印刷会社の顧客環境の変化が現在ある中で,印刷会社がどういうふうにネットワーク戦略を組まなければいけないかをテーマに「ネットワーク戦略」のセッションを行った。パネラーは、印刷会社3社で、利根川印刷の専務取締役の利根川英二氏からは、営業環境を効率良くして顧客への対応を早くする意味でのコミュニケーションとしての情報系のネットワーク利用について,営業部隊にノートパソコンを配布し無線LAN及び外部からのダイヤルアップなどで,どこからでも情報をとれるようにした環境の話があった。
また中日高速オフセット印刷の営業開発部部長の内藤久之氏は,営業管理や業務管理などのコミュニケーションなどをよくするための、情報の共有化のアプローチについて、東京印書館の情報技術部部長の西村光生氏は,情報共有による社内業務の効率化だけではなく、社外へも情報共有による作業の透明性によるサービス向上など、今印刷業が取り組んでいるネットワーク利用事例についてプレゼンを行った。
顧客の意識の変化の中で、特に製造メーカーはBPRの一環として,ERP(企業資産計画)など総合的な処理の中で印刷を取り込もうとしている。これはデジタルワークフローということで,情報を統合的に管理して,いろいろな用途に利用しようということである。これに対応して,印刷業界が目指すサービス化とインフラ整備をこれからの印刷会社は考えていかなければならない。
今まではDTPとCEPS環境が独立に整備されてきたとか、それと別に業務系などはオフコンを導入して,それはそれで独自に環境整備が行われてきた。これからはこのような環境を統合化することで、新たな機能や意味を持たせる方向に進む。このアプローチを考える上で,まず顧客があり、その顧客に対してサービスを増やしていくという視点が必要である。具体的には,イントラネット,エクストラネットというインフラの土台の上にこのようなさまざまな機能を統合して,サービス開発をしていくことである。
これを実現するにあたっては,社内情報の整備が必要である。現実には,一番はじめに社内体力をきちっとつけるために,基本的にはコスト競争とか納期競争に勝っていくだけの生産環境を備えることである。これは生産設備への投資だけでなく、社内の管理情報の整備のためのインフラ作りが第一番目にくる。
そしてこのような土台の上で,顧客サービスを順次増やしていかなければならない。この顧客サービスとは,基本的には印刷会社のお客であるいろいろなメーカーや出版社などが印刷発注をする際に、より便利なる機能の開発である。今日的にいえば、オンラインの入稿や校正は当たり前であり、さらに問い合わせの応答などオンラインのサポートを充実させて,現状のお客から仕事がこなくならないように仕事を維持していく。
そのような顧客サービスを開発するためには,社内の生産管理のネットワーク化など、業務関係と制作関係を統合していかなければいけない。生産性の向上はどこも天井が見えてきたので、さらに競争力の強化として、顧客満足度の向上としての顧客サービスをいろいろと手を打っていく。
これらの基盤となる技術はネットワーク利用であり、もう一つは情報を管理することからデータベース技術ということになる。「IT戦略」とは、このネットワーク技術とデータベース技術の二つを利用して,自社のサービス提供と合わせてスケジュール化することである。ネットワークをどう利用するか、そのためには,ネットワークの技術にどういうものがあって,どういうものを使っていかなければいけないかというネットワーク戦略が印刷会社の弱点であるから、その補強が最も緊急にやっていかなければいけない事柄であろう。
なお日本印刷技術協会では,これからのIT戦略のためにワークショップを用意しておりますので、参照ください。
2000/03/09 00:00:00