ハイブリッド印刷には部数切り替え型、固定+可変情報出力型、可変丁合型がある。これを支えるハイブリッドワークフローをつなぐ標準化技術について議論した。 【パネラーご紹介】
ハイブリッド印刷の後加工はオフラインで製本する
ハイブリッドワークフローをつなぐJDF標準化技術について、CIP4アドバイザリー・ボードメンバーでもあるリコー・アメリカの関根氏からは、米国ではデジタルとオフセット・ワークフローについて、プルーフ用インクジェット・プリンターはオフセット専用で、デジタル印刷の校正は実際のデジタル印刷機で行う。また、オフセット印刷機とデジタル印刷機を組み合わせて使用するハイブリッド印刷の後工程はインライン加工機ではなく、オフラインの製本工程で行う傾向にある。
理由は、オフセットと同じ流れにするためと、ハイブリッドでは同じ仕事が流れるわけではないのでインライン加工機の稼働率が上がらず、投資効率が悪いからである。
また、ハイブリッドワークフローではPDFがベースになるが、PDFの作成時点ではオフセット印刷かデジタル印刷かはほとんど決まっている。
JDFが重要なのは、歴史的に見ても業界ぐるみで標準を作ろうとしていることである。JDFには、曖昧さが許される印刷JOBと、厳密さが求められるコンピュータ言語を記述するという2面性があるが業界唯一の規格である。CIP4には関連するメーカーを中心に1700社以上の印刷関連企業が参加しているが、マイクロソフトは未加入である。
(*因みにE5のプレゼン企業は全てCIP4メンバーである)
可変データ印刷の標準化動向については、PDF/X-4とPDF/X-5 (vPDF/X-200X)を使ったVDP標準技術によりISO 16612-2, Graphic technology Variable printing data exchange - Part 2が検討されており、JDFジョブとしての使用が想定されている。CIP4 Digital Printing WGが2007年10月に正式にスタートして、JDFでのVDPデータを扱うための議論が始まっている。
PDLとしてはこのISO 16612-2とPPML、PPML/VDXを想定しており、共に2008年第2四半期での標準化を目標にしている。そしてJDF1.4には可変データの扱いが入ってくる。
JDF1.4仕様には可変出力やデジタル印刷の規格が盛り込まれdrupa2008で発行予定
次にキヤノンの宮田氏からは、現在のJDFは1.3であるがキヤノンが次期バージョンのJDF1.4仕様策定のWGではホスト役になって推進していること。デジタル印刷用のJDF規格策定には、表紙、合紙、クリープ、ギャング、座標原点など、デジタル印刷用JDFを検討し、さらにインライン製本用JDFを新規に定義してきたと発表された。
このCIP4 DPWGの会合の旬な話題は、2008年1月にUSA西海岸で開催され、JDF1.4ではVDPに関するものが多くを占め、VDP拡張とPODiの連携を進めること、さらに次のJDF 1.5へと進んでいくと言うものである。
可変系の標準については、可変データ作成ソフト(上流)からフィニッシング(下流)までの自動化を想定していて、PDFは関根氏の話にあるように、ISO 16612-2の策定がすすんでいる。
また、可変データ作成に関する規格であるPPMLも、PPML1.0(コンテンツの再利用を可能に)、PPML1.5(グラフィック処理のサブセットを定義)、PPML2.2(ジョブチケット対応)というように進化していて、DPT2.0ではJDFの使い方を定義している。
標準化における今後の課題は、機能面ではデジタルプリンタの多彩な機能を実現するJDFを明確化。接続性では既存システム・機材との柔軟なシステム連携、自動化ではWeb入稿からフィニッシングまでのオールイン・ワン・システムや可変出力との連携・融合である。そしてキヤノンはデジタルベンダーとしての標準化技術の必要な仕様策定に積極的に参加し、つなぐための開発とその接続信頼性評価や、ハイブリッドワークフローでは 既存のシステムとの接続性を積極的にサポート、さらにデジタルならではのワークフローの追求していくという。
CTPワークフローからのアプローチ
富士フイルムの山下氏からは、欧州・国内の状況として、Adobe CSの普及による入稿形態の変化、欧州ではロットの縮小・ジョブ数増加のため、デジタル印刷機の導入がすすんでいること。理由は、八イブリツドワークフローによりデジタル印刷機はジョブ数増加させても、手間は増えないことが挙げられるという。
CIP4/JDFでの品質管理の考え方はJDF工程(ノード)の手順と製造パラメータとデータ(リソース)を指示し、各工程での実際の処理・品質管理(仕上がり品質、CMS)は、生産機器の能力に依存するものである。
従来のオフセット印刷用のデータの課題は、仕上がり品質の管理、特色、文字品質、面付け工程の簡略化、可変データの一括管理などである。
ハイブリッドワークフロー製品であるFUJIFILM Workflow XMFの開発では、オフセット印刷とデジタル印刷の統合管理による工程の一元化し、JDFによるオープンなインターフエースで多様なPODシステムと接続して、一元管理することで柔軟な展開を可能としている。
従来のワークフローでは例えば、表紙をデジタル印刷(4色)+中身の本文をオフセット印刷(1色)するときには、システム毎に別々の設定が必要であったが、これを一つのジョブとして管理が可能になる。
一つのジョブとして管理・トラッキングが可能となるので、一つのジョブに表紙、中身、折込チラシ等を設定可能。各折りごとに異なる印刷機、異なるフローを設定可能となり、ジョブの入稿から印刷までを管理顧客名、納期などによる検索機能を実装している。これによってジョブ全体が簡単に管理でき、進捗の把握、出力条件の変更が容易になる。
統合された面付けエンジンで、JDFの折カタログに従い、自動的に面付けを実行し、面付け作業の負担を大きく軽減できる。またカラーマネージメントでは多様な印刷機に柔軟に対応可能なカラーマネージメント機能を持っているので印刷方式、印刷機間の色基準と特性の違いの吸収、刷り上り品質を管理できるという。
標準化技術の今後の動向と製品開発については、drupa2008で発行予定のJDF1.4へも順次対応していく。 PDF/XとPDF Print Engineについては、透明効果、Contents Layerの高速・高精度処理が可能になっているが、制作者の意思を正確に表現するには、PDF/X1aより-3/-4/をAPPEが必要とする。
可変印刷では、可変データを作成するPPMLなどのバリアブル言語と、受け取ったデータを処理する、lS0 16612-2でのvPDF(xObject)を利用した標準化が進められている。これらの規格によってワークフロー側での一括ジョフ管理・バリアブルデータ処理に特化が可能となる。PDF/x-4,-5はバリアブルデータ+透明効果に対応する。
JDFにおけるハイブリッドワークフローは発展途上
最後に、JDFに対応していないMISやデバイスをJDF対応化できるインターフェース製品「PrintStreetシリーズ」の開発を手がける、ソフトベンダーであるメタテクノの岩井氏からは、JDF策定の課題が述べられた。
ハイブリッドワークフロー実現に向けて、JDFの表現(Process, Resource, Partition等)にはギャップがあるという。現状ではオフセット、デジタル両方の情報を併記しておくしかない。二重管理が必要で手間がかかっては本来のメリットを享受できないので、統一が必要であるという。
JDFのハイブリッド化に向けてはJDF規格化のワーキンググループ同士の横の連携を進めることや、両者と連携するMISまたプリプレス陣営から積極的な働きかけが求められる。
オフセットとデジタル併用印刷はJDF規格ではJDF1.1から連携を前提に規格化され、ICSには1.3から盛り込まれていた。 しかし、実際のシステムの対応はこれからで、現在はマンオペレーションに頼る部分が大きい。 デジタル印刷機ではメーカー各社が打ち出す独自性と標準化のバランスが課題で、独自の機能を独自のJDFタグで実現することで、差別化と同時に互換性の低下を招いている。デバイス仕様情報をMISなどとやりとりするJDF規格(DevCaps等)のさらなる充実が必要である。
また、オフセットでは、用紙・インキ・プレートなど、原価を正確に算出できることが重要視されてきたなかで、明確なコスト算出基準とし、オフィス印刷のカウンタ課金が印刷会社に適用できないだろうか。
印刷会社が求めるものは、互換性(生産機を換える度に工程を組み直したり、メーカーが変わる度にシステムの大規模な改修が必要になるようでは、デジタル導入の敷居が高い)。親和性(商業印刷でデジタルの利用を促進するためには、オフセットと親和性の高い規格・機器仕様・操作方法の提示が早道)、実績情報、原価情報の正確で速やかな把握である。
展望としてはJDF規格はハードウェア対応は、ハイブリッドに関しては未だ発展途上であるが、ハイブリッド印刷を実現している印刷会社は現実に存在し、大幅な利益率UPを達成している。現状では他社がなかなかできないことだからこそ、差別化、付加価値の効果は大きい。そこで重要なのは、実現に向け印刷会社側からハイブリッドで何をやりたいか、ベンダーにビジョンを示すことであろう。
(PAGE2008コンファレンスMIS/JDFトラックE5「ハイブリッドワークフローをつなぐ標準化技術」より、文責:E5モデレータJAGAT相馬謙一)
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2008/02/22 00:00:00