インラインコーターについては,水性とUVの2方式のコーティングができるダブルコーター機が各社から出展された。まず水性のプライマー液をコーティングして遠赤外乾燥装置で水分を飛ばし,次にUVコーティングを行うものである。こうすることにより,印刷直後のウェットな状態で速度を落とさず,高品質なUVコーティングを行うことが可能となる。オフ輪化が進展していく中で,オフセット枚葉機が,オフ輪にできない付加価値の高い印刷を行うことが生き残る道であるということを示唆する出展である。
前回drupaで話題となったハイデルベルグのギャップレス印刷機サンデープレスは,新バージョンとしてサンデー2000と4000の2機種を発表,今回も人気を集めた。サンデー2000は普及型サンデープレスで,最高速度を抑えてコストダウンを図ったもの。サンデープレスの高速性能をフルに発揮させるには,インキ,紙,乾燥装置,運転技術などの条件をすべて整える必要があり,仕様どおりの速度での運転は困難を伴うのが実情であった。そのため,確実に実現できる運転速度に限定し,ギャップレスオフ輪の損紙節減,ブランケット交換の容易化といったメリットを享受しようという目的で普及版が誕生したものである。
一方のサンデー4000は,胴径を倍にして,より安定した高速回転を実現するとともに,折り出しページ数を増やして製本工程の合理化を狙ったものである。同じページの雑誌を製本する場合,1折のページ数が多いほど,製本機の丁合ボックス数が減り大きな合理化効果が生まれる。そのため,最近欧米では,32ページ,48ページといった多ページの大型オフ輪が主体となっている。
大型機という点では,KBA社はdrupa最大のオフ輪としてC818を実演した。この機械は64ページの折丁を折り出すもので,胴周1260mm,紙幅1910mmという大型機である。日本で一般的なA横全判機と比較すると,胴周,紙幅とも2倍,面積で4倍となっており,欧米と日本のオフ輪市場の大きな差を見せつけられた。
火付け役はハイデルベルグで,同社が新聞輪転機に進出するにあたり,世界の主要新聞社の幹部にインタビューしこれからの新聞印刷機のあるべき姿について徹底的に調査した。その結果得られた結論は,どのページにもフルカラー印刷でき,地域バージョンなどにフレキシブルに対応できることであった。この条件を満足させた新型オフ輪メインストリーム80をdrupaで実演した。
従来の新聞オフ輪は紙幅4ページ,円周2ページであったが,この機械は円周を1ページとして,版替えで交換する版数を半減した。同じ生産性を上げるためには,版胴を2倍の高速で回転させる必要があるが,ハイデルベルグはギャップレスオフ輪で培ってきた技術でこれを実現している。もう一つの特徴として,カラー印刷のための4段タワーに加え,5段目に墨版のタワーを用意したことである。印刷中に空いている墨の版胴で版替えを行っておき,印刷終了間際に版替えした胴を印刷速度に同期させるように加速し,瞬時に印刷切り替えを行うものである。
これに対して,新聞輪転機のトップメーカーであるマンローランドも,新型機リジオマンを出展して対抗した。この機械も円周1ページの版胴としたが,ブランケット胴は従来どおり倍胴として剛性を確保したものである。
KBA社はさらに将来を見据えた未来指向型新聞オフ輪のプロトタイプ機としてコルチナを出展した。この機械は,水なしオフセットで,版胴,ブランケット胴の各シリンダをそれぞれ独立単独のモーターで駆動するシャフトレス,ギアレスの機械である。インキローラ群の駆動モーターを含めるとタワー1段に6個のモーター,4段で24個のモーターを装備することとなる。
このコルチナも円周1ページの細い版胴方式で,新聞輪転機とは思えないほどコンパクトにできており,印刷ユニットの右半分が右側にスライドして,ユニットの中にオペレータが入って版替えなどの準備作業ができるというユニークな特徴もある。
ゲーベルが多目的オフ輪として発表したコンビプリントは,どのユニットにも,オフセットの他,フレキソ,シルクスクリーン,箔押しの印刷装置を挿入できるようになっている。加工ユニットとしても,ダイカット,エンボス,スリッター,シーターなどが用意され,紙・カートンボード,プラスチックフィルム・アルミホイル・粘着ラベルなど広範な材料に対応できる。
ミューラー・マルティニのコンセプトNTと,ドレントのビジョンSMRもフレキシブルに変化する多目的オフ輪である。各ユニットが単独モーターで駆動されたシャフトレス方式で,オフセット,フレキソの印刷ユニット,各種加工装置の選択と配置が自由となっている。ユニットの選択により,商業印刷物,ダイレクトメール,ラベル,軟包装などさまざまな製品を作り出すことができる。
大型の共通圧胴型フレキソ輪転機の新型機が各社で発表された。版胴とアニロックスローラを1本ごとに単独のサーボモーターで駆動したギアレス機が大きなトレンドとして目立った。また,版胴,アニロックスローラをスリーブ方式として交換容易とし,しかも無段階のサイズチェンジを可能とした機械が主流となってきた。
イタリアのスキヤビ社は,8本の版胴スリーブ交換を行う段取り替えの実演を行い注目を浴びた。フレキソ印刷機のこのような本格的な実演は前例がなく,これからのフレキソ印刷発展の前兆といえよう。
(出典:社団法人日本印刷技術協会 機関誌「JAGAT info 2000年8月号」)
2000/08/04 00:00:00