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Web toプリントは印刷会社の新ビジネスツールとなるか?

DTPレイアウトソフトウエアの機能は充実し、信頼性やパフォーマンスも向上した。しかし利用しているのは制作会社や印刷会社であり、印刷を発注する顧客の満足を得られてはいない。
一方、大量データを扱う情報誌やカタログなどの分野では、印刷を発注する立場の顧客が自らWebブラウザ経由でデータ入力や印刷指示をおこなうWeb toプリントとサーバ自動組版をおこなう例が増えている。校正の作業負担や待ち時間など、顧客の立場から見たワークフロー改善を実現することができる。

PAGE2008コンファレンスD3セッションでは、Web toプリントとサーバ自動組版を実現した事例を取り上げ、今後の可能性や課題について議論をおこなった。



Web toプリントとサーバ自動組版
株式会社オープンエンド 平田 憲行 氏

今までバッチ組版、商業印刷向けデータベース連動自動組版、セルフサービス自動組版やXML自動組版、バリアブル印刷のための自動組版を手がけてきた。
印刷物には、データベース自動組版が可能なデザインとそうでないものがある。フリーデザインの場合、自動組版した上で、さらにレイアウトソフト上での微調整やテキスト修正をおこなう必要がある。
レイアウトソフト上でのテキスト修正を、データベースにフィードバックする方法を「DBシンクロ組版」と呼んでいる。
サーバ自動組版には、判断組や高速処理、カスタマイズ環境が求められる。「DBシンクロ組版」には、流し込み後のデザイン変更、デザイン変更後のDBへのフィードバックなどが求められる。

今回、XMLデータベースとInDesignをシンクロさせる自動組版ソフト、Open Publisherを発表した。フリーウエアとして無償配布する予定である。



サーバパブリッシング・ソリューション
株式会社プロフィールド 宮本 弘 氏

プロフィールドでは、XML技術を活用したInDesign対応自動組版プラグイン製品、およびソリューションを印刷・出版向けに提供している。ProDIXは、テンプレートを利用し、商品情報データベースから自動組版をおこなうソフトである。
InDesignサーバは、自動化ソリューションのためのエンジンであり、ユーザインターフェイスがない。Webブラウザなどで、指示や操作をおこなう。InDesignサーバに対応したソリューションがProDIX Serverである。コンテンツ管理システムと連携して、テキスト・画像などの自動組版をおこなう。

フリーペーパーの制作・発行にProDIX Serverを導入した事例がある。
その顧客はMac OS9とデータベース組版のソフトウエアにてフリーペーパーの制作をおこなっていた。旧システムの更新、完全自動化による省力化、レイアウトソフト上でのデータ修正をデータベースにフィードバックしたい、という課題があった。
ProDIX ServerとInDesignによるシステム構築をおこない、営業担当者がWebブラウザからデータ入力し、校正用PDFを出力、台割も自動化することができたという。

今後の展開として、製品マニュアルやカタログなど製造業向けソリューション、チラシなどの流通業向けソリューション、求人や中古車などの情報誌・フリーペーパー向けソリューションを提供していきたい。



Web to Printの可能性
<パブリッシングの新しい価値を創造>
株式会社ポルタルト 北條 茂樹 氏

DocYard(ドックヤード)は、双方向(インタラクティブ)性を持ったオンラインパブリッシングツールである。Webブラウザをフロントエンドとし、コンテンツ(データ)はサーバサイドに保持・共有し、サーバ上で自動組版をおこなう。

DocYardは、制作や入稿のための利便性だけを目的としてはいない。既存顧客との継続した取引や新規開拓のためのセールスツールである。このツールを使って新たな展開を仕掛けることを期待している。

年賀状・ポストカードなどパーソナルプリンティング、名刺・封筒・伝票などビジネスプリンティング、個別教材・個人出版・アルバムなどのオンデマンドパブリッシング、DMハガキなどのダイレクトマーケティング・セールスプロモーションツール、情報誌・フリーペーパーなどの分野で活用することができる。

現実には、まだまだ印刷会社発のサービスが少ない。
印刷会社には多数の顧客を持っていること、制作・印刷ノウハウ、コンテンツを実際に 保管しているという強みがある。これらの強みに、Webや最新テクノロジー利用したサービス展開をプラスすることで、既存顧客の囲い込みや新たな顧客を獲得すべきである。
そのためのツールとしてDocYardを提供する。




「印刷会社にとってWeb toプリントは、「営業レスで印刷を受注することができる」という意味と、「エンドユーザに主導権を握られる」という意味がある。エンドユーザへのシステム提供や相談を受けている立場では、どのように感じているか。」という問いかけをおこなった。

これに対し、「印刷会社が積極的に提案すべき。」「印刷会社がデータの再利用を阻んでいるため、エンドユーザ側に自由に扱いたいという不満がある。印刷会社がコンテンツ管理をおこない成果を上げているところもある。」などのコメントがあった。
印刷会社の新ビジネスツールとしてWeb toプリントを利用し、顧客サイドのメリットを追求することが求められていると言えるだろう。

(2008年2月・JAGAT 研究調査部 副参事 千葉弘幸)

2008/03/10 00:00:00


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