近年英語表記の単語が混じった横組み文書が増加している。これを「和欧混植」というが、和文と英単語を同一行に組む場合にいろいろな問題が介在している。そこで和欧混植組版に関する留意点について述べてみる。
●和欧文語間
和欧文語間とは、和文文字と英単語とのスペース(字間)をいう。一般に本文組みの標準値として、本文活字の4分あき(1/4 em)または3分あき(1/3 em)が視覚的に適正とされている。
電算写植やDTPなどの組版ソフトでは、このスペースをデフォルト値として自動的に設定されているが、カスタマイズも可能になっている。
和欧混植組版には、和文文字は全角ベタ組み、欧文文字がセット幅によるプロポーショナルピッチ送り、さらに和文禁則処理という要素がある。加えて和欧文語間スペースを取ると、1行の行長に端数が生ずる。それでジャスティフィケーションを行うと、和欧文語間は1行ごとに異なることになる。
ジャスティフィケーションはコンピュータソフトで自動処理するため、1行中のあきスペースにムラが生じ、あき過ぎや、詰まり過ぎが多く見られる。これは行末の英単語をハイフン処理せずに無理に追い込むか、あるいは追い出し処理をすることに起因している。
和欧混植組版ではジャスティフィケーションが前提であるが,自動ハイフネーション処理を行うソフトは少ないし、またマニュアル処理では手間がかかるため、ハイフン処理を行わないともいえる。しかし句読点や文章構成の工夫で、この問題はある程度回避できることであろう。
しかしこの問題を認識しているのと、いないのでは、編集レイアウトの質的な面では大きな違いであろう。ところが一般の雑誌、書籍などの和欧混植では、ハイフン処理が施されているのは珍しい部類に入る。それほど無関心といえるかもしれない。
和欧混植組版に欧文のラグ組み形式を採用するような、斬新な考え方のデザイナーが出現することを期待したいものである。
●ベースライン揃え
和欧混植組版では「ベースライン揃え」という問題がある。これは和文フォントと欧文フォントの設計上の相違に起因している。和文文字は文字のセンターが視覚的に揃うように全角ボディの中心にデザインされているが、欧文文字はベースラインを基準にデザインされている。
したがって和文と欧文が同一行に組まれた場合、文字の並びが揃わないという問題が生ずる。欧文フォントは、書体ごとにベースラインが微妙に異なっているが、大文字と小文字はベースラインを基準に横の並びを揃えている。
欧文のベースラインの位置は仮想ボディの中心より下がっているため、和文と組むと欧文の大文字は上がって見える。また大文字の天地の大きさは、漢字に比して小さく見えるため並びが悪くなる。これは純欧文フォントを使うかぎり宿命的な問題である。
並びについては、ベースライン下げ機能を使って見かけ上揃える方法があるが、その他に漢字と欧文文字の大きさの揃えと、ウエイト(太さ)のバランスの問題がある。
和欧混植では、和文フォントに最適な欧文フォントを選択すると体裁がよい。しかし雑誌などで、本文が和文明朝体で欧文はサンセリフ系書体を使っている例、和文ゴシック体と欧文のローマン体を使っている例、また和文ゴシック体より太い欧文サンセリフ書体を使っている例など、よく見かける現象である(図参照)。
和欧混植における欧文フォントの選択にはルールと呼ばれるものはないが、編集者やデザイナーの美的感覚による要素が強いといえる。そこで参考のために、欧文フォントの選択と使い方を挙げると下記のようになる。
1)xハイト(字高)が大きい書体を使う。 2)ウエイトに差がない書体を使う。 3)和文書体に似通った書体を使う。 4)従属欧文書体を使う。─従属欧文書体とは、その和文フォントに従属してもたせている欧文書体。写植時代の「E欧文/R欧文」(*注) のことをいう(つづく)。
*E欧文とR欧文=E欧文とは、それぞれの和文書体のウエイトとデザインの整合性をとり、セット幅やベースラインは純欧文的に設計したものである。R欧文とはE欧文と同じ書体でセット幅も共通であるが、ベースラインをE欧文よりも下げて大文字を大きくデザインし、見かけ上大きさも太さも和文文字に揃え、和文文字と欧文文字の仮想ボディ枠が一致するようにデザインしたものである。
他連載記事参照
2000/07/02 00:00:00