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実務に直結する知識の裏付けが取れたDTPエキスパート認証試験

◆加藤 美陽子

私がDTPエキスパート認証試験を受験しようと決意したのは、当社にCTPが導入されたことがきっかけでした。
それまでの業務の範囲は、Macを使用して企画・デザインするだけでしたが、CTPが導入されると、それに加えて刷版工程までというプリプレス全般をこなさなくてはならなくなりました。刷版工程も、Macを使用したオペレーションの部分はすぐに慣れましたが、印刷や後工程に適した版面設計、データ作成となると困惑することが多く、印刷の仕組みや製本に関する知識など後工程に行けば行くほど、自分の知識不足を実感しました。

そこで印刷業界で働きながら印刷のことをあまりに知らな過ぎたという反省や、あいまいな知識の下では確実な仕事はこなせないという思いから、実務に直結する知識の強化を図ろうとDTPエキスパート認証試験にチャレンジしました。
私には試験勉強自体はやればやるだけ、実務に生かせるという思いのほうが強く、苦しさやつらさは感じなかったのですが、試験本番を思い返すと、とてもハードでフルマラソンを走り切ったかのように疲れ果てた……という記憶が鮮明に残っています。
そんな私からこれから30期の受験を検討されている皆さんに勉強方法についてのアドバイスをさせていただくと、
(1)「DTPの基礎」を使って土台をしっかり固める。
(2)「DTPエキスパート受験サポートガイド」「DTPエキスパート試験完全対策問題集」で試験問題に慣れる(直前模擬試験を受けておくとなお良し)。
(3)試験前に発表になる新規出題範囲についてチェックしておく。
当日は体調を十分に整えて試験に臨んでください。

次に私がDTPエキスパート認証試験で得た知識を実際に活用している業務の一つを紹介します。創業75年の伝統を持つ当社、笹岡印刷株式会社では、DTP以前に作成された何十年物の置版フィルムがあり、そのほとんどがDTPで使用できるデータが存在しません。しかしその製品はいまだ現役で定期的に受注されるのです!
そこで当社の専務を中心に積極的に取り組んでいるのが、置版フィルムのDTPデータ化です。その理由を2つほど挙げますと、第1にやはりフィルムでのワークフローでは、露光時の焼度(網点のコントロール)が原因で、お客様に安定した品質の製品を提供することが難しいこと、次に自社で一貫して置版フィルムをDTPデータ化・CTP出力することにより、データ化に関する技術やノウハウを蓄積できることが上げられるため、これを推進しています。
現在では置版フィルムをDTPデータ化、CTP出力し製品化したものも多数出てきましたが、毎日が試行錯誤の連続でもあります。例えば、DTPエキスパート認証試験にも出てきたものの一つ、1bit TIFFは一定量以上のドットゲイン調整を行うと、モアレの原因になり、品質が低下する恐れがあります。しかしこのドットゲイン調整も、フィルムの網点と印刷物の網点が異なる場合は行わざるを得なくなります。モアレの出にくいドットゲイン調整の技術は一朝一夕に獲得できないもので課題の一つです。

現在はどのような印刷物の網点でドットゲイン調整を行った場合にモアレが発生するのか、当社の機材をフルに活用してその技術獲得に向けたデータを蓄積しています。このデータ化が良い例ですが、当社では社員が「やってみよう」「チャレンジしたい」と声を上げるとみんなでそれをサポートしようという体制が生まれ、そんな中で新しい技術の芽が育っていっています。

最後になりますが、私にとって印刷は自分の能力を十二分に発揮できる、とても魅力的なものです。しかし日進月歩する印刷関連技術に遅れを取らないためは、情報収集と技術修得を惜しまず続けていくことが鍵になります。
DTPエキスパート認証試験に合格したことを第1歩として、血肉となったDTPや印刷の知識を活用し、お客様に満足していただき、笑顔になっていただけるような製品のディレクションをできるように努力し続けたいと考えます。

 

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2008年6月号


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2008/06/26 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会