それでも伸びる折込広告は激戦区に
インターネットが登場してから、新聞がなくなるのではないか、チラシがなくなってしまうのではないかという話があちこちで出たが、2000年の新聞折込チラシは前年比9.0%増で過去最高を記録した。2001年は、景気が足踏み状態程度以上に落ち込まないという前提で、4%〜6%程度の伸びが期待される。
インターネットの折込チラシ配布に関するテストの結果、いくつかの問題点が見えてきた。
チラシのネット配信のさまざまな問題
第1点は画像の解像度である。クリックして拡大表示して見ることはできるが画像がガビガビで細かい文字までは見えない。チラシの原稿をMOでもらい、PDFファイルを使って表示すれば非常に細かいところまで見えるようになるが、現時点では、仮にISDNを使ったとしてもPDFファイルでは非常に時間がかかる。ただし、これはブロードバンド化が進めばなんとかなる問題であろう。
もうひとつの問題点は、小売業の顧客が原稿をMOで作っていないので、出力原稿をスキャナーで読み込むかたちになって、PDFファイルで表示する特徴が生かせなくなることである。
消費者側にとっては利便性の問題が大きい。インターネットは便利だと言われるが、昨日折り込まれたチラシを見ようというとき、新聞をストックしているところからチラシを探して見つけることと、パソコンを立ち上げ、ブラウザを立ち上げさらに接続して見ることを比較してみると紙媒体に分がある。
紙とネットとの媒体特性の違い
上記の利便性とも絡むが、根本的なニーズの問題がある。例えば、スーパーのチラシで主婦が10円、20円安い店を探していく場合、ネットには膨大な量の情報があるために、慣れていない人にはめんどくさく、10円、20円安いところをネットでわざわざ探すかどうかという疑問である。
チラシとネットの大きな違いは媒体としての性格である。ネットでは自分で情報を見つけにいかなければならない。例えばネット上にスポーツクラブ会員入会のチラシを載せたとしても、そこにアクセスするのはスポーツクラブに入ろうと思って値段を調べようとする人、つまり興味がある人が大半である。しかし、新聞折込チラシの場合は、なにげなく入っているチラシを見て、そこで初めて、最近少しお腹が出てきたし入会金無料だから入ってみようか、という顧客を獲得できる。
乗り気でない一般小売り業
小売業一般におけるインターネットへの感触はあまりよくない。すでにオンラインショッピング等をやっているところもあるが、かなり疑問を持っている。
基本的な問題として、小売り売価を競合関係の状況を見ながら変えているところが非常に多くあるので、この売価の違いを一般消費者が知ってしまうことを非常に恐れている。そのため、ディスカウントストア、食品スーパー、量販店も含めて、チラシをそのままインターネットに載せることにはかなり消極的であり、今後もそのためにお金をかけていくことを考えていないところがほとんどである。
インターネットはチラシを補完する
チラシの広告主にとっての悩みの種は新聞を購読しない人たち(無読層)が非常に増えていることである。東京都内は比較的単身者が多いが、特に単身者、学生等が多い地域に関しては、無読層の率が全世帯数の3割、4割という地域もある。こういった地域で独身層にターゲットを絞って商品を売り込みたい場合、新聞折込チラシが届かないところをカバーする補完的メディアとしてのインターネットは有効である。ただし、限られた業種、限られたターゲットになるので補完メディアとして考えるべきである。いずれにしても、インターネットは現状ではチラシに競合する媒体になっていない。
新聞折込チラシにとっての脅威は宅配
新聞折込チラシにとって、今、最も脅威になっているのは宅配である。宅配物に折り込むことも可能だし宅配料金は折込料金よりもかなり割安になった。
従来、宅配には実際に配布されるまでにある期間が必要であった。売り出し初日から数日間というかなり短い期間で売り出しを行うが、宅配の場合にはどうしても配布に3〜4日かかってしまい、特にスーパー等には受け入れられなかった。しかし、最近は宅配網もだいぶ充実してきて2日程度で相当数のチラシが宅配できるようになって、かなりのところが宅配にシフトしている。市の広報は全世帯に配布するのが原則だが、無読層が増えて新聞折込チラシでは全世帯に入らないことを市の担当者もわかっているため、宅配業者が請け負うこともかなり増えている。
(出典:JAGAT印刷マーケティング研究会セミナー「折込広告の最新市場動向」より)
2001/08/06 00:00:00