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PDFワークフローへのアプローチ PAGE2000より

PDFでネットワークを利用した校正や文書配信をすることと別に、印刷=ハイエンドプリプレスの出力ワークフローに焦点を絞って,PAGE2000ではC1〜C3のセッションをおこなった。すでに出力各社では内部フォーマットとしてのPDF利用を考えており、その共通項であるAdobeExtremeをキーワードとした。
Extremeに対応するかしないか,あるいはどのように対応するかは各メーカー/ベンダーの製品開発と市場展開に深く関わっているから,単純な善し悪しの問題ではないが,しかし,PDF時代のプリプレスワークフローのアーキテクチャとしては,やはりExtremeが第1候補だと思われる。以下のコメントは各システムの要点のみまとめた。詳細は各社のwebページを参照していただきたい。

(1)Prinergy

PAGE2000の時点でExtremeを最もわかりやすい形で製品化しているのがPrinergyである。システムとしてはクライアント/サーバのオラクルデータベースを中心に据えたもので,PJTFに基づくJob Ticketを使ってJTPで処理を行うなどExtremeのアーキテクチャにほぼ完全に従っている。
全体を@リファイニング,A面付け,B出力,Cアーカイブの4つに分けているのが特徴である。ファイルはまずノーマライズ,カラーマネージメント,プレフライトチェック,OPIやトラッピングを行うリファイニングという工程に送られ,その後面付け工程に進む。この間,PDFファイルはデータベースで管理される。面付けまでOKとなったページ(PDFファイル)は,最後にPostScript3 RIPを使ったJTPであるレンダラから出力される。

(2)Apogee

ApogeeはExtremeを最初にワークフローシステムとして製品化したもののひとつである。単体のシステム名というより複数のモジュールの総称=シリーズ名(Apogee Series 2)である。現在,Apogee RIP,Apogee PrintDrive,Apogee Pilot,および最近リリースされたApogee Createの4つのモジュールがある。
Apogee CreateはDistillerに相当し,Apogee Pilotと同じノーマライザを使用している。Apogee Pilotはノーマライザ,トラッピング,面付け,分版,カラーマネージメントなどを行う複数のJTPからなる。Apogee RIPは,PostScript3 RIPを使い,In-RIPトラッピング機能があり,出力デバイスをコントロールするアウトプットマネージャを持つ。Apogee Print Driveは,出力管理システムである。RIP済みのラスターデータをレンダリングして保存する。

(3)Brisque Extreme

PrinergyやApogeeが製品として始めからExtremeを取り入れているのに対し,Brisque Extremeは,その名の通り従来のBrisqueの資産やユーザの利便性に配慮したもので,必要に応じて段階的にExtremeへ移行しようという考えのようだ。ExtremeとしてはノーマライザとJob Ticketを使う最小限の構成だが,3つの製品のうちもっとも現実的なアプローチともいえる。
内部フォーマットはPDFではなくCT/LWである。つまり,PDFは受け付けるし,またPDFで出力もするが,内部の処理は従来のBrisqueを引き継ぐCT/LWで行う。基本的なワークフローはBrisqueと同様だが,PDF対応のためのいくつかの仕組みを導入している。

(4)Trueflow

大日本スクリーン製造のTrueflowはExtremeシステムではない。インテリジェントRIPという位置付けで,PDF利用の広がりやCTPへの出力などを見込んでRIPの機能を拡大したものと捉えられる。PostScriptやPDFはインタープリタでPDFに変換,さらにラスタライズして出力する。ラスタライズしたデータをPDF化する(RIP'ed PDF)のが大きな特徴である。
PDFに対応したRIPなら他のメーカーのRIPからも出力できるし,Acrobatで見てチェックできる。ページごとにPDFにすることで出力直前の面付け作業が可能となる。もうひとつの特徴は,webブラウザによるわかりやすく,またネットワークに対応したインタフェースである。さらにホットフォルダや独自のジョブチケットを使った自動処理も可能である。

●どのように違うのか?

各社のプレゼンテーションの後でまとめる時間がなかったため,ここで少し補足しておきたい。
Extremeの導入という側面から見れば,アプローチは違うがPrinergyとApogeeがもっともその度合いが大きい。一方,Brisque Extremeは従来の資産とユーザを重視した現実的な解決策であり,TrueflowはExtremeの仕様に沿っているわけではないが,PDFワークフローから言えばPrinergyとBrisque Extremeの中間に位置付けられよう。

各システムの差異の詳細に触れる余裕はないが,いくつか注意すべきことがある。第1に,アドビのExtremeも含めて,PDFを内部フォーマットとしてワークフローを構築するアプローチはまだ始まったばかりであるということ。アドビは各JTPを開発しているが,老舗のプリプレスメーカーにすれば,それをそのまま取り入れるのは躊躇せざるを得ないから,すっきりしたシステムが現れにくい。
第2に,それぞれのメーカーには得意分野があり,また将来の展開への思惑がある。システムの差異を考えるときは各メーカーのスタンスも考慮する必要がある。
第3に,技術的な側面からRIPの概念の変化に注目したい。ExtremeではノーマライザでPDFにインタープリットしたデータは出力直前までPDFのままである。だから,ほんとうにExtremeを取り入れたシステムではRIPという概念が従来とは異なる。従って,RIPをどう考えているかという視点から各システムの違いを把握することも可能だろう。

C2の後のC3でユーザの意見をうかがった内容は次回に紹介する。

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2000/03/12 00:00:00


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