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第三の印刷物配布手段 DM2.1

印刷物は配布手段が発達すればよく利用される性質をもつ。新聞の配布に便乗したものがチラシであるが、新聞を購読する世帯が減るとチラシにも影響がある。チラシはエリアマーケティングといわれるが実際には新聞系列で販売店があって、そのエリアの分け方が異なるので、細かく分けて考えると難しいところもある。全戸配布ではポスティング業者がいて、また日本郵便はタウンメールという郵便区内ごとの戸別配布も行っている。こういった強力なプッシュメディアは印刷の大きな特徴だが、捨てられる率も高い。

DMのように相手の名前が記された印刷媒体はうまくヒットすると高い効果を生むが、それは印刷の問題ではなく対象の情報収集や分析の結果に多くを負っている。相手にフィット感をもたれないDMはチラシのようなプッシュ媒体と同様に捨てられる率は高い。個人情報保護でダイレクトマーケティングがやり難くなっている面があるので、急激な量的拡大は望めないかもしれない。DMよりもフィット感の高いものにカタログ販売のような雑誌的雰囲気を持たせて編集したものがある。コストがかかりノウハウが必要なので専業者の領域である。

以上の2つの配布手段が従来は主流であったが、カードや電話の取引明細などトランザクションの通知をDMのようにしたトランスプロモがプロモーション媒体として普及した。発信者とは別の広告が封筒に同梱される相乗りなので、発信者は自社の発送費用を低減できる。この場合は顧客属性がある程度わかっているので、OneToOne的な色合いがあるが、一般のDMほどの押し付けがましさはない。また封入してもらう側からすると自社の販促の同封物が何であるかがわからないという点は悩ましい。

従来の莫大な量を処理するトランスプロモのようなものは多くはないだろうが、この考え方はいろいろなところに広がっているだろう。いわば商品は競合しないが市場は重なっているところがあるどこか他社とプロモーションのアライアンスというか、顧客の紹介をし合うような形の印刷物配布がされている。この第三の印刷物配布手段はトランザクションと違って商品の発送段階で行えば、郵送料などは不要になる。お互いのアライアンスがしっかりしていれば、顧客属性情報も活用できるようになるだろう。

しかしたいていの会社は自社のプロモーションが精一杯で、アライアンス先の販促を手伝う余裕はないであろう。そうするとアライアンス先の会社がデータマイニングやWebToPrintをネットワークでつないだものを遠隔で使って、相手に手間を取らせない形で自動組版なりバリアブルの冊子を作っておいて、アライアンス先が求めている顧客集団が購買をしたら簡単に印刷物をピッキングして同梱できる仕組みが必要になる。

アライアンス先には顧客情報は知らせなくとも、顧客集団の特性をメニュー化して選ばせるだけにすれば、簡便に使える媒体にもなるし、印刷物の内容は自由にコントロールできてサイトやケータイ誘導で反応や実像を把握することもできる。これはネットとデジタルプリントでしかできないDM2.1的な考え方だろう。技術の発達ばかりを追いかけるとか期待して、現状をあそこが足りないここが足りないという傾向があるが、すでにある技術の組み合わせでも可能性が拓けるアイディアはいろいろあるかもしれない。

2008.5.23 ALPS協議会

2008/05/23 00:00:00


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