本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

教材出版におけるXMLパブリッシング

ベネッセコーポレーションは、「進研ゼミ」「しまじろう」「たまごクラブ」「ひよこクラブ」などを刊行している。一部の出版物について、XMLパブリッシングに取り組んでいる。

XMLインスタンスからXSL-FOを用いた自動組版を行い、PDF/X-1aに変換して印刷会社に入稿すること、できあがったXMLインスタンスの再利用を行っている。
その結果、編集担当者がコンテンツの作り込みに専念できるようになった。テキスト&グラフィックス研究会では、同社デジタル事業開発本部制作技術開発課の桑野和行氏に話を伺った。

誌面制作の課題とXML自動組版

出版社から見ると、DTPにはデメリットがある。コンテンツ作成イコール組版ではないため、組版時点で再入力や校正が必要になること、校正紙を出せば出すほど赤入れが増えること、DTPデータは出版社ではなく印刷会社に所有権があることである。

XMLを採用する最大の理由は、校了したコンテンツを社内に残すことである。コンテンツを保有するには、社内で完全に校了するワークフローが必要であり、それを実現した。印刷会社にはPDF/X-1aに変換したものを入稿している。
また、XMLはコンテンツを構造化することができる。教材は、大問・小問・枝問と階層構造を持つので、XMLと親和性がある。RDBで深い階層構造を持つデータの格納をおこなうのは、無理がある。

XSL-FOは、ブロック、フォントの種類、サイズ、マージンといったレイアウト情報がタグとして付与されたデータである。このデータをFO対応の組版エンジンに渡すと、組版エンジンが解釈して誌面のフォーマットを行う。XMLをFOに変換するには、XSLT(スタイルシート)で行う。XMLインスタンスにスタイルシートを適用することでXSL-FOを生成し、自動組版をおこなう。
XSL-FOはW3Cが策定した規格であり、現在世界で10数社がFOに対応した組版エンジンを提供している。当社では、日本のアンテナハウスのXSL Formatterを採用している。

このワークフローにより、制作コストを大幅にカットすることができた。
例えば100ページのものを組むとき、1ページ5千円なら50万円かかるが、それが発生しない。スタイルシートの作成費はかかるが、これは固定費なので、毎月刊行するものやページ数の多いものであれば、十分ペイできる。

工期は、編集者が原稿を渡し初校が出るまで、あるいは初校を戻し再校が出るまでの工程が、当日出しや翌日出しに短縮される。また、XMLインスタンスの流用や、CSVのデータがあれば、さらに工期短縮を図ることができる。
ただし、デジタルデータがないものは、XMLのデータ作成から始めるため、相応の時間はかかる。初めてXMLとFOを適用する案件については、スタイルシートを作成する期間も必要になる。

工期もコストも、ページ数が多く流用する回数が多いほど、そのメリットを享受できる。一番大切なのは、校了した汎用データが社内に残ることと考えている。

(この続きはJagat Info 2008年3月号、詳細報告はテキスト&グラフィックス研究会会報誌 Text & Graphics No.264に掲載)

2008/03/30 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会