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Web入稿とXMLを活用したマニュアル制作

フィットは、日本語組版ソフトウエアを開発販売していたエルダから独立し、2001年に設立された会社である。XML技術を中心にビジネス展開をおこなっている。代表取締役の藤原広光氏に同社のXMLソリューションとマニュアル制作システムについて、話を伺った。

フィットの事業

エルダは日本語DTPソフトウエアCapAceを販売し、多少は印刷業界に広めることができた。しかし、専門的な日本語組版が不振となり、事業を解散してしまった。
そこで、コアな日本語組版をおこなう顧客をサポートするためフィットが設立されたが、フィットの日本語組版エンジンを使ったビジネスも、InDesignなど汎用ソフトに流れていく。その理由は、編集結果が組版エンジンに特化したデータになることにある。そこで、2004年にフィットは製品の販売をやめ、インターネットを介して利用してもらうという戦略に変更した。

そこからXMLを本格的に研究し、東京文久堂という印刷会社の自費出版システム「ぷりパブ」を開発した。これはWebで入稿したテキストデータをXML化して自動で編集し、その結果をPDFデータにする自動校正システムである。出来上がったデータをオンデマンド印刷する。
このシステムでは、一般のユーザが1,800円くらいで本を製作することができる。これをリリースすることによって、いろいろビジネスの幅が広がってきた。

その後、ASPサービスとしていろいろなシステムを開発している。たとえば、Word出力のASPサービスがある。XMLデータをフィットのサーバに登録すると、自動組版をおこない、その結果をWordデータとして返す。Wordデータのため、ユーザが自由に編集して2次利用することができる。

このようにフィットは今までにない市場を狙っている。印刷業界には、まだまだ未着手の分野がある。
たとえば、自分史の書籍を1冊から出版することも、インターネットのインターフェースとフィットのASPを連携させることで、容易に構築することができる。

日本語組版の技術とビジネス展開

社是として、「美しい日本語、日本語文書を美しく表現することに貢献する」と掲げている。外資系のDTPソフトウエアと比べ、日本語をきれいに編集できる。しかし、編集コストがかかっては意味がない。
フィットの特色は、組版工程を自動化することにある。DTP工程をほとんど無くすことで、大幅なコストダウンを図る。また、執筆者が自己責任で校正をおこない、印刷まで完結する。
最後に、ドキュメントをデータベース化する。XMLを使っていることで、印刷物だけに留まらない利用価値がある。これが一般企業に受けるビジネスソリューションである。

フィットのXMLソリューションは、オペレーションは安くて速くて誰にでもでき、美しく組版した結果を出力する。オペレータに日本語組版の専門知識を要求することなく、誰でもある一定水準以上の印刷物を作ることができる。インターネットを使ったビジネスは、広告収入に依存しすぎており、ユーザの流動性も高い。フィットは、Webと印刷物の融合ソリューションという形で提案している。

このような取り組みは社外からも評価されており、関西の地銀、池田銀行が毎年行っているビジネスプランのコンテストで優勝した。また、2007年7月には、経済産業省の第2回ものづくり日本大賞の優秀賞も受賞し、「ものづくり名人」という称号を受けた。

マニュアル制作支援システムとは

Webインターフェースによるマニュアル執筆ツール、体裁・デザインの統一、複数マニュアルの管理機能を提供し、マニュアル制作におけるDTPを自動化し大幅なコスト削減を実現する。また、データをXML化することで、Web等のデジタルメディアへの2次展開も容易となる。

たとえば、執筆者が組版レイアウトの結果を確認し、自身で校正することができる。改訂時には、改訂箇所のみの修正だけで作業が完了する。統一フォームを利用することで、統一された体裁・デザインを実現することができる。データベース化により、Web上ですべてのマニュアルを一元管理することができる。さらに、Webマニュアルやヘルプファイルなどへの展開も容易である。

インターフェースがWebブラウザであるため、特別なソフトウエアをインストールすることも、専門のオペレータも必要がない。学生や事務員でも、高品質のマニュアルを制作することができる。

あるメーカーでは、700〜800ページ規模のマニュアルを、年間200本制作している。一般に、大手メーカーにはマニュアルを制作する部署があり、ここにディレクターがいて、制作部隊や印刷会社に外注している。

今回のマニュアル制作支援システムでは、Webブラウザ上の入力インターフェースがあるため、開発チームが遠方であっても問題ない。ID・パスワードを入力してサーバにログインし、共同でデータを作る。各現場でデータ入力し、自分が入力した箇所の編集結果が2、3分後にメールで通知され、校正も完了してしまう。複雑なやり取りや編集・修正の待ちがないため、大幅なコストダウンとなる。また、データはXMLとして保存されるため、スタイルシートを適用するだけで、オンラインヘルプ、Webのマニュアルができてしまう。

(この続きはJagat Info 2008年2月号、詳細報告はテキスト&グラフィックス研究会会報誌 Text & Graphics No.263に掲載)

2008/02/28 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会