本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

DTP豆知識(200004) 出力とディスプレイの調整

本コーナーでは,DTPエキスパートを目指すうえで理解しておきたいことを模擬試験形式で解説します。JAGAT認証DTPエキスパート 福原節寿氏に,問題のポイントや重要点を解説していただきます。試験勉強のご参考に,またはDTPに必要な知識の確認にご活用ください。
次回,第14期DTPエキスパート認証試験は2000年8月20日に行われます。詳細はDTPエキスパートのページをご覧ください。



問1 出力処理

次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 DTPソフトの画面表示処理は,OSの[A:(1)GUI (2)FEP (3)CUI (4)GDI]が行うので,画面作業をしている段階ではPostScriptデータが作られていない場合が多い。通常のPostScript出力は,DTPソフトが出力処理をする段階でPostScriptのファイルを生成するか,あるいは[B:(1)GDI (2)GUI (3)ラスタライザ (4)プリンタドライバ]がPostScriptデータに変換して,出力機に送る。

 PostScriptファイルの中では,文字オブジェクト/図形オブジェクト/ビットマップ・オブジェクトの位置は[C:(1)ページ上の出現順に記述する (2)自由に記述できる]。ページ内のオブジェクトの最終配置処理を行うのは出力側の[D:(1)ドライバ (2)ラスタライザ (3)RIP (4)FEP]である。この処理のために出力に時間がかかったり,出力不能となることがある。

 フォーマットの異なるデータが混在したファイルは出力トラブルの元になりやすいので,使用するフォーマットをあらかじめ決めておいたり,出力前にファイルに含まれる書体,画像,カラー設定などの情報を抽出する[E:(1)画面確認 (2)プリフライトチェック (3)ラスタライズ (4)GUIによる確認]を行ってデータを検査する。

 画像の色分解については,従来はRIP以前にアプリケーションかPostScriptプリンタドライバが[F:(1)RGB (2)CMYBk (3)CIE]の分解データを作成した。現在のWindowsのGDIモードやPDFファイルもJPEGのRGBデータであり,PostScriptレベル2ではPDFを直接扱うことはできない。しかしPostScript3対応RIPなら,これらを直接RIPに送ってRIP内で分解する[G:(1)InRIPセパレーション (2)InRIPトラッピング (3)カラーマネジメント]機能がある。また出力装置の精度に基づく色ズレも事前に処理してデータを作り直していたが,[H:(1)InRIPセパレーション (2)InRIPトラッピング (3)カラーマネジメント]機能により,RIP内で行うこともできる。



    【関連項目】
     「なぜ入稿したデータが正しく出力されないのか」「WindowsDTPでは,なぜ正しく出力することに苦労しているのか」などを関連づけて,日常行われている作業の中で,表示の仕組み・出力の仕組みを改めて考えてほしい。


    【出題のポイント】
     この問題では,設問中の選択肢も含めて略語が多く出題されているので,これらの語彙を正しく理解する必要がある。

    【問題解説】
     画面表示は,API(Application Program Inter face:OSがおのおののアプリケーションを利用するための機能)の中のグラフィックの表示機能によって行われる。DTPのコンセプトとなるWYSIWYG (What You See Is What You Get)を現実のものとしている。グラフィックのAPIとして,Macintosh では「QuickDraw」,Windowsでは「GDI(Graph ical Device Interface)」が相当する。

     この機能をもとにユーザインタフェイスとして,アイコンやマウスを使用し画面処理・作業をしているのが,GUI(Graphical User Interface)である。

     Aは,(4)のGDIと間違えやすいが,(1)が正答。ちなみに,GUIに対して文字や記号を入力して指示をするのがCUI(Character User Interface)で,漢字やかなの変換入力をサポートするのが,「ことえり」「ATOK」に代表されるFEP(Front End Processor)である。現在は,FEPよりIM(Input Method)と呼ばれることが多い。

     QuickDrawやGDIによって画面表示が行われるが,さらに高解像の出力ではより緻密な表現・演算処理が必要となる。レイアウトを高度に記述できるページ記述言語として,アドビシステムズ社が開発したPostScript(以下PS)が,DTPでは標準となっている。WindowsDTPでは,GDIベースでの表示,あるいはプリンタへの出力結果をそのままPSベースによる出力結果に求めることが多いので,一致しないことがある。

     PS出力の方法には,一度PSファイルを作成しRIP(Raster Imag Processor)に投げ込むか,PS対応のプリンタドライバ越しに直接RIPに指示を出す方法がある。いずれの方法でも,プリンタドライバ(MacではLaserWriter,WindowsではAdobePSなどが行う)でPSファイルを作成するため,Bは(4)となる。

     PSファイルのオブジェクトの位置は,個々のレイアウトの指定に基づくものなので,Cは(2)となる。RIPは,受け取ったPSファイルを解析(インタープリット)し,レンダリングによって出力に対応したデータ(イメージセッタ,CTPなどでは,ビットマップ展開されたラスタデータ)を作成するプロセッサのことである。Dでは,(2)と(3)はほぼ同義であるが,ここではPSファイルからイメージ処理を行うとのことで,(3)が適切。

     出力したいファイルを,自分の環境で正しく出力するためには,出力環境を確認しておかなければならない。例えばPSフォントの環境でも,指定されているフォントがRIP側にインストールされていなければならないし,画像にしても出力条件に見合った解像度が必要になる。

     このように出力トラブルを回避するために,出力環境の条件(フォントの種類,出力解像度,スクリーン線数,受け取れるフォーマットなど)と出力ファイルの情報(使用フォント,使用画像のフォーマット・モード・解像度,サイズ,リンク情報など)を照合して,出力前にフロント・編集側あるいはRIP上で,その整合性を促したりするものがプリフライトチェックである。Eは(2)となる。

     最終出力が印刷物の場合は,CMYKでの出力・色分解が必要になる。出力ファイルがあらかじめCMYKで作成されていれば問題ないが,RGBで作成されているファイルでは,いずれかの処理で変換を行う必要がある。

     PSのレベル(バージョンに相当)が上がったことにより,RIP内でもこの変換処理が可能になり,RGBモードで受け取ってCMYKモードに分解できる。この機能がInRIPセパレーションである。また,RIP内の処理として毛抜き合わせの部分に対してトラッピング処理できる機能もあり,これをInRIPトラッピングという。Fは(2),Gは(1),Hは(2)となる。さらにInRIPセパレーションは,コンポジットの指定がされているPSファイルをセパレーションできることを意味することもある。

    【模範解答】
    A.(1),B.(4),C.(2),D.(3),E.(2),F.(2),G.(1),H.(2)

    【キーワード】
    PostScript,GDI,プリンタドライバ,RIP, プリフライトチェック,InRIPセパレーション,InRIPトラッピング




問2 ディスプレイの調整

 次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。

 加法混色型の装置であるカラーディスプレイの調整は[A:(1)黒 (2)白 (3)グレー (4)青]を基準に行う。例えば,TVモニタの多くは色温度が[B:(1)2500K (2)5000K (3)9300K (4)12000K]であり,またパソコンのモニタは標準光源の昼光に近いが,いずれも印刷用としては青っぽい。印刷の色の評価には,一般に色温度[C:(1)2500K (2)5000K (3)9300K (4)12000K]を基準にするが,厳密な色管理を必要とする作業には,[A]を調整できるディスプレイを使うことが望ましい。  色の見え方は照明に左右されるので,たとえディスプレイの色温度を正確に調整しても,室内照明などの外光が映り込むと正確な色再現ができないし,[D:(1)コントラスト (2)アスぺクト比 (3)SN比 (4)クロック数]の低下をもたらし,表示イメージが変わってしまう。  通常のディスプレイでは,一般の使用環境での色再現性は1カ月は安定しているが,2〜3カ月すると色や明るさが徐々に変化する経時変化が起こる。経時変化には輝度の劣化,フォーカスの劣化,出画時間の遅れなどがあるが,色再現に最も影響を与えるのは[E:(1)周波数 (2)輝度 (3)フォーカス (4)出画時間]の変化である。この変化の最大の原因は,電子銃の中のカソードの能力低下で,それがRGBごとに異なるため色のバランスが崩れるのである。これを補正するには,[F:(1)濃度計 (2)測色計 (3)色温度計 (4)ライトテーブル]を使ってCRTの発光色を測定し,[G:(1)キャリブレーション (2)キャラクタライゼーション (3)同期調整 (4)コントラスト調整]を行う。


    【関連項目】
     ディスプレイの調整から始まりその構造まで,また,なぜディスプレイを調整するのか,つまり色合わせであるカラーマネジメントの目的・方法を通じて理解したい。カテゴリー1(DTP関連知識)の設問であるが,必ずカテゴリー4(色の知識)のことを念頭におきたい。


    【出題のポイント】
     ディスプレイの調整で,表色に関しては環境を含めた明るさが重要である。「その明るさをどのように調整していくのか」「光の色を表す単位は」などを,ディスプレイの構造とともに理解してほしい。 問題解説



    【問題解説】
      一般にディスプレイの調整は,始めにブライトネス(明るさ)で暗部(黒地)を調整し,その後に,コントラスト(調子)で白地の調整を行うことが多い。おのおのの調整の動きは,図1を参照。さてAの設問において,人間の視覚では明るい部分に敏感なのでディスプレイの発色では,最も明るい部分を基準とするので,(2)となる。その白の光の色味を表す単位が色温度(高温下で物体から発せられる光の色とその時の温度で表される。単位は,K:ケルビン)である。色温度は,低いと赤っぽく,高くなるに従って青っぽくなる。図2に主な色温度を示す。Bは(3),Cは(2)となる。  また,ディスプレイを調整するとともに,その環境下の照明に,合わせておかなければならない。Dでは,図1より,コントラストが低下することで最も明るい部分の白色に大きく影響するので,(1)となる。アスペクト比はモニタの画素の縦横比で,S/N比はSignal-Noise raidoの略で,信号とノイズの比のこと。  ディスプレイもいろいろな要因で経時変化していくが,Eでは色・発色に関することなので(2)が適切。参考までに図3のモニタの仕組みを見てほしい。表示の明るさ・発色は,電子ビームの強さ・バランスによって変化していく。こうした変化に対して発色の補正を行い,ディスプレイの発色を計測して,適切な状態を保たなければならない。Fは,そのための計測機器として測色機が用いられるので,(2)となる。ひとつのデバイスであるモニタを一定の状態に保つことなので,Gは(1)となる。測色機を使用すると,デバイスインディペンデントであるLabでの値となるので,複数の機器間の調整とも間違えやすので,注意すること。


    注:
    図1 ブライトネスとコントラストの調整,ブライトネスは,暗部・明部ともに動き,コントラストは暗部を中心にして明部が調整される




    【模範解答】
    A.(2),B.(3),C.(2),D.(1),E.(2),F.(2),G.(1)


    【キーワード】
    色温度,標準光源,コントラスト,キャリブレーション,キャラクタライゼーション




(出典:月刊プリンターズサークル連載 2000年04月号記事より)

2000/07/13 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会