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営業にとってのDTPエキスパート

◆根岸 俊明

DTPエキスパートの資格試験を受験したきっかけですが、私が現在所属している株式会社マクビーカタガイでは、制作部署のスタッフは当然のことながら営業部員も全員資格取得を目標としており、私も取得することになりました。

DTPエキスパートの試験は、私にとって思った以上に難しく感じる試験でした。というのも実際の現場で出合わない知識もあり、(これは私が制作実務をしていない営業であることが大きいと思いますが)、現在の知識の延長で勉強するだけではこなせないためです。
なかでも、普段PCを使ってのデザイン・制作業務に携わらない営業が勉強するのは、当初非常に大変なことかと思います。そもそも参考書に出てくる言葉が何を指すのか分からないのに、それを覚え、その知識を活用した応用問題を答えるのは大変難しいことだと思います。対策としては、普段から試験の対策本を身近に置き、疑問に思ったものは、実際にその設備や技術などに触れることが大切だと思います。また、その分野の詳しい人に聞けるようにしておくことをお勧めします。
私見ですが、印刷営業においてDTPエキスパートの知識がどのように生きてくるかという話になりますが、下記の3点が挙げられると思っています。

1.DTP工程のみならず、印刷、製本などの後工程を理解することによりミスのない、またスムーズな業務進行が可能になる
2.近年増加したデジタルデータの入稿方法や、インターネットを活用してのワークフローなどを理解することにより、クライアントに円滑な印刷ワークフローの設計を提案することが可能になる
3.クライアントの抱える印刷周辺領域の課題解決を相談されるパートナーとしての基礎知識を身に着け企画提案営業を行うことが可能になる
なかでも私は上記3が、今後、営業にとって重要な要素になると考えております。

近年、印刷業界全体の仕事量は大幅に減少しており、同時にその利益率も減少してきております。これは、既存の仕事を継続するだけでは売り上げも利益も維持できないということです。
この状況はわれわれ印刷営業の活動スタイルを、受注活動中心から、新しい活動スタイルに変化させることが求められている、と感じています。例えば、課題解決や企画提案を元に「新しい仕事を創出していく」ことにより、今までにない、売り上げを上げていくことを求められているのではないでしょうか。
こういった仕事を創出する営業スタイルにおいては特定の技術に詳しいことよりも、幅広く印刷周辺領域全体を把握できる知識・能力が必要だと思います。その勉強としてDTPエキスパートの資格試験勉強は適していると言えます。
私自身、「印刷関連の相談に乗ってくれないかな?」と、クライアントから相談を持ち掛けられ、それらに対して解決策を練り上げ、結果そこから新しい仕事が生まれた例が多々あります。相談の内容は、既存の印刷技術についてはもとより、以前は印刷営業の範囲外であった最新のコンピュータ機器を利用してのワークフローに関する相談まで、その内容は多岐にわたっています。このように、既に私自身の営業環境では、既存の印刷知識だけでは勤まらないため、当試験の勉強は実務にも生きる状況にあります。

DTPエキスパートの試験はあくまで印刷業界で生きていく者としての基礎知識ですのでこの資格取得はゴールではないと考えております。今後、この試験勉強で培った知識が、「新しい仕事を創出していく」営業としての基盤になるものと考え、活動していきたいと思っています。

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2008年9月号


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2008/09/23 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会