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色のプロを目指します

◆高橋 直樹

私は、学生時代往復5時間掛けて大学まで通学をしていました。とても長い通学時間の中、音楽を聞きながら電車の中づりポスターや電車から見える駅の広告物を眺めることが日課になっていました。
そして、多くの人が目にする印刷物・広告物にとても興味を持ち始め、将来は印刷物の制作に携わる仕事をしたいと考え、印刷会社に就職を決めました。

大学ではプログラミングを専攻していたので、DTPに関する知識はほとんどなかったです。そのため、印刷物はWordやPowerPointの要領で簡単に作成できるものだと考えていました。
DTPオペレーター採用となり、会社の研修でQuarkXPress、Photoshop、Illustratorの基本的な操作方法を実践形式で教わりました。分からないことだらけで、この仕事は向いていないのでは?と考えつつも、必死にメモを取りながら勉強しました。今振り返ると、とても出来の悪い新人だったと思います。

そんな私ですが、実は入社する前からひそかに決めていたことがありました。それは、DTPエキスパート認証試験に挑むことです。きっかけは、会社の内定式での社長との何気ない会話でした。当時、当社にはDTPエキスパート取得者は馬場社長1人しかいないことを社長からじかに聞きました。だったら、私が2人目になってみせると考えていたのです。

入社して1年後、必死に取ったメモを見なくても仕事をこなせるようになり、いよいよ試験に挑戦することにしました。2006年4月のことです。書店で参考書を購入してみたのですが、内容が全く理解できない上に範囲が膨大でした。個人受験での合格は難しいと感じ、ヒューマンアカデミーの指定講座を受講。
入社2年目の夏に、1度目の挑戦で取得できました。教え方が良かったこと、やる気のある方々に混じり一緒に勉強できたこと、そして、周りの人たちに負けたくないと必死になって勉強したことが良い結果につながったと思います。

現在は、ドラムスキャナを使ったポジ分解・色調補正・レタッチ・CMYK変換といった画像処理を専門に行う課に所属しており、主にPhotoshopを使った色調補正とレタッチを行っています。
最近、「色校正とカラーカンプの色が違う。カラーカンプに合わせる」という内容の指示がよくあります。カラーカンプは、データに問題がないかを確認するものであり、色を信用してはいけないと私は理解しています。
ところが、お客様と営業が何度もやり取りをしているうちに、カラーカンプが色見本となってしまうケースが多いのです。カラーマネジメントの取れていないカラーカンプに色を合わせることに苦心しています。カラーマネジメント・モニタキャリブレーション・色差などの基本的な色に対する知識の重要性を感じます。

DTPエキスパート認証試験の色の知識で学習した内容は、私にとって日々の仕事で常に使う知識です。今まで知らなかったこと、知ってはいたが正しく理解できていなかったことを整理し、きちんと理解するという点で、とても有意義な資格試験だったと思います。
「DTPエキスパート取得者」は、DTPのことで知らないことはない者と思われがちのように感じます。しかし、実際には知らないことは多々あるのです(私だけかもしれませんが)。私が受験した26期の時期には、Windows Vista、MacOS X Leopard、Adobe CS3はありませんでした。
私が入社した3年前には月平均300点以上あったドラムスキャナによるポジ分解の仕事が、3分の1程度に減少しました。そして、ポジ分解の代わりにデジタルカメラによるjpeg入稿が急増しています。

現在の印刷業界は、技術が常に進化しています。そのために、今まで常識だったことが変わってしまい、知らないことが増えていくと考えています。現場のエキスパートと呼ばれるには、まだまだ経験不足です。正しい知識を持って、知らないことを一つひとつなくし、良い印刷物を作るプロを目指して日々努力していこうと考えています。

 

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2008年3月号


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2008/04/29 00:00:00


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