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クロスメディア時代の折込チラシ


2008年7月15日


折込チラシに変調の兆し

 堅調に推移してきた折込広告枚数が減少している。2006年までの折込広告は紙媒体の中でも優等生で、雑誌、書籍、新聞が部数を減らす中でも毎年確実に枚数を増やしてきた。ところが、2007年の出稿枚数は実に9年ぶりの減少である。
 法規制の強化による消費者金融の不振、それに伴う娯楽・遊戯業の不振、改正建築基準法の施行による住宅着工件数の激減などにより、内需産業の急減速による影響を受けている。そして用紙価格値上げはクライアントの予算制約による紙面の小型化や出稿頻度減少を招いている。
 一過性的な調整による減少なら問題は限定的だが、新聞購読率の低下は構造的である。既に東京23区の単身者比率の高い区では世帯購読率が50%を切る地域も現れた。ターゲットへの到達率が50%を切ることになれば、新聞とともに各家庭のテーブルまで確実に届けられる――というクライアントの折込広告に対する評価もおのずと変わってくる可能性も増す。


新たな広告主の登場

 しかし、ここにきて折込チラシの強みに着目した新たな広告主が現れ始めた。従来は主としてマスコミ4媒体を広告手段に利用してきたメーカーである。メディア多様化に伴う情報流通量の爆発的な増加は広告到達率を低下させ、従来型の露出量重視の広告戦略では空振りが多くなったからである。
 折込広告の市場規模は、テレビ広告、新聞広告に次ぎ、インターネット広告を上回る。その影響力は大きい上に、特に女性、主婦層からの圧倒的な支持がある。全国を新聞販売店単位の2万2000に及ぶエリアセグメントが可能であり、掲載できる情報量は新聞広告よりもはるかに多い。
 折込チラシの特性を生かし、特に女性、主婦向け商品の場合はターゲットの多いエリアをあらかじめ特定して集中的にチラシを折り込むような使い方が有効になる。純粋な商品宣伝としての使い方はもちろんだが、自社商品を陳列販売してくれる小売店の商圏に配布するという小売店支援の使い方も増えている。


クロスメディア時代の折込チラシ

 折込チラシからインターネットへ誘導するクロスメディア連動的な使い方が増えているのは周知のとおりだが、テレビなどから折込チラシへ誘導する事例が増えている。商品の告知にはテレビやインターネットを使い、詳しい商品説明は折込チラシを見てもらおうというものだ。このようなオンライン広告からオフライン広告への誘導を逆クロスメディアと呼ぶことがある。
 購入喚起や商品選択場面に強く、「販売につながるメディア」としての評価が高い折込チラシならではの利用方法だ。
 当面、新聞購読率は低下しようが、少なくとも50%の世帯到達率を持つわけで、逆に到達率100%のメディアも存在しない。焦点は、どのようにほかのメディアと組み合わせた広告効果の最大化提案ができるかに移っている。電子チラシの一般化も進む。印刷会社にとっても変化を費用対効果観点からのクロスメディア提案の機会増加と捉えられればチャンスになるだろう。



プリンティング・マーケティング研究会
2008年4月21日セミナー「クロスメディア時代における折込広告」より

次回セミナーは2008年7月30日(水)「フリーペーパーの市場と事業」

2008/07/16 00:00:00