PAGE2000の展示動向をみると、小は名刺から大はポスターまで、カラーコピーからQM-DIやTruepressまで、いわゆる印刷分野の機器が多くなってしまって、DTPのソフトに関するものは、ごく僅かになってしまった。PhotoshopやIllustratorはいろいろなブースで、ごく当たり前に使われているものの、Adobe自身が説明することはなかった。これらの次期ソフトがないからである。
しかしDTPソフトは翳っているのではなく、Adobeとは対照的に、Quarkは今回意欲的な新製品をいくつも出していた。レイアウト済みのページから簡単にXML書き出しができる avenue.quark や、パッケージ用のシステムである Wrapture が新しいソフトで、やっと出てきたグループウェアというかワークフローツールの QPS2.0日本語版や、デジタルアセッツ管理を簡単に行える QDMS など、見モノはもっとも多く、人も多く集まっていた。
また大日本スクリーン製造の AVANAS と、方正の FounderFit は、用途ごとに最適化をしたバリエーションをだしていた。住友金属システム開発の SMI EDIAN PLUS の新聞版、バルコ/東洋インキの PackEdge という本格的パッケージ制作システム、バルコの Adovent 3B2 というSGML/XML対応組版システムその他、内容充実という点でのこの1年の変化は大きかったと思われる。
この他のDTPも含めて、特定の用途に供するものは、それぞれ特定の人以外では興味を持ちにくいので、みんながびっくりする一般的な隠し弾という形の新製品はなくなってしまい、超過密ブースは随分減ったような印象を受けた。しかしこれはDTPの退潮というものではなく、ニッチの段階に入ったのだと思う。別の言い方をすると、とりあえずDTPを買って覚えると、なんかいいことがあるだろう、という曖昧な判断をする段階ではなくなって、従来より仕事の質を高める明確な指向がないと、自分に必要なものが見えてこない段階になったといえるだろう。
一方、このことは冒頭の出力機の多様化とどういう関係にあるのだろうか? つまり編集レイアウトシステムがニッチな様相を深めても、それはPostScriptやPDFなどの標準的な出力に繋がるものであるので、システム構築は柔軟に考えることができ、従来のような専門特化のジレンマには陥らないで済むといえる。
そして、ページ化されたコンテンツは、その時々の必要性に合わせて、さまざまな装置から引き出すというモデルができる。例えばオンデマンド印刷のモデルでよく言われたことであるが、製品開発の完了まえ段階では、マニュアルはオンデマンド印刷でよいが、製品出荷にともなってマニュアルは大量印刷される。またその製品が販売されなくなったあとのサポートでは、金のかかる印刷よりもオンデマンド印刷が好まれるだろう。
コンテンツはこの3つの時期に応じて出し分けられるのだが、同じファイルを出し分けるようにすれば、シームレスに移行ができる。だからオンデマンド印刷の経済を小ロット需要だけで考えるのではなく、大量印刷も含めて、その欠陥をオンデマンド印刷で補完するような考え方や商売をする方が、時代にもニーズにもふさわしい。
要するに冒頭の出力の多様化が意味するのは、フルレンジのサービスを可能にしていることである。それとサービスの特化は一見矛盾するようにも見えるが、シームレスなシステムにするのに、何も自分で全部を作らねばならないわけではなく、ネットワークを通じて連携ができる世の中が出来たのである。ネットワークによるコラボレーションが、過去のジレンマを解決することが、きっと増えていくのだろう。
2000/02/05 00:00:00