当者のデスクトップにツールとして埋め込まれるようになる必要がある。似たものとしてWebToPrintがすでにあるように、今販促メディアもその直前まで来ているといえる。

関連情報:PAGE2008デジタルメディアトラック

2008/01/17 00:00:00


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