データベースで管理されたテキスト,画像,イラストなどのデータをDTPのテンプレートにバッチで流し込むというデータベースパブリッシング(以下DBP)についてのセッション「自動組版」では、モデレータ兼スピーカーに(株)ライトビジョンの石谷崇氏,また(株)データプロセス研究所の山本彰俊氏,(株)プロキシーの勢川貴史氏にスピーカーをお願いした。(株)ライトビジョンは,「DBPallet Pro」,(株)データプロセス研究所は「ちらしJack」というデータベースのデータを自動組版用に加工するツールを開発している。どちらの会社も製作会社でもある。
ライトビジョンの石谷崇氏は,DBPシステムの構築のポイントを説明した。自動組版をスムーズに行うためには,その前の工程である見本組の作成と出来る限り正確な原稿データを収集することが重要になる。見本組とは,カタログでの組版の最小単位であり,通常商品画像,コピー,仕様などから構成され,データベースの1レコードの印刷物上での体裁となる。見本組が0.1mmでもずれていると,10個も続けると大きなズレとなってしまう。0.1mm単位の精緻な見本組の設計が必要である。
そして,自動組版そのものの処理時間は短いので,クライアントに対する原稿の締切をぎりぎりまで我慢して,自動組版後の直しをできる限り少なくすることが制作の効率化には大切である。従来の工程では,ばらばらと五月雨式に原稿が入稿し,レイアウトが出来たところから初校として提出していたが,DBPになるとレイアウトされた校正は,最終段階まで出てこないことになるので,営業,クライアントに事前に十分な説明が必要となる。
DBPを適用するには、対象となる印刷物や、その後の展開により向き不向きもあるので、得意先にアプローチする前に,事前に得意先の状況を調査しておくことが望ましい。チェックポイントとして,印刷物に掲載する取り扱い商品のアイテム数,印刷物の発行頻度,再掲載率はどの程度か,得意先が紙以外のメディア展開に興味があるか,得意先のデータベースの導入度合い等がある。
また,構築したデータベースを自社で持つか,得意先が持つかというのも大きなポイントである。自社で持つ場合は,メリットとして,ほとんどの仕事が自社経由になる。デメリットとして,メンテナンス費用を取りづらい。得意先が持つ場合は,メリットとして,データベースの構築費用をもらえる。デメリットとして得意先がうまく使いこなせるようになると,必ずしも発注がくるわけではなくなる。講演資料
データプロセス研究所の山本氏は,実際にDBPを行うには,データベースと自動組版のXTensionがあるだけでは不十分であり,自動組版の精度をあげるためには,データベースの生データを印刷に使える形にする加工ツールが必要であると述べた。具体的なデータ加工の内容は,数字の3桁区切り記号や¥マークの付加,書体等の指定のためのタグづけ,内容の読み替え等がある。内容の読み替えとは,データベースには省略記号などの形で入っており,そのままでは印刷物の表記に使えない場合に一括置換するといった作業である。
さらに「チラシJack」の開発時に留意したポイントを次のように述べた。
(株)プロキシーの勢川氏は,同社が開発したツールである「SyncBase Pro Ver1.0J」と「Leaflet Ver1.0J」について紹介した。勢川氏は,自動組版ツールの定番となりつつある「DBPress」の開発に携わった方で,日本のDTPの黎明期より自動組版ツールの開発と不動産情報誌への適用など豊富な経験をお持ちである。
DBPの問題点として,従来のデータベースを使った制作工程では,データベースからドキュメントへの単一方向のつながりしか持てないため,自動組版後に直しが発生した場合には,多くの時間や労力が必要となっていた。
直し作業は,(1)データベースを修正してもう一度始めから組版しなおすか,(2)ドキュメントとデータベースの両方を修正するかのどちらかの選択となる。自動組版によって作成されたドキュメントでも,ほとんどの場合は組上がった後,文字体裁や画像補正などの手直しの工程が入るので,大抵の場合(2)の修正作業を行うことになる。しかし(2)の修正工程の場合,どちらか一方の修正し忘れを引き起こす可能性があるし,修正後の確認作業を両方ともしなければならないというデメリットがある。
「SyncBase Pro Ver1.0J」は,QuarkXPressXTensionで,自動組版されたQuarkXPressのドキュメントを修正後,その修正内容をデータベースに更新するためのテキストファイルを作成する。つまり,データベースとドキュメントの両方を修正することなく,データベースとの同期をとることが可能となる。
「Leaflet Ver1.0J」は,チラシ・端物等の不定形な印刷物をバッチ処理的に制作できるツールである。講演資料
まとめとして,石谷氏より顧客サイドでは商品情報DBの構築が急速に進展し,他業種からの参入も増えているが,印刷業界には,組版にしても画像処理にしても高品質を知っているという強みや得意先から情報が常に入ってくるという優位性があり,主導権を取り得る立場にあると話した。
2000/04/02 00:00:00