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10年後の印刷市場予測

JAGAT全会員1120社を対象にこの3年継続して行っている「会員アンケート」には、今回も60%近い回答をいただいた。前々回のアンケートが業態戦略を中心に伺い、前回のアンケートではビジネス実態を中心に伺い、そして今回のアンケートでは、中長期の経営戦略の策定根拠について伺った。
その分析の詳細は、6月末刊行の『印刷白書2008』ならびにJAGAT大会2008の中でお伝えしていくが、「市場」と「時間」に関する以下の二点だけ、速報的にご紹介をさせていただきたい。

長期的な時間軸の中で、印刷産業の主要な市場がどのような環境となっているのか。その実感を把握するために、「10年後」という設定で「紙・印刷」と「Web・電子」の二つの媒体(メディア)の「需要予測」について伺った。
そして、実際に集計された数値は想像していた通りとはいえ、ある種の衝撃を禁じ得ない結果となった。「紙媒体・印刷媒体」の下落を予想する答えが会員印刷会社の総回答社数比率で見ると、全体の72%(351社)を占め、「Web・電子媒体」の向上を予測する答えが、全体で89%(430社)に及んだ。メーカー・その他の業種の会員の回答はこれをさらに超え、「Web・電子媒体」の向上を予測する答えは96%となった。
印刷会社の規模別に見ても、「紙媒体」下落を300人以上規模の会社のが77%、100人以上の72%、50人以上の69%、50人未満の74%が選択し、ほぼ並んだ。「Web・電子媒体」の向上も、300人以上規模の会社のが85%、100人以上の87%、50人以上の88%、50人未満の91%が選択し、やはり数字的に並んだのである。これを地域別に見ると、東京地域の紙媒体の下落予測が一番高い78%を占めた。

もう一つ、自社の大きな意思決定、変革をしていく際、その目安として考える時間単位、即ち、変革時間単位について「3カ月、半年、1年、3年、5年、10年、その他」という単位の中から選択していただいた。
会員印刷会社全体では「1年」が最多で32%(152社)、次が「3年」の27%(126社)であった。そして3年を超える時間単位とする会社は、「その他」を含めても10%強に過ぎず、全体の90%近くの会社が3カ月から3年の間で、大きな意思決定を行い、変革を成し遂げていくとしている。

「10年後の紙媒体需要下落」というのも「変革時間単位の3カ月から3年」というのも、いずれも直感的な判断である。しかし中長期的な「先」をどう見据え、それに対応するための舵取りをする場合どういう時間単位で行うのか、ということに関する判断は、大多数の会員印刷会社がほぼ共有しているということが、より顕になったということである。それは「紙媒体需要下落」への対応、あるいは「Web・電子媒体向上」への対応をより本格化させるためのスタートを切るためには、最早それほど残り時間はないという共通認識とも言える。

そういう会員の皆さんの実感を踏まえて、またこの間JAGATとして積み重ねてきた取り組みをより明確にするべく、5月29日に開催したJAGATの会員総会にて、私どもJAGATの「3年後」である2010年に向けた新しい展開についてご提案し、承認をいただくことができた。総会資料の中で記させていただいたその内容を、やや長めになるが最後に引用させていただく。冒頭黒丸部分は私どもの中期ビジョンである。

「●これまで蓄積してきた印刷の資源・文化を断絶することなく継承させながら、印刷産業の適性進化を促すこと。
●それに伴う隣接産業との関係構築を促すこと。
●これらによりなくてはならない「公益性を持つ事業体」としてのポジションを確保すること。

――このビジョンを達成するための基盤整備を、2010年までに実現させようと、今、JAGATでは努めております。
社会環境・産業の変化を受けたIT化とそれを基盤としたサービス化の流れはますます高まり、従来の印刷ビジネスと同時にクロスメディアサービスの重要性が求められてきます。
JAGATでは印刷と同様に、グラフィックアーツならびにe-ビジネス、デジタル印刷を含むクロスメディアに隣接する業種・業態についても「印刷産業にとってのこれからのステークホルダー」として関係を結んでいき、その印刷産業のステークホルダー全体と「共創」のスキームを構築していきたいと思います。
それを図示したのが下図で、JAGATがビジョンを達成するために関係を結んでいかなければならないと考える、領域を示しています。2010年までに図に記したA・Bという2つの力点の両方に軸足を置いた提言、具現化、そして教育(サービス)展開ができるよう向上をめざしていく所存です。
そしてその推進のためにJAGAT の「貢献対象」「サービス・事業」「組織」を同じ軸の上で一貫して実行していける体制にすべく、2008年7月より大規模な組織と事業配分の再編を行います。」

■JAGAT の描く2010年の環境について



JAGATでは上に記したように、今後より一層、「印刷の継続と進化」の助力を果たすべく努めてまいりたいと考えております。なにとぞよろしくお願い申し上げます。


6月24日(火)開催のJAGAT大会では、「印刷のDNA――継承と変化の戦略」をテーマに講演会を行います。
ぜひ、ご参加をお待ち申し上げております。


→詳細はこちら JAGAT大会2008 6月24日(火) 椿山荘(東京・目白)


経営情報配信サービス『Techno Focus(テクノフォーカス)』No.#1547-2008/6/2号より。

『Techno Focus(テクノフォーカス)』はこちら。




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2008/06/10 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会