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メディア多様化と高度情報化社会のなかで


2008年4月13日


大衆がメディアを変えていく時代

 従来のメディアを巡る議論は、「進化するメディアが大衆の生活を変える」視点に立っていた。しかし現在は「大衆がメディアを変えていく」時代を迎えているようなのであり、変化を指摘する電通総研はこのような状況を「超大衆社会」と名付けている。
 既に、過去に夢物語として語られてきた「ネットワーク社会」は到来しているのではないか。携帯電話、ブロードバンド、地上波デジタル受信機の普及率は定着期を過ぎた。
 メディアをリードしてきたマス4媒体の成長は減速、あるいは後退する一方で、フリーペーパーなどの成長が著しい。
 総務省の調査によれば、平成7年を100とした平成17年度の国内情報流通量は40,000超に達し、いまや1人の人間が処理しきれないほどの情報量が流通している。


中間領域メディアが苦戦を強いられる時代

 ネット検索の普及、検索技術の発達は供給者と購買者間の情報ボトルネックを解消させ、売上高の下位80%に位置するロングテール商品にも商機が見える状況を作り出した。
 そして、「ロングテール」の反対に位置する売上高上位20%の座標が「ショートヘッド」に相当するのだが、情報流通量の急増によって、ここに楽して情報を欲する人々が集中しがちな状況が生まれている。
 ショートヘッド側にはテレビやフリーペーパーなどの無料媒体が位置し、ロングテール側には劇場映画、セルDVDなどの有料媒体が位置することになる。
どちらかへの二極化が進むと同時に、「中間領域」のメディアの苦戦が著しさを増している。代表例は雑誌の総合誌、総合漫画誌、新聞の全国紙、総合紙などだ。情報流通量の急増と情報=0円感覚の拡大を要因とした中間領域の消失進行が背景にある。


メディアバトルロイヤルにおける紙媒体

 部数減少が進んでいるとは言え、電通総研による閲読時間調査の結果は新聞も雑誌も過去と較べた変化が見られない。
つまり、「読んでいる人は読んでいる」のだが、新規購読者が不在の状況にある。
そうなると、新聞、雑誌は従来のマスメディアからセグメントメディアへの移行を余儀なくされていくのではないか。とりわけ苦戦を強いられている総合紙誌、全国紙は、マスメディアとニッチメディアの中間領域における存在価値が問われている。
 しかし電通総研の井上氏は、これらが印刷媒体であるがゆえに苦戦しているのではないという。数々のメディアが生活者の目を奪い合う「メディアバトルロイヤル」の状況における紙媒体の競争力は、1to1型マーケティングと較べたチラシの効率の高さや、通販市場の媒体利用度において紙カタログがいまなお上位に来ることに現われているとする。
 メディア間競争の激化は不可避だが、デジタルは有利、アナログは不利、という単純な図式でもないことに留意したい。

2008年1月11日プリンティング・マーケティング研究会セミナー
「情報メディア産業の最新動向2008」より

2008/04/13 00:00:00