DTP豆知識(200008)文字の同異と、RGB,CMYBk
本コーナーでは,DTPエキスパートを目指すうえで理解しておきたいことを模擬試験形式で解説します。JAGAT認証DTPエキスパート
田邊忠氏に,問題のポイントや重要点を解説していただきます。試験勉強のご参考に,またはDTPに必要な知識の確認にご活用ください。
次回,第14期DTPエキスパート認証試験は2000年8月20日に行われます。詳細はDTPエキスパートのページをご覧ください。
問1 文字の同異
次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。
異なるプラットフォームへ文書データを移すと,機械的異常がないのに文字が一致しない場合がある。この問題は,「字体」「字形」「書体」など,文字の同異判定の基準がコンピュータ環境ごとに異なることによって生じる。
ある文字の明朝とゴシックは,「字体」としては同じである。「字体」は抽象的な概念であり,[A:(1)視覚化される形状 (2)文字セットの筆画デザインポリシー (3)筆画の組み合わせによる骨格 (4)同一の概念を有する文字]を指す。
ある文字の明朝とゴシックは,「字形」としては異なる。「字形」はフォントの形に相当し,[B:(1)視覚化される形状 (2)文字セットの筆画デザインポリシー (3)筆画の組み合わせによる骨格 (4)同一の概念を有する文字]をいう。
明朝やゴシックの差は「書体」の違いである。「書体」は[C:(1)視覚化される形状 (2)文字セットの筆画デザインポリシー (3)筆画の組み合わせによる骨格 (4)同一の概念を有する文字]をいい,太さなどのバリエーションの集合である[D:(1)クラス (2)ファミリ (3)グループ (4)異体字]を形成する。
異体字とは,基本的には[E:(1)字義 (2)字体 (3)字形 (4)書体]に差のある文字をいう。日本では当用漢字/常用漢字が示す「沢,国,学」は[F:(1)旧字体 (2)新字体 (3)正字体 (4)俗字体]といい,康煕字典に掲載されている「澤,國,學」を一般に[G:(1)古字体 (2)新字体 (3)正字体 (4)俗字体]という。両字体の間には中間的な略字が多くあり,規格票やフォントのバージョンによって形の差がある。あらかじめ字体/字形の再現にどのような要求があるのかを知っておくことが重要である。
【模範解答】
A(3),B(1),C(2),D(2),E(2),F(2),G(3)
【出題のポイント】
文字の同異は文字化けの原因を探るのに重要な手がかりとなる。文字は「字体」「字形」「書体」の別で明確に分類される。「字体」「字形」「書体」の意味を正確に知っておくこと。また,正字体,新字体など字体の別,よく使われる異体字という用語についても,その内容を知っておくこと。
【問題解説】
文字コードの基本となっているJIS規格には,1978年度に制定された78JIS,83年に制定された83JIS,さらに90年に制定された90JISがある。JIS規格の改訂とともに,いくつかの漢字は字体が改訂されている。これらのJISコードの違いによって,文字化けが生じる場合がある。また,いくつかのフォントで,JISでは未定義の領域にある文字(記号,符号類)など,いくつかの文字コードが異なり,これも文字化けの原因となる。
文字の区分の基準となる字体は,筆画の組み合わせによる骨格を示している。
字体は筆画数の違いによる区別であり,明朝体,ゴシック体,じゅんなどの書体による違いは対象にならない。字体は1字1字を最も明確に区別しており,これが文字の違いの基本になる。
字形は視覚化される形状による文字の区別である。明朝体,ゴシック体,じゅんなど書体の違いによる区別はもちろん,明朝体の中でも細明朝体,中明朝体,太明朝体など,書体のバリエーションに基づく,より詳細な区別も含む。字形は1字1字を区別するものではないが,デザイン上ではわずかな違いも考慮して,それぞれを異なる字形と見なす。
書体は文字セットの筆画デザインポリシーで文字を区別している。明朝体,ゴシック体,じゅんなどの区別がまさに書体である。書体は同じ字体,字形に比べると,最も大まかな区別である(図1)。また,1つの書体には,細明朝体,中明朝体,太明朝体など,文字の太さによるバリエーションがある。これをファミリと呼ぶ。
字体の区別による漢字の分類も重要である。これには,新字体,旧字体,略字体が含まれる。新字体は当用漢字もしくは常用漢字として指定されている「沢,国,学」などの字体である。一方,正字体は康煕字典に記載されている「澤,國,學」などの字体を指す。
新字体と正字体の間には,中間的な略字体がある。略字体は画数の多い旧字体を元に,文字の字画の一部が省略され,簡単に表現された字体である。一般的に,新字体には,この略字体の字体をそのまま使用しているものも多い。
異体字も字体の区別による分類である。異体字は,字義が同じで字体が異なる文字を指す(図2)。異体字には,これまでの歴史上で使われてきた漢字である旧字,親字,略字,俗字が含まれる。また,俗字は異体字のうち,一般に正当な文字としては認められていない漢字を指す。
問2 RGBとCMYBk
次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。
画像データがCMYBkで入稿された場合,印刷条件に合った適切なカーブで分解されているかどうかを判断できず,RGB入稿した他の画像に比べて再現に差が出る場合がある。
カラー画像をスキャナなどでサンプリングして電気信号にする段階では[A:(1)CMYBk (2)RGB (3)xyz (4)CIE]データを作る。この画像データをハードコピー出力するには,プロセス印刷の分色に変換しなければならない。しかし,光の3原色は,印刷では[B:(1)1次色 (2)2次色 (3)x3次色 (4)補助色]なので,元のカラー画像と完全に同じ色合いを再現することは難しい。
元来,異なるカラースペース間の適切な変換に当たって,色空間のどのあたりにどれくらいの数の[C:(1)原点 (2)参照点 (3)原色点 (4)補色点]をとって変換するかについては,スキャナメーカーなどのノウハウが生かされている。参照点が少ないと[D:(1)色のずれ (2)変換時間]が大きくなる。参照点が多いと[E:(1)色のずれ (2)変換時間]が大きくなる。
従来の製版ドラムスキャナはCMYBk分解の標準カーブ設定を行うことができたが,RGBスキャナではスキャニング後にPhotoshopなどでCMYBk変換カーブを設定する。
分解カーブの設定は印刷インキの特性から逆算するが,重要なのは[F:(1)濃度レンジ (2)グレーバランス (3)シャープネス]である。そのバランス比はスキャナメーカーやインキメーカーによって違うが,一般にYとMはほぼ同じ量なので,YM,CおよびBkという3つの色分解カーブを設定する。
網ポジの分解カーブでみると,YMの網点パーセントに対してCの網点パーセントは中間部で[G:(1)±1%以内の差にする (2)10%ほど小さくする (3)10%ほど大きくする]。日本ではBkを[H:(1)フルブラック (2)スケルトンブラック (3)ミドルブラック]といい,C=50%付近から網点を入れ,シャドウ部で[I:(1)35%前後 (2)75%前後 (3)95%前後]の網点を入れるのが一般的である。理論的には,スミベタではCMYBk合わせて400%近くになるが,実際の印刷では[J:(1)150〜200 (2)200〜250 (3)300〜350 (4)350〜390]%くらいしかインキが正常に転移しないので,UCRやGCR処理をすると印刷が行いやすい。
GCRは,従来のスキャナで[K:(1)フルブラック (2)スケルトンブラック (3)ミドルブラック]と呼ばれたもので,カメラやオーディオ製品など全体が黒っぽいものに使われる。これらはYMCのバランスが多少崩れても黒に重点を置くので,[L:(1)ハイライト (2)中間調 (3)シャドウ]側からBkが入る。これら以外の普通の写真は,UCRを使ってシャドウのCMYのグレーを明るくする。
【模範解答】
A(2),B(2),C(2),D(1),E(2),F(2),G(3),H(2),I(2),J(3),K(1),L(1)
【出題のポイント】 印刷の基本はCMYBkである。デジタルカメラ,新型のスキャナなど,最近の入力機器ではRGBでデータ入力するものが多い。そのため,RGBをCMYBkに変換する際に必要となる基本知識をもつこと。また,CMYBkでの印刷には印刷物の品質を向上させるための技術がいくつかある。それらの仕組みも理解しておくこと。
【問題解説】
RGBでデータ入力した場合,印刷の基本的な色空間はCMYBkであるから,印刷時にはRGBからCMYBkに変換する必要がある。また,印刷からみた場合には,CMYBkが1次色,RGBは2次色となる。
RGB色空間の領域とCMYBk色空間の領域は異なるので,RGB色空間に含まれる点(色)とCM YBk色空間に含まれる点(色)が完全に1対1で対応することはない。そのため,RGB色空間に含まれる1点(色)をCMYBk色空間に含まれる1点(色)に変換するには,適当な数の参照点を設けて,補正計算を実行する必要がある。
しかし,計算のための参照点が少ないと,計算は簡単になるが補正の精度が劣り,色ずれが大きくなる。その逆に,参照点の数を多くして,補正計算の精度を上げると,変換のために必要な時間が長くなる。
最近の画像処理では,デジタルカメラ,新型のスキャナなど,入力機器から取り込んだRGBデータを画像処理用のコンピュータでCMYBkに色変換するので,RGBからCMYBkへの変換効率は画像処理ソフトウエアとコンピュータの処理能力に依存している。
画像データをCMYBk分解するために使う分解カーブは,印刷に使うインキの特性を考慮して設定する。この時に注意するのは,Bkを含めてグレーを作り出すためのCMYBk各色のバランスである。このバランスを網ポジの分解カーブと見合わせてみると,最も目立たないCの網点パーセントは,中間部でYMの網点パーセントに比べて,10%ほど大きくしておくと良い。また,日本の製版ではBkを,C=50%から網点が入り,シャドウ部で75%前後の網点に達するスケルトンブラックとして扱っている。
印刷時の注意点として,紙へのインキ転移を考慮した処理が必要である。具体的には,紙へのインキ転移がCMYBk4色合わせて,300〜350%までしかうまくいかないことを考えたUCR(Under Color Removal)や,GCR(Gray Color Replacement)
の処理を行う。
GCRは従来のスキャナ処理でフルブラックと呼ばれるもので,CMYを積極的に等量のBkに置き換える処理である。この処理を行うとCMYがBkに変わるので,ハイライト部分からBkが入ることになる。GCR処理は全体の色調が黒っぽいものに適している。
一方,紙へのインキ転移の限界を回避することに重点を置いたのがUCRである。これは主にシャドウ部で行われ,CMYを等量のBkに置き換える処理である(図3)。
(出典:
月刊プリンターズサークル連載 2000年08月号記事より)
2000/08/10 00:00:00