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直列的ワークフローの限界と、これから出るシステム

2月2日のPAGE2000のオープニングに登場したBill Davison氏のお話は、技術的な内容を避けてコンセプトを理解してもらうようなスタイルだった。まず名前の読み方は、ビル・デビスンになり、肩書きのprincipalとはコンサルタント会社でよく使われるもので、共同経営者のようなことだという。後日この話の要約はJi(JAGAT information)に掲載予定だが、まず気が付いたことだけ手短に、意訳的に説明する。

グラフィックアーツの将来のモデルは、今まで行ってきたことを統合し、端から端までカバーするもので、コンテンツを細分化して管理し、さまざまなメディアへの展開をなるべく自動で行うものである。

そのアーキテクチャの考え方をプレゼンした。アーキテクチャは技術面で考えがちだが、ビジネスのプロセスのアーキテクチャまで考えている。例えば、従来の制作工程の流れをコンテント管理アセッツ管理の面から組み直す際に、そのアーキテクチャが新しいプロジェクトの開発から実際の運用改善というサイクルにも通ずるものに考えている。このことはわかり難いであろうから、別の機会に説明するが、要するに発展性のある、つぶしの効く、汎用なアーキテクチャを考えておかなければならないのである。

今ITでいろいろなところが考えているのは、時間をベースに競争力を高めることが中心で、品質やコストの問題は当たり前として触れていない。しかしグラフィックアーツのビジネスでメディアの多面展開を考えると、それだけではだめで、品質については既存のスキルの取り込み、コストでは投資回収を短くするスキル、ツールなどもアーキテクチャの中に盛り込んで考える。

グラフィックアーツの世界は、過去に基本ツールの技術を、アナログ、デジタル、ネットワークへと変更してきた。これは古い技術の経済効果は、ある時から向上しなくなるため、発展の可能性のある技術に取り替えるタイミングを見つけなければならない。従来のDTP化は作業の集中化ではあっても、文字、図形、画像、レイアウトという各タスクは変化せず、自動化はしなかった。

このタスクの直列的なリレーによるワークフローにどのような限界があるのかと、その先に進むのに、生データのデータベースとは別に、メタデータのデータベースを置くことで、リアルタイムに状況が把握できて、またジョブを同時平行で処理できるモデルについての説明がされた。

これはまだないシステムだが、次期の制作システムでは出てくるであろうことと、これにより仕事の追跡が全行程にわたって行え、作ったものをフロントエンドに戻すこともでき、全体のサプライチェーンマネジメントにもなるなど、デジタル資産の管理からみて重要なことだという。

デジタルの資産は減らず、使えば使うほどその価値が高まる性質があるという説明がされた。5年のうちに情報資産が固定資産を上回る。このように従来の経済学の常識とは異なるものとなる。そうなるには、従来の特定個人の中に閉じ込まれていたスキルを知識に置き換えて、システムに組み込んで価値を高めるべきことと、そのためにこれをどう使い、どう利益を出させるかが問題であるといった。

もう一つの話は、自動化といっても進化していくものなので、その進み具合がどうかということも合わせてアーキテクチャを考える話があった。最初はemailのようにコミュニケーションの自動化で、指示伝達の効率化、迅速化、精度向上が図れる、

次の段階は、自動で先の工程が実行を始めるような、HotFolderにスクリプトで手順を仕組んでおいて、無人で次々進むような自動化がある。その次の段階は処理の内容のログをとるというか、仕事がどこでどうなっているのかのリアルタイムの追跡である。その先にちゃんと仕事が達成したかどうかの検証の自動化がある。ここまで行って本当の自動化と呼べる。

あと面白かったのは、こういったシステム開発をしようというユーザは、印刷会社の中にわかった人がいないので、WEBの人をスカウトした方が速いということだった。また最大のハードルは、従来のスキルをコンピュータで有効活用できるような知識に転換するところにあると感じた。しかし実は部分的にはスキルレス化は結構取り組まれているのである。ここにきて、すべてをコンピュータとネットワークを組み合わせて行うことになったので、改めて今後の挑戦目標になったように思う。

2000/02/03 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会