PAGE2000のセッションC5「PDFツール」は、Acrobat4.0が発売されフォントのエンベットも可能になり,ますます印刷業界でも期待されているPDFだが、実際にはAcrobatだけではどうしても限界があり、印刷業に特化したツールによって実用に供されている点を取り上げた。モデレータに日本プロセスの足立氏、およびパネラに代表的なツール提供者にきていただいて検討した。
日本プロセス(株)足立 仁氏
PDFのデータをハイエンド出力するためには,もらったデータのRGBの部分をCMYKに変換しその後分版して面付け・出力の工程が必要となる。しかし,Acrobatでは分版は出来ないしトンボもつかないので,CollocoやCrackerJack等を使って対応しなければならない。また,校正や進行を管理するにはWebの機能が使えるMyLayer等が有効である。
現在のところ,PDFによる出力は若干の問題を抱えているが,近い将来PDFでのデータのやり取りは日常になるであろう。
グローバルデザイン(株)白旗 保則氏
既存のデータをPDFに変換する作業には非常に手間とコストがかかってしまう。また,複数枚のCD-ROMからの検索やそれを配信するためにはそれなりのシステムが必要になるケースもある。そういった場合にはMultiDocを使うことによって余計な手間やコストを削減することが出来る。
ケミカル・リサーチ(株)吉田 秀利氏
CrackerJackやCOPSTalk等で有名なケミカル・リサーチではペーパレス化を促進するインタラクティブPDFのすすめとして,WEBでの出力依頼が可能になるシステムとしてFDF Tool Kitを提案している。これはASP+SQL Serverで動くものであるが,これによって見積もりや保守レポート・開発報告業務などのペーパーレスが可能になり,WEB販売顧客に対しての自動請求書発行などが実現する。
なお,現在WEBにて実際に体験できる。
(株)テクネ 小林 秀光氏
テクネではPDFのドキュメントを面付けして出力するために,CollocoライトというAcrobat用のPlig-Inを販売している。これによってプラットホームを超えた出力が可能になり,面付け専用の高価なアプリケーションを購入必要が無くなる。また,フォントを埋め込んで出力することによって出力機にPSフォントを買いそろえる必要も無くなる。
現在はそれを進化させたCollocoProを開発している。
(株)プラネットコンピュータ 柏野 雄太氏
プラネットコンピュータではPDFを使用した電子校正システムとしてMyLayerを取り扱っている。MyLayerの特徴としては,セキュリティー機能を持ったレイヤーを採用し,レイヤー単体への書き込みや取り込みが可能になっている。また外部からの電子校正システム機能の呼び出しも可能である。そのシステムを使うことによって,校正者の責任の明確化と校正作業時間の短縮化が図れる。また,セキュリティー機能によりトラブルが減り,作業の自動化により校正指示漏れが解消され,進捗状況の把握が簡単になる。さらに校正指示の優先順位も付けることが出来るので非常に便利になる。
Adobe自身は印刷のワークフローに直接乗り出すわけではなく、またAcrobatに印刷用の機能をどんどん追加するつもりもないように思える。Adobeの目下の役割は、PDFからの出力をするRIP環境の革新と機能のレベリングをして、PDFで問題無く出力できる環境を出力メーカーに作ってもらうことであろう。だから、現状のRIP周りの機能不足をAdobeのアプリケーションなりツールで補うことは出力の革新を遅らせてしまうと考えているのかもしれない。
だから現状のPDFのワークフローで超えなければならない壁は第3者の力で乗り越えてもらって、そのうち、今のツールの機能は出力RIP周りや、来るべきInDesignでカバーして、今までのPostScriptと変わりなく使えるようにするのであろう。
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2000/03/26 00:00:00